【11】
「ー助けて。ねえ、助けてってば」
凛は誰かに話しかけられ、ふと動きを止める。見れば、雪よりも青白い顔をした優が立っていた。
ー何で彼女が…。
驚いて声が出なかった。優は恨めしそうに凛を見、
「あんたのせいで、あたしは…!!」
と叫んできた。凛は急いで首を横に振ると、
ー違う!! 違う!! 違う!! 私は助けようと…!!
声にならない気持ちが苛立たしかった。しかし優には伝わらず、
「お前なんか…お前なんか、いらないんだよ!!」
「…っ…!!」
気づけば凛は泣いていた。それで解決するわけがないのに、首を何度も横に振る。
ー違う!! 違う!! 私は…!!
優は手を伸ばしたところで、目が覚めた。
「おい!! おい!! しっかりしろ!!」
誰かに手を掴まれ、目を開けると、雅巳だった。何故、彼がここにいるのか、最初は分からなかったが、少しずつ記憶が蘇ってくる。
「ま、雅巳さん…」
「どうしたんだ、急に? うなりだすし」
「あの、その、悪夢を見たの…」
「悪夢? どんな」
「それは…」
冬なのに、額に汗をかいていた。それを手ですくうと、指で弾く。
ー雅巳さんに夢の話は黙っておこう。
そう決めると、ふと疑問に思う。
「雅巳さんはどうしてここに? 客間は向こうのはずなのに」
指で示すと、雅巳が怒ったように言う。
「お前が1人で危なっかしいから、様子を見に来たんだよ」
「え…。そうなの?」
凛は素っ頓狂な声で言うと、雅巳を見つめる。この間、掃除したばかりなので、雅巳に見られても恥ずかしいものはなかった。
「…誰に部屋を教わったの?」
「定さんだよ。何かあったら助けてやってくれって頼まれて」
「…」
定のしたことが良いことなのか、悪いことなのか不明だが、雅巳の存在に安堵し、彼の手をぎゅっと握りしめる。
ー良かった。生きている。
あのまま悪夢を見ていたら、死んでいたかもしれないと、不吉なことを思い、二の腕を擦る。雅巳の手が離れて淋しかったが、彼が
「このまま一緒に寝てやる」
と言ってきたので、凛は驚く。
「だ、駄目よ…!! 雅巳さんはお客さんなんだから、客間にいないと」
「いいんだよ、俺はどこでも眠れるから。毛布を1枚くれ」
「え…でも」
「いいから」
凛は渋々、毛布を渡すと、彼は体に巻きつけ、壁に寄る。何だか力がわいてきて、凛は雅巳に礼を言う。
「ありがとう、雅巳さん」
「どういたしまして。ゆっくり眠るんだぞ?」
「うん」
そう言っても、背中にも汗をかいているらしく、気持ち悪かった。凛は立ち上がると、新しい着替えを用意しようとし、ふと気づく。
「…あれ?」
「どうした?」
「あの、灯りが見えたような…」
雅巳も確認するために動き、2人で外を見る。凛の目は確かで、炎が揺らめいている。
「…こんな時間に誰が…?」
「あの位置って、まさか…」
嫌な予感がし、凛は立ち上がる。
「雅巳さん、一緒に来てくれる?」
「分かった。行く」
2人は急いで、炎の後を追ったのだった。




