【12】
「ーあの!!」
追いかけて声をかけたのは、凛だった。その後ろには、雅巳がいる。2人とも少しだけ息があがっていた。振り向くた相手か驚いたように、目を瞬かせる。
「どこへ行くつもりですか? 小梅さん」
名前を言われた彼女ー小梅はじっと凛と雅巳を見、ゆっくり答える。
「眠れなくて…。うろうろしていれば、そのうち疲れるかなと思ったんですけど」
「そうですか。それなら、いいんですけど…」
凛がはっと息を吐くと、小梅は廊下の手すりに触れ、夜空を見上げる。生憎、煌めく星は見られず、どんよりとした雲に襲いかかられていた。
「…前から夜中にふらついていたんですよね」
「…え?」
「家にいるのが嫌で…。それで1人、抜け出してみたりとか」
「…」
小梅の顔が急に大人びて見えた。しかし何か辛いものを堪えるかのような苦しいものでもあった。
「…誰かに構って欲しかったのかもしれません」
「小梅さん…」
「自分のことを分かって欲しい、愛が欲しいって、子どものように期待して…。結局、上手くいかなくて…。何で私だけって嘆いたりして…。…全ては淋しいから始まるんですよね」
「…」
凛は黙っておくことにした。小梅の言いたいことは分かるのだが、何と答えたらいいのか分からなかった。代わりに雅巳が答える。
「淋しいと感じるだけまだましだ。生きているってことなんだから。それが麻痺してしまうと、もう後戻りはできない。辛い、悲しいと思っても、何の言葉も響かなくなる」
「雅巳さん…。…そうかもしれませんね」
ふと小梅は笑むと、炎を吹き消す。
「もう寝ましょうか。今日は色々とありましたし。ね?」
「そ、そうですね。小梅さん、1人で大丈夫ですか?」
「私は1人で大丈夫です。…いつも1人でしたから、慣れています」
「お前のせいじゃない。周りの大人がいけないんだ」
「雅巳さん…」
凛は珍しく言葉を紡ぐ雅巳に、びっくりしていた。雅巳と小梅、両方とも惹かれ合う何かを抱え込んでいるのかもしれない。
ー私はその中に入れない…。
1人残されたようで淋しいし、悔しかったが、仕方がなかった。
「ーおやすみなさい」
小梅が動いたので、凛達もそれぞれの部屋へ歩き出したのだった。




