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ママ(♂)になるためには、第12歩

 神殿を出てまずは病院。親子共々、栄養をつけなさいと注意された。

「それ以外に何か異常な点は?」

「特にありませんよ。強いて言うなら、ミッシェル様の発達が他の子よりも遅れているぐらいですが…。まぁ、ルーカス様もミッシェル様もよく食べよく寝て、しっかり遊んでいれば成長するものです。心配御無用」

「ミシェー、げぇきよぉ!」

「はい!僕も元気です!」

 朗らかに笑う二人の背中は昨日まであった傷が全て綺麗に消えていた。本当に良かった。


 一安心したところで、次は服屋へ。

 直ぐに服がほしいので、今回はオーダーメイドではなく既製品をかう。

「にぃに。おひぃめしゃまねぇー」

「ミッシェル!僕、女の子じゃないよぉ」

「にぃに、がぁ、おひぃめしゃまでぇー、ミシェーがおーじしゃまー」

 どうやらアランに読んでもらった絵本にルーカスそっくりのお姫様が登場したらしい。ミッシェルが店にあるワンピースを着せようと逃げるルーカスの後を追う。

「お父様ー!ミッシェルがぁ」

「よしよし。ミッシェル、駄目だよ。ルーカスが嫌がってる」

 追いかけ回され流石に泣きそうなルーカスを抱き上げ、ミッシェルを叱る。

「んもぅ!ミシェー、わるぅない!」

「今回は悪いよ。ルーカスが嫌がってるもん。ほらごめんなさいしよ」

「やーー!」

「ルーカスがミッシェルを嫌いになってもいいの?」

「うぅ……」

「ルーカス」

「にぃに…ごめぇーしゃい」

「…いいよ。」

 よし、ごめんなさいも、良いよも、できた。やっぱりこの子達は自慢の子供達だ。うんうんとうなずいていたら、ジルがやってきた。

「何やっているんですか?次いきますよ」

 この間に、服は頼りになるジルが手早く購入していてくれた。流石だ。


 そして、最後に日用品を買いに百貨店へ。

 必要な物は私が手配しますので、ここで大人しく待っていて下さいとジルに釘を刺されたので、店の奥の客室でルーカス達と待っている。

 お茶とお菓子を出されたが、うーん、暇だ。あ。

「この店に玩具はありませんか?」

「玩具、でございますか?」

「この子達の絵本やぬいぐるみとか欲しいです。ありませんか?」

 しばらく拠点にするつもりのホテルには、神殿にあった玩具や絵本はなかった。せっかく買物にきたのだから、私からもルーカスやミッシェルにプレゼントしたい。

「かしこまりました。すぐに持ってまいります。」

 部屋に待機していた女性店員が通信機に何か話すこと、数分後。部屋には沢山の玩具や絵本、ぬいぐるみを抱えた店員が次々にやってくる。

「わぁ!わぁ!しゅごーい!」

「凄い!凄い!お父様、どんどん来ます!!」

 玩具が到着するたびに、ルーカスとミッシェルの歓声が上がり、自然と部屋の中に笑いがあふれる。

「二人とも好きなのを選んでいいからね。」

 その言葉を聞いて、二人とも大人しく座っていた椅子から飛び跳ねるように玩具の山に駆け寄っていく。

「このクマさん、フワフワです!」

「ミシェーも!ミシェーも!」

「あ!これ知らないおもちゃです!何ですか?」

「ミシェー!こぇ!にぃにみて!!」

 ある教育書には、無制限に子供達に玩具を買い与えるのは教育上良くないと書いてあったがこんなに可愛い笑顔がみれるのだから、これ位は大丈夫だろう。

「お父様!僕、これにします!うさちゃん!」

「ミシェーは、こぇ!くまぁしゃん!」

 ルーカスは白くて大きいうさぎのぬいぐるみ、ミッシェルも大きな金色のくまのぬいぐるみに決めたようだった。うんうん、どっちも買おうね。ついでに幾つかの玩具と数冊の絵本を購入する。

「旦那様」

「あ、ジルお帰り。」

「何ですか?この玩具は?」

「私から可愛い子供達へのプレゼント」

「もう!大人しくしてて下さいと言ってたでしょう」

「うん、だからちゃんとここで大人しくしてた」

 勝手に出歩くことなく、ちゃんとお願いして持ってきて貰った。

「ハァ、はいはい、そうですね。あ、支払はこれも全て纏めて、ええ……それで…この住所へ郵送して―」

「お父様、ありがとうございます!」

「おとぅしゃー、ありあとーぉじゃいましゅ!」

 何故かジルからはため息を付かれたが、ぬいぐるみを抱っこしたルーカスとミッシェルの笑顔が天使のように可愛いから問題ない。


 そして、現在、ホテルに帰宅しベランダに。

 ホテルの気遣いで、昨日より少し豪華な食事で夕飯を取っているのだが、そこにパタパタと小さな白い小鳥が現れては消えていく。

「旦那様?いい加減、無視はできませんよ?」

「ん、んー。もう少し。」

「いえ、貴方が無視をしているから、私の所まで手紙が来ているんですが」

「とりぃしゃん、かぁいーねぇ」

「あぁほら!また来たじゃないですか!」

「僕、精霊を初めて見ました。思ったより小さいですね」

「これはシマエナガという鳥の精霊だよ、ルーカス。王宮とホテル位の距離だからねぇ。これが、例えば王宮から地方とかになれば、鷲や鳶などの大型に変わるんだよ」

「そうなんですか!凄いですねぇ、お父様」

 うんうん、お父様は昨日より笑顔でお食事をしてくれるルーカスが眩しいよ。まだまだ、緊張はしているけど、話す位の余裕はでできたみたいで本当に良かった。

「話をそらさないで下さい、旦那様。旦那様?…ルイ!」

「ごめん、ジル。でも、嫌なんだもん。()()

 先程から現れては消えるシマエナガの精霊は、王宮にいる上司たちからの手紙を運んでいる。手紙を運ぶに度にシマエナガはその姿を現すのだが、その頻度は神殿を出た辺りから格段に増え、現在、ひっきりなしに来る。

「嫌だ嫌だと先延ばしにしてたら、余計に面倒くさく成りますよ」

「そうなんだけどねぇ」

 手紙の件名が「今すぐ返信すべし」なんだよなぁ。仕事のことならともかく、確実にあのクソ女の事だろうし。考えれば考えるほど、嫌になってくる。ハァ。

「おとぅしゃー」

「なぁに、ミッシェル」

「ミシェーがぁ、すぅよー」

「うん?なにをしてくれるのかなぁ」

「おててみぃ!ミシェー、かくぅよぉ。もちもちぃってぇ」

 もしかして、私の代りにお手紙を書くと言ってくれているのだろうか。なんて優しい子!

「わー!お父様の代わりにお手紙を書いてあげるなんて、ミッシェル様は偉いですねぇ!」

 ってジル、うるさい。

「ん!ミシェーえらぁいねぇ」

 ハァ。

「分かった、書くよ…」

「はい。お願いしますね、旦那様」

 もう、ジルは他人事と思って!こうなった時の説明と説得ってとっても大変なのに!

「んー………うん。明日…ご説明をしに、全員で…参上致します……」

「…はい?何と」

「これでよし」

「ちょ、まっ―」

「はい、送信」

「あぁぁ!何て事を!」

 もう!ジルうるさい!大声にルーカスとミッシェルが驚いているだろう。

「え、え、全員って言いました?全員て、まさか」

「全員は全員。ルーカス、ミッシェル。明日はお父様と一緒に王宮に行こうかぁ。」

「おぅきゅー!」

「明日、王様にお会いするんですか?」

「そうだぞ〜。二人とも今日みたいにこんにちはってご挨拶できるかなぁ」

「はい!任せて下さい!お父様」

「ミシェーできぅよー」

 よし、二人ともいい返事。これで話しは纏まった。

「ハァ、絶対、面倒な事になる…」

 ジルはなんか納得していないみたいだけど。でも、経験上、こういうのは手紙より直接あって話す方がいいんだよなぁ。

「あ、返信きた。…分かった、待ってる。だってさ」

「ハァァァ」

念の為、補足。

ルイ達は単なる貴族というだけでなく、国王と個人的なやりとりができるくらい超超上位貴族です。なので、既製品の服と言っても超有名ブランドのお店を貸切にしますし、百貨店では超VIP待遇です。


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