【10】
やっと帰って来られたのは、星が煌めく時間帯だった。
「どうしたんだい、皆して?」
大雅が出迎えてくれたので、凛は安堵の息を漏らす。
「それが…」
何が起こったのか話すと、定が「まあ」と言い、口に手を当てる。
「とりあえず、疲れたから、休ませてくれる?」
ぐったりした様子で言うと、小梅が真っ白な顔で座り込む。
「私…私…」
上手く言葉にならないようで、俯く。そんな彼女を春徳が抱え上げると、
「客間に寝かせるっす」
と言ってきた。大雅はうなずき、了承する。
「そうしなさい。さあ早く」
「はいっす」
運ばれていく彼女を見つめていると、背中に雅巳の体が当たった。
「大丈夫か?」
「…うん。何とか」
そう言ったものの、足に力が入らなかった。今まで小梅がいたから踏ん張っていたが、実は凛も驚いていたし、恐怖も感じていた。
「俺が中に運ぶ」
お姫様抱っこされ、慌てたのは凛だった。
「ま、雅巳さん!! 大丈夫だって…!!」
「何を言っているんだ、真っ青な顔をして。強がるのもいい加減にしろ」
「…」
何も言えず、されるままにする。食卓の椅子に座らされると、凛は淋しいような、恥ずかしいような気持ちがわいてきた。
「今日はもう大人しく寝ろ。俺も帰るし」
「え…。雅巳さん、帰っちゃうの?」
思わず口をついて出てしまった。凛は慌てて口を閉じたが、雅巳の耳に届いてしまったらしい。
「どうした? いつもの元気は?」
「それが…。ちょっと衝撃的だったというか」
優みたいに不幸にしたくなかったのに、どうも勝手に周りが動いていく。凛はその中に引き込まれ、身動きがとれない状態だった。すると雅巳が凛の前に膝をつき、両手を取る。
「世の中は勝手に動くんだよ。俺達の意思に関係なくな。1人1人のことなんて、誰も見ていないんだよ」
「優しさだけじゃ駄目ってこと?」
「そうは言っていない。でも1人で生きるのは大変ってことだ。あとは自分で意思があるかないかだと思う。…お前、これから何をしたい?」
「何って…」
雅巳の指を握りしめると、凛は顔を上げて答える。
「犯人を探したい」
「その通り!! さすがお前だ」
雅巳の体が柔和になったのを見、心配かけさせたと反省する。
ー励まされちゃった。
まだ衝撃は大きいが、暖かいものが胸に広がる。雅巳がいてくれて良かったと、凛は感謝したのだった。
「…雅巳さんも今日、泊まればいいのに」
「いや、それは…」
「いいわよ、泊まっていきなさい」
定の声が何故か弾んだものになり、凛は不思議がる。兄の清も嬉しいらしく、
「よっしゃ!! 力比べするか?」
と言って、力こぶを見せたのだった。雅巳は苦笑したが、凛も彼の目を見、頼み込む。
「今日は泊まっていってくれる? あの…その…淋しいというか」
「…。そうか。…本当にいいんですか?」
雅巳が定に確認すると、彼女は上機嫌に微笑む。
「もちろん!! …あ、その前に何か食べる?」
「いいえ。いらないです。ご親切にありがとうございます」
「はい。じゃあ、凛、案内してあげて」
「うん!!」
凛は少し元気を取り戻すと、雅巳の前を歩くのだった。




