ママ(♂)になるためには、第4歩
私が、ルーカスと家族愛を確かめているうちに、優秀なジルは、お風呂を準備してくれていたようだ。
「風呂の準備ができたんですけど、ミッシェル様はどうします?」
「もちろん、ミッシェル含めて全員で入るぞ」
最終的にミッシェルは、自分の顔だけでなく、頭まで夕飯で、芸術的なコーティングをした。なぜ、デザートのアイスを頭につけられるのだろうか。もしかしたら、一種の才能かもしれない。
「かしこまりました。じゃ、俺は部屋で待機してますので」
「うん?何を言ってる?全員でと言っただろう。」
「はい。ですから、家族水入らずでどうぞ」
「ああ、ジルも一緒に、な。」
「え、ええぇぇ!嫌ですよ!今日ぐらい、お一人で頑張って下さい」
「私が、自分の面倒をみつつ子供達のお世話なんて出来るわけないだろう」
全くジルは何を言ってるのだ。生まれてから、いつも誰かしらお世話をされている私が、お風呂なんて器用なこと出来るわけないだろう。
かと言って、幼いルーカスやミッシェルを一人でお風呂させるわけにはいかない。
「貴方、ママを目指しているんでしょ。ここが頑張り時では?」
「それとこれとは、違う。」
「あ、あの!僕、一人ではいれます。お父様のお手を煩わせることは……」
「あぁ!そんなルーカスまで!……でもな、ルーカス。お父様はルーカスとミッシェルと皆でお風呂入りたいんだ。お父様の我儘を叶えてはくれないのかい?」
「あぅ、ぅう……お父様、そう望むなら」
……おぉ!神よ!!!!ルーカスはなんでこんなに可愛いのか!!!
その可愛いらしい小さいなお顔を真っ赤にしながら、小さく「僕もお父様とご一緒がいいです」なんて呟くのだろう!!!!しかも、私の服の裾を掴んで。
その表情、言葉、仕草で父を悶えさせてどうしたいのだろうか。
「可愛い♡可愛い♡可愛いなぁ、ルーカスは♡」
「ぅぅ、お父様、くるしっ」
「あぁ、もう!分かりましたよ!一緒に入ればいいんでしょ、一緒に。まったく…」
だから、初めからそう言ってるだろう。
そして、場面は変わり浴室。
いくら部屋が素晴らしいとはいえ、所詮はホテル。あまり、お風呂は期待していなかったのだが。
「おお!ちゃんと花弁が浮かんでいるのか!ますます凄いぞ!」
「おっきーです」
屋敷と遜色しないほど豪華な湯船には、いつも通り、花弁が浮んでいる。
「いっときますが、これをやったの俺ですから。ホテルにそんなサービスはありません」
「そうなのか?ありがとう!ジル!流石だな!」
と振り返れば、脱がずにズボンとワイシャツの裾だけ捲ったジルが、ミッシェルを抱えていた。私とルーカスは、もうとっくに裸なのに。
「なんだ?まだ脱いでなかったのか?ほら、ミッシェルは私が抱えているから」
「あぁ、いいですいいです、これで。それよりも、冷える前にさっさとお湯に入ってください」
かけ湯を忘れないで下さいよ、と言いながら、ジルはミッシェルを洗いに離れてしまう。
いくら、ジルが器用とはいえ、どうせ濡れしまうだろうに。強情な奴め。
どうでも良い設定ですが、ジルは一人称を私的のときは「俺」、公的なときは「私」と使い分けてます。器用。