第二十七話 準備万端!出かける前の楽しみは。
どうもご無沙汰しております。可愛い私こと、杜若苺來です。
白と灰色の二色で塗りつぶされた外の景色はいつも通り。ですがカリブンクルスの中では、連日慌ただしい時間が流れていました。
というのも、ヴィクター様含めてみんなで初めてお出かけの準備をしていたからです。
しかも一日二日の外出ではなくて、一ヶ月近く別の街に行くとか──。誰かとどこかへ行くなんてこと、全く初めての経験です。
まだ出かける時間でもないのに、こうして私とアデル、リュカの三人で玄関前で荷物番をしていました。
「────やっぱりあれも持ち込むんですか?」
「当然。マイマイは本当にいいの? あれを置いていってさ?」
ある荷物を視線で示すと、リュカとアデルが同じものに頭を向けました。
「みんなお出かけ用にカスタマイズしてるんだよ。マイマイも作って貰えば良かったね」
「安眠出来なくなってもボクたち知らないからね~」
玄関ホールには持ち出す荷物と一緒に六基、大きな大きな人がひとり収まるのにちょうど良さそうな箱がありました。
この時まで実物を見た事がなかったのですが、シックなデザインがとてもオシャレです。
「私は床でもソファでもどこでも寝られる体質なんです。ベッドのひとつやふたつ、なくたって大丈夫です!」
「親指を立ててまで自慢することじゃないでしょ? ソファはともかく、床で寝るのだけはやめてよね」
数を数えるときは基と呼ばれる箱は、私以外のみんなの寝具です。寝具と呼ぶには少々コンパクトすぎますが、どうやら皆さんにはちょうど良いみたいです。────あの棺桶たちが。
昨今、ウラーにだって科学技術が詰まったカプセル型の寝具もあったりするので驚きはしませんが、みんながこの並ぶ箱の中で寝るのかなって思うと、ちょっとだけ不思議な気持ちになります。オシャレな箱だけに、開けたらプレゼントみたいに中にみんなが入っているのかと────。
「とはいえ、今回もヴィクター様やフィルたちは使わないんじゃないかな」
「……そうなんですか?」
「あんま寝なくても私たちは平気だからね。昔からの習慣で、一日の区切りに寝るようにしているだけで」
「一日は長いしね。この身体になってから陽が登って落ちるのをずっと数えていたこともあったけど、フィルが邪魔だっていうから止めた。ボクが数えなくても、日付が変わるとジェイドたちも数えてくれるしね」
私と変わらない見た目をしたアデルとフィルがあれこれと知らない昔話を始めると、仄かに冷たい風が私の心まで届きました。
「─────そうなんだ」
並ぶ棺桶たちは静かでした。蓋がされ、誰にも邪魔されないひとりだけの空間で寝るってどんな感じなのでしょう?
楽しい夢なら醒めないでと思うけど、すぐにベッドから降りて皆に話に行って私は満足してしまいます。────あの箱のベッドでは、誰かと話したくてもすぐに真っ暗な壁が目の前にあって、慌てて起きたらぶつかってしまう。
きっとみんな、────ヴィクターもそう慌てて起きることなんてないと思っていました。だけどずっと寝ないでいるってどんな感じなのでしょう?
寝て夢を見ることよりも、起きている方が楽しかったりするのでしょうか────。
前に外で二人で話した日のことを思い出します。
熱の灯らない冷たいあの赤色は、ずっとどこを見ているのか。
そのことばかりが私は気になってしまいました。




