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ママ(♂)になるためには、第13歩

最初に別視点のエピソードが入ります。

??視点 『幼馴染の主張』


 ルイは昔から可愛らしかった。

「はじめまして、ルイです。なかよく、してくだしゃい。るーと、ゔ…び…るーびっひさま!」

 同い年のはずなのに小さい俺よりも小さい身体で、まだ上手に話せないがらもしっかり教えてられたマナーで挨拶する。その姿に、俺の中のないはずの母性が確かに疼いたのだ。

 本当はルートヴィヒだか。くださいが、くだしゃいになってたが…!

「…?るーびっひしゃま?」

 ルイの可愛さに、つい、俺が返礼を返し忘れたからか、不安そうにというよりも「あれ?」という感じで首を傾げるその姿に、

「ルートでいい…」

 としか、当時の俺は言えなかった。

 そもそも、俺は貴族と言っても代々武を極め騎士として軍として国を御守することを生業としてきたせいか、ルイのような如何にも貴族の坊っちゃんといった同年代は初めてだったのだ。 

 それに、関われば関わるほど。

「とりしゃん!るーとさま!しろいとりさんが!」

「ああ、かわいいな」

「おにわに、お花が、さいたので、るーとさまにあげます!」

「ありがとう」

 ルイの言動もあり、とにかく、どんどん愛くるしく成長していったのだ。

 いや、確かに容姿を言えば、どちらかと言うと地味なルイよりも乳兄弟で侍従のジルの方が華やかで男女関係なくモテる。

 が、ルイには流石は侯爵家の子息というだけあって、日々メイド達に磨かき抜かれた肌に洗練された洋服を纏い、本当に貴族かというぐらいに穢を知らないように純粋に笑う姿は、誰よりも魅力的だろう。

 いやむしろ、玉の輿を狙い這い寄ってくる女どもに比べたらよっぽど淑女といえる。

 しかし、諸君らもご存知の様に、そんな完璧で可愛いルイが何かと事件に巻き込まれては怪我をする事が昔から多かった。

 それならば、せめてもの力になればと思い自分と同じ鍛錬に誘ったのは俺だ。(言っておくが、けして下心などではない)

「フゥッ…ンッ…ウッ!ハァハァ」

「ルイ!その調子です!頑張って下さい!」

「ウ〜〜ンッ!……ハァハァハァ…ジィゥル…ハァ、いまなんかぃ……ハァ」

「16回ですよ。まだ半分もありますよ!さぁ、まだまだ」

「んんんッ!」

 しかし、周りが第二成長期を向かえているのにも関わらず、全くその気配がないルイの独特の高い喘ぎ…いやいや、掛け声は思春期の男どもにとっての毒になるばかりで、本人の筋肉には一切ならないと言う悲しい現実。

 もう、そこでニヤニヤ笑ってその様子を見ている皇太子殿下(現、国王陛下)に侍従(ジル)共々囲まれてしまえと、何度思ったことだろうか。

 ……すまない、話しが逸れてしまった、本題に戻そう。

 とにかく、そんな可愛く心優しい純粋なルイが、『突然、自分の奥方に暴力を奮い、使用人達を理不尽に解雇し、自分は浮気相手とホテルに籠もっている』等という噂は誠に信じられない。荒唐無稽と言えるだろう。

 これを読む同志達よ。ルイの幼馴染である俺が宣言する。

 これは誰かの陰謀論だと!

 だが、安心をしてほしい。速報によると明日の正午に王宮に参上した際に、ルイは彼の息子達と共に我々で保護する予定である。だからどうか、諸君らには心を静め、冷静に速報を待っていてほしい。


――『緊急刊行、秘密の薔薇園』から、我らが同志であるルートヴィヒ氏による寄稿。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



 王宮に向かっている間も、向かいの座席に座っているジルは最後の最後まで、子供達を連れて行く事に反対しているようだった。

「確かに、ルーカス様もミッシェル様も大人しく良い子ですよ。でも、お二人ともデビュタントもしてないのに」

「良い子なら大丈夫。二人ともお父様がお話ししているとき、大人しく座っていられるかなぁ?」

「はい!大丈夫です。僕、ミッシェルのお世話できます」

「ミシェー、くまぁしゃんといしょー」

「そうだねぇ。ミッシェルはくまさんと一緒なら大丈夫だもんねぇ」

 ミッシェルがホテルから連れてきたくまさんを持ち上げる。すっかりお気に入りで、どこにでも持ち歩きたがったので、魔法で小さくしてみた。これなら転ぶこともない。

「そんな(ルイ)ネギ(ルーカス達)背負って、狼の前に行くような真似をして。これでは、お二人を言い訳に帰宅できないじゃないですか」

「なぜ急に鴨の話しになる?ジル」

「言葉の綾ですよ。もう、本当に知りませんからね」

 ジルのご機嫌ば全然治らない、いや多分、これは心配しているから怒っている。と思う。

「すまない。ジル。だか、いくらホテルだからとはいっても子供二人では置いていけない。それに…」

「それに?」

「…いや、いずれにしろ、何処かで解決しないといけない問題だよ。それこそ王宮に出仕のたびに二人を連れていく事はできないし」

「ん?今、言葉変えてました?」

 う…ジル、鋭い。

「あっ、あの、ぼ、僕!一人でもミッシェルの…面倒みれます…うまく…ないかも、しれないですけど…」

 私達の会話を聞いていたルーカスが、はいと手を挙げてくれたが、その言葉は段々小さくなり手は徐々に下がっていく。

 もう!本当にこの子は愛おしい!

堪らずに、隣にいたルーカスをギュと抱き寄せる。

「ありがとう、ルーカス。大好きだよ。それじゃあ、ルーカスにはミッシェルの面倒をみてもらおうかな」

「はい!」

「そして、そのルーカスの面倒は私がみよう」

「はい!」

「あ、ミシェーも!ミシェーも!ギュー」

「うんうん、ミッシェルもギュー!!!」

「フフフッ!お父様、くすぐったいです」

「キャハハハ!くましゃんもー!!」

「うんうん、大丈夫、大丈夫だよ。家族皆でいようねぇ」

 三人一緒にギュウギュウと笑いながらくっつく。

「はいはい、尊い尊い。…あーあ、こうやって囲われるんでしょうねぇ。俺だけの楽園だったのに…」

「ジル?」

「お気に入なさらず。ほら、つきましたよ。今開けま――」

 ジルの言葉が終わる前に外側から乗り物の扉が開いた。

「すまない。中から可愛らしい声が聞こえたから待ち切れずに開けてしまったよ」

 そして、扉を開けた張本人の男、いや、恐れ多くこの方は、

「国王、陛下」

「やぁ、ルイ。待ってたよ。それにしても、ずいぶん尊い光景だね。」

 まず迎えには来れないはずの、最も尊きご身分である我らが国王陛下が「眼福眼福」とニコニコ笑って、扉の取っ手を持っていた。

解説。

『秘密の薔薇園』

王宮を中心に貴族の有志達が所属する秘密ファンクラブ。主な活動は自分達の推しのルイを、本人に気付かられないように陰ながら見守り愛でて、また情報を共有してその尊さを語り、更には情報雑誌(写真と動画つき)を発行する。いわゆる親衛隊とファンクラブの間みたいなもの。派閥によって、『秘密の◯◯園』と名前が変わる。

『秘密の薔薇園』は、元々ルイジルの主従を一緒に推す会だったが、ジルが突き止め入会したため、最近は専らルイを推す会となっている。会長は国王陛下、副会長は宰相閣下。

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