ママ(♂)になるためには、第7歩
さて、ルーカスのメンタルケアが終ったところで。
「神殿に行くかぁ」
今度は、私の罪を償う番だ。
相変わらずミッシェルの芸術が炸裂した朝食でなんやかんや、そのままで出歩いたら貴族の名折れとかいうジルに風呂で磨かれてなんやかんや。
結局、神殿についたのは、お昼過ぎ頃。
「ジル、私、初めて、貴族ってめんどくさいって思ったよ」
「急にどうしました?いつもの事でしょう」
いや、そうなんだけどさ。こう、速くこれをしたいって思った時に、体裁とか貴族の柵とかで動けないってなんか嫌だなって、初めて思ったよ。今までは平気だったのにね。
「ミッシェル、これ、神殿っていうんだよ」
「しぃでぇー」
「そう、お祈りするところだよ。ミッシェル、お祈りできる?」
「う?」
現在、両手でそれぞれルーカスとミッシェルと手を繋いでいるが、二人はコソコソと私の足越しにお話ししていて、その姿何とも愛らしい。
「ここに、お父様の知り合いがいるんだよ。今日はその人に会いに来たんだよ」
そういえば、この子達は私を含めて周りに碌な大人がいなかったが、ちゃんとご挨拶はできるだろうか。今後はそこら辺もちゃんと教えていかねば。
「初めまして。息子のルーカスです。父がお世話になっております」
「はぁじめぇーして。…ミシェーでしゅ。ちぃーがせぇ…してましゅ!」
ちゃんと出来た!もう、百点満点、花丸だ!ミッシェルもちゃんとルーカスの真似をして、分からないながらも挨拶できた。本当に賢い子達だ。
「はい。こんにちは。私はアズールと言います。君達のお父様の友達です。」
そして、良い子たちの可愛い挨拶を受けている神官がこそが、学生時代からの友人であり王宮に聖女の存在を知らせた人物だ。
「で、彼女はどこに?とりあえず、力をみたい」
「普段の貴方に似合わず、ずいぶん早急ですね。お茶の席を設けたんですけど」
「え、あ、そうなのか?すまない、アズール。今日は急いでて」
なんせ、このあとはルーカス達の服を調達して、意外と足りなかった日用品を買い足して、病院いって。ああ、それと、今日の朝から国王陛下含めた上司達から物凄い手紙が来ているからそれの対応と……。とにかく忙しい。が、せっかく用意してくれた席を無下にするのも、悪い。
「あぁ、気にしないで下さい、ルイ。私達、同期の中で一番貴族然としていた貴方が、珍しいと思っただけですから」
「うぅ、すまない。この埋め合わせは、今度、必ず」
「はい。楽しみにしてます。さ、こちらに。案内しますよ」
気を遣わせてしまったアズールには、今度、高級チョコレートと年代物のブランデーを差し入れよう。
アズールに案内され、神殿の奥へ奥へと歩くが、ずいぶん遠い。
「ミッシェル、ルーカス。大丈夫か?抱っこするか?」
「僕、大丈夫です。歩けます」
「とうしゃー。だこー」
ミッシェルのみ抱っこする。というか、ミッシェルの体温が高い。これはおねむかな。
「ミッシェル、もしかして、眠いかな?ねんねする?」
「ンー…」
「旦那様。ミッシェル様が寝るなら、私が代わりますよ。」
「ジル、やーー。とぅしゃーがいいー」
「ミッシェル、ミッシェル。寝ちゃだめだよ。ほら起きて」
「ルーカス、ジル。大丈夫だよ。私だって寝てるミッシェルを抱っこするくらいできるよ。」
速く移動するための提案をしたつもりだったのに、結局わちゃわちゃし始めてしまう。待たせてしまったアズールに謝らないと。
「……なんというか。貴方がた、とっても、家族っぽいですね」
傍からみてたアズールが怒った様子もなく、ポツリと呟いた言葉に謝罪の言葉が吹っ飛んでしまうり
「え?アズール?その、私達はもとから家族だが?」
「いえ、そういう事では無いのですが。まぁ、気にしないで下さい。さぁ行きましょう」
何なんだろう。もしやジルの事だろうか。確かに、血は繋がっていないが、そんなの関係ないくらい一緒だ。
私の腕にはミッシェル、右隣にはルーカス、後ろのにはジル。
うん、どっからどう見ても私達は家族だ。