第4話 露店の初心者プレイヤー
広場から離れた場所にポツンとある一軒の露店。
頭上にはプレイヤーのアイコンのマーク。
気になったサクラはその露店に向かう。
「こんにちは」
「ひゃ、ひゃい!いらっしゃいませ!」
声をかけるとサクラが近づいていたことに気付いていなかったのか、驚いた様子で挨拶をする店主。
「あの、貴方プレイヤーよね?このお店では何を売っているのかしら?」
この露店には何も並んでいない。
NPCの店では商品がきちんと並んでいたので、プレイヤーの店はまた仕様が違うのだろうか。
「あ、あの…、…です」
申し訳なさそうに小さな声で話す店主。
「?」
「…売るものがないんです」
露店の店主の名前はアンズといい、栗毛の髪の小柄な少女だ。
種族はハーフリングとのこと。ハーフリングは小学生位の身長でとても可愛らしい見た目をしている。
その見た目とアンズの小動物のような仕草も相まって、小さいもの好きのサクラのハートを見事射止めた。
そんな困った様子のアンズを放ってはおけず、サクラは話を聞くことにした。
「詳しい話聞かせてもらってもいいかしら?」
「は、はい。実は…」
話を聞くとアンズは生産職を選び、ゲームを始めて早々にこの露店を借りたという。
しかしVRMMO初心者であるアンズは露店を借りるのに手持ちの資金を全て使い切ってしまい、店に出す商品のことをすっかり忘れてしまっていたのだ。
「最初に支給されるお金ってそんなに多くないわよね?よくお店を借りれたわね」
「えと、ウチは戦わないから武器とか装備はいらないから…、それを全部売ってギリギリお店を借りることができました」
「それで途方に暮れていた、と」
「は、はい…」
話を聞き終えサクラはアンズが手詰まりの状態だと気づく。
本来なら街の外に出てモンスターを倒し、その素材を売るなり使うなりすればいいのだろうが今のアンズでは難しいだろう。
そこでサクラはアンズにある提案することにした。
「ねぇアンズちゃん。私と一緒に街の外に行ってみない?」
「えっ?」
「一度モンスターとの戦闘を試してみたかったところなのよね。それでもしよかったら一緒に付いてきてくれないかな?」
「あ、あのっ!本当にいいんですか?」
「ええ、もちろんよ」
一度街の外に出てモンスターを見に行くつもりだったので問題ない。ついでにアンズの手助けにもなるし一石二鳥だ。
ゲームでどのくらい身体を動かせるかを試すには実戦が一番手っ取り早い。
スタート地点のこの辺りならモンスターもそう強くないからそこまで危険はないだろう。
というのは方便でアンズと仲良くなりたいというのが本音だ。
というのもアンズは無理に街の外に出る必要はないのだ。生産職であるならば街の中でできる仕事がきっとあるはずで、そこでお金を稼げばいいだけの話だ。
初心者であるアンズはそこまで考えが及んでいないのだろう。今は仲良くなるためあえて黙っておくことにしたが、もちろん後でそのことを教えるつもりだ。
「それじゃあまた後でね」
「はいっ!」
街の外に出る準備をするため、一度アンズと別れる。
「ウタマル。ちょっと留守番お願いね」
ホームに戻るとウタマルに留守番を言いつけるサクラ。
パートナーアニマルであるウタマルは戦闘フィールドに連れて行くことができない。こればかりは仕方がない。
「キャン!」
ウタマルは任せてと元気の良い返事をする。
いきなり1人で留守番をさせることになり心配したが、どうやら問題なさそうで安心した。
サクラはビギンの街に再び戻ると露店で回復薬など必要なものを揃え、アンズとの待ち合わせ場所に向かう。
待ち合わせ場所は街の東門の前。
サクラが到着すると既にアンズが待っていた。
「お待たせアンズちゃん」
「サクラさん、よろしくお願いします」
「それじゃあ外に行こっか」
「はいっ!」
サクラとアンズは門を出て街の外へと向かう。




