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父への苦言


 怒りに身体を震わせながらナターシャはヘレンを従えて執務室にいる父の元へと向かった。

 ノックはしたが、返事を待つことなく扉を開けたナターシャに父は目を丸くして驚いていた。


「……ナターシャ……どうしたんだ」


「どうしたじゃありません! ガウディ様のマリアベルへの仕打ちをご存知で?!」


 バン! と机を叩くナターシャの剣幕に眉をしかめる父であるリンクエラ公爵はペンを置いて手を組んだ。


「なんの事だい、彼がマリアベルになにかしたのか?」


 不思議そうに聞いてくる父にナターシャはお茶会で聞いた内容を全て話す。

 それに驚き頭を抱える父に、ヘレンがずっとそばで見てきたと証言する。


「じゃあなにか。手紙は代筆、プレゼントは3年半の間に花だけで装飾品からドレスすらない。更には街中でマリアベルを1人放置して取り残したということか」


「そう! 良くそんな相手の為にお稽古を頑張って相手に合わせていたわよねマリアベルは。定期的に物が運ばれてきていたから関係は順調だと思っていた私が馬鹿だったわ!! プレゼントだと思っていた箱も、中身は花ですってよ!」


 我が家に不審に思われないようにしたんでしょうね!

 そう怒るナターシャの考えは合っていた。

 パッと見てプレゼントだと思ってしまうだろう箱を送ることで体裁は保たれていると思っていたし、マリアベルが自ら言うことはないだろうとも思っていた。

 まさに、マリアベルを軽んじていたのだ。


「婚約解消は出来ないの? これではマリアベルが可哀想だわ」


「………………そうだな、別に共同経営一つ潰れても我が家は問題ないしな」


 公爵家の方が私財にしても土地にしても豊かなのだ。

 1つ事業が潰れても、父は娘のためならと行動に移してくれるだろうとナターシャも思っていた。


「とりあえず、明日は様子を見ようと思うの。マリアベルは自分では言えないだろうし」


「そうだな。ナターシャ、頼めるか」


「当たり前よ! マリアベルの為ですもの!」


「こちらからもすぐに調べさせる。随分と舐めた真似をしてくれたものだ」


 カラン……とペンを机に投げ捨てるリンクエラ公爵は、イライラと指先でコツコツと机を叩き、鼻息荒く答えるナターシャの姿に、リンクエラ公爵も重々しく頷いた。


「…………あ、そうだ。話は変わるのだけと、ルードヴィッヒがね」


 ナターシャが話し出した内容に、父が更なる驚きを表すのは数秒後だった。






 ナターシャが怒り狂って父に話に行っている時、マリアベルはルードヴィッヒと取り残された室内で2人きりになっていた。

 3年前にナターシャの護衛となり挨拶を交わしてから、時折目は会うが会話はしていない2人。

 だからこそ、残された状態で一体どうしろと……?! と焦りに焦っていた。


 3年前からお稽古などが増えてナターシャとゆっくりする時間がないからこそ、一目惚れした相手への抵抗力が皆無なマリアベルはチラチラとルードヴィッヒを見るだけだった。


「マリアベル様、明日なのですが」


「はっ……はい!」


「……緊張なさっていますか?」


「ご……ごめんなさい」


 スカートを握りしめて俯くマリアベルにルードヴィッヒは小さく笑った。

 双子と言っても全く似ていない2人。

 いつも活発なナターシャを見ているから、よけいに小さくなり焦っている女性らしさを全面に出したマリアベルを可愛いと素直に目を細める。


 ゆっくりと近付き、俯くマリアベルの前に膝をついたルードヴィッヒは、輝く笑顔を浮かべて見つめてきた。


「っ……!! あ……ち、近い、です」


「失礼。ですがマリアベル様、少し大事な話をしたいと思いますので俺を見てください」


「はっ……はい」


 真っ赤な顔のままスカートを握りしめてルードヴィッヒを見るマリアベルに困ったように笑った。

 そして、ナターシャよりも小さな手をルードヴィッヒの大きな手が握りしめる。


「明日のお茶会、ナターシャ様もご一緒する時俺も待機いたします。なので、なにも怖いことはありません。何かありましたら俺もヘレンもいますからなにも心配しなくていいですからね」


「………………あ」


 いきなりの触れ合いに、そばに居るという言葉は今まで出会ってから初めての事で。


「……きょ」


「きょ?」


「供給が……いきなり供給が過ぎますぅぅ」


 くしゃりと顔を歪めて力無く呟くマリアベルに、ルードヴィッヒはキョトンとした。

 それからすぐに笑い、供給? と首を傾げる。


「マリアベル様は、婚約者様にお会いして不安になる事はありますか?」


「不安……えぇと……」


 マリアベルがガウディに会うときは常に不安を抱えていた。

 常に不満そうで、マリアベルの行動ひとつで睨みつけるのは通常モードだ。

 まだ婚約関係になったすぐの時、マリアベルは頑張って話しかけていた場面があった。

 その時、面倒だと手を振りあげた時に強めにマリアベルの頬を叩いた。

 わざとではなかったのだが、反射で出た手はマリアベルの頬を叩き、変色させたのだ。


 顔色を変えたマリアベルがどう出るかとジッと観察していたガウディは、震えながら謝る姿に小さく笑った。

 この時専属騎士のおじ様が庇ったことが気に入らず、1年後に専属を外すようにと脅すように言ってきたのをマリアベルは今でも覚えている。

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