ママ(♂)になるためには、第3歩
結局、夕飯はホテルのルームサービスという便利な方法で無事に入手。頼むときに、「今からコース料理は無理です」と断われ、一時はどうなるかと思った。コース料理なんて、晩餐位しか食べないんだけどなぁ。
用意してもらった夕食は、ルーカス達には胃に優しいオカユを私達は日替わり定食という食事を用意してもらった。
「さぁ、食べようか。ミッシェルは一人で食べられるかな、あーんしする?」
「ミシェー、ひとぉいで、たべぅよ」
「そうかそうか。良い子だな〜ミッシェルは。ルーカスはどうかな?一人で大丈夫かな?」
「は、はい。お父様。…ご心配頂き…ありがとうございます……」
「……そうかそうか。熱いからふぅふぅして食べなさい。無理せずに、自分のペースで良いからなぁ」
姿勢良く、しかし、明らかに小刻みに震えるルーカスの背をゆっくり撫でる。
ルーカスの様子が変わったのは、せっかくだからとバルコニーの丸テーブルを4人で囲み着席した位だろうか。
それまで、多少戸惑いを見せながらも感情を出していたルーカスは、まるで、断罪を待つ罪人のような、何も感情もない人形だった。なのに、この中で誰よりもテーブルマナーは完璧だった。
「にぃに、おぅしーねぇー」
「………」
そう、実に。口の周りを汚しながら、テーブルマナーなど全くなさそうなミッシェルと対象的なほどに。音もたてず、しせいも崩さず、言葉も発しない。
脳裏に、鞭打たれていたルーカスの姿を思い出す。
「そうか、そうか。食後のデザートもあるからなぁ。一杯食べなさい。」
が、それをこの場指摘するほど、私の罪も軽くはない。
夕飯のデザートを食べ終わるかどうかぐらいで、ミッシェルは限界にきたのか、遂に夢の世界に旅立った。
「よしよし、お腹一杯になったな〜。ルーカスはもう少し食べるか?足りなかったら、もっと頼んでも良いぞ」
「い、いえ。ぼくは、ぼくはもう、大丈夫です」
「そうかそうか。ルーカスも一杯食べて偉いな。マナーも完璧だったなぁ。ルーカスはとても立派だなぁ。お父様、知らなかったよ。ごめんなぁ」
よしよしと、ルーカスの頭を撫でる。本当は、泣きそうなこのこを今すぐぎゅっとはぐしたい。
いや、やっぱりする。
ハグして、なでなでだ。
「お、お父様??ぼ、ぼく、なにか」
「いいや。私が可愛いルーカスをハグしたかったんだ。ルーカスは私とのハグは嫌か?」
「あっの、あの、僕」
「うん」
「ぼく、ぼく。……」
戸惑っているルーカスを辛抱強く待つ。ゆっくり、ゆっくりでいいのだ。焦ることはない。
「ぼく、も、おとう、さまと、ぎゅうしたい、です」
………うちのこ、天使か!!!!!いや、天使だった!最高に可愛い!!
明らかに怖いだろうに、戸惑っているだろうに、おずおずとちっちゃいお手々を私の首に回してくれるなんて!なんて可愛いのだろう。もうもう。
「大好き。愛しているよ。私のルーカス」
「はい……はい」
追々書ければと思いますが、主人公の罪は、仕事を言い訳に家族を顧みなかった事です。
無知も罪。