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第3章 どうなる?学生寮

 8月18日の午前10時、ビジリアン高校に通っている私たち3年生は補習授業に参加しなくてはならないので、登校し、授業をぼんやりと聞いている。


(頭の中にはぜーんぜん入ってこないし、しかも残暑がキツ過ぎるわ)


 私はそう思いながら授業用ノートに板書をひたすら写す、先生の説明はあまり聞けていないと言う受験生にしてはあからさまに宜しくない行為である。


 実は、この学校は進学校で、主にマリヌ大学と呼ばれる中堅の私立大学に通う人が多いそうだ。


 もちろん、進学校では冷暖房は完備されているはずなのに、3年9組の教室だけエアコンが古すぎて故障してしまい、現在修理中であるため、室温が33度シーを超える最悪の空間を日々過ごしているのである。


 だから、いくら丁寧に授業をしてくれていても頭に入って来ず、授業をしている意味がわからない人が9組にはたくさんいるのだ。


 

 昼過ぎ、この日の授業が終わって、天国の学生寮に帰る時が来た。学生寮は通路でも室内でも冷房が良い感じで効いており、受験生が勉強するには最適の環境である。


「あー、学校や家にいるよりも随分過ごしやすいなぁ」


 私は幸せな顔をしてカバンから鍵を取り出してドアを開ける。


 ドアを手前に引いた瞬間、かなり涼しい風が私の身体に当たって、本当に気持ちがいい。


(やっぱり、24度シーに設定してから学校に行って大正解!)


 私は上機嫌で部屋の中に入っていった。



 13時、同寮生が全員帰宅してから丁度良いタイミングで昼食が届いた。中でもラッキーなのは、私の大好物なソーダアイスがデザートとして出されていたことだ。


「今日の昼飯はそうめん2人前にアイス、何て最高なんだろうなー」


 貴弘はいただきますを言う前にそうめんを口に運んだ。


「残暑のきついこの時期にはそうめんがぴったりだね」


 紗理は付属のおろしわさびを全部つゆの中に入れて箸でかき混ぜる。


「紗理、辛くない?そんなにわさびを足して……」


 私はじゅるじゅるとそうめんをすする。


「ああ、平気よ。あたしは辛党だから」


「えっ………………」


 紗理が私に微笑みかけたあと、私たちはその言葉に引いてしまった。


「雰囲気と一致しないなー」


 侑馬は首を傾げながらそうめんをつゆにつけた。



 16時、受験勉強の休憩として部屋に設置されているテレビに近寄ってニュースを見ようとスイッチを入れた。


 とある女性のニュースキャスターが最新ニュースの原稿を読み上げる。


『現在、マーシュ地区で中学生以下の子どもたちの行方不明者が日々増加しています』


 読み上げたあと、画面に行方不明者の名前が現れた。計100人強である。


「マーシュ地区って――この学生寮の地区じゃん!」


 私は目を大きく開ける。


「う……嘘だろ!?」


 貴弘は真っ青になる。


「本当よ。この学生寮は一般の成人には見えないと言う最大の欠点が露骨に表れたね」


 紗理は目をつぶって冷静な声を発する。


「なるほどな。ってことは、このままでは学生寮が消滅するってわけか?」


「うん、おそらく侑馬の言う通り。この学生寮は部屋ごとの住所が無いんだよ、きっと」


 私は部屋の鍵をいじる。


「このままじゃあ、困るなぁ……」


 私たちは深いため息をつく。この学生寮で生活出来なくなると、志望校のリンバス大学までの通学時間がかなりかかるから、自宅から通うことになると思い切り時間の無駄となってしまう。



 1週間後の土曜日の朝、デイリーデパートに取材班が来ると聞いた私たちは、店の出入り口付近で様子を窺う。どうやら、マスコミが店長に取材の許可をもらおうとしているようだ。


 店長は取材の許可を与えたからか、取材班は店内に侵入した。


「ここにいたらヤバイ気がしない?」


「こんな所でこそこそしていたら怪しまれるだけだから、亜依の言ったように物陰に隠れながら様子を見よう」


 紗理はそう言ったあと、私たちは紗理の後をついて4階に上がった。


 4階に着くと、取材班は子どもたちと彼らの親を集めて取り調べを行っているのを目にする。場所は幻の5階の出入り口だ。


「この先に何かが見えるんだよ」


 ある小学生が正直に言う。


 その話を聞いた取材班や母親は成人だから、当然信じていない。


「そこまで僕を疑うのなら実際に入ってみるよ」


(ま……マジか!)


 近くの商品棚に隠れている私たちはギョッとする。


 ある少年は実際に空間に近づく。そして……空間の中に入った。


「おい、見たか。少年が消えたのを」


 その様子を見た取材班たちは、その場で騒ぐ。


 取材班と子どもたちの親は子どもの後をついて未知の空間に入った。


「ねぇ、ここからどうする?」


 紗理は私たちの目を合わせる。


「……少し待ってから中に入ろうか」


 私は再び目線を空間に向けた。



 一方、この頃の学生寮内では


「ここに中学生以下の子どもたちが多いと聞きましたが、一体どうなっているのですか?」


「えっ、何の話ですか?」


 薙さんは突如出現した取材班たちの質問に戸惑う。


「マーシュ地区に住む中学生以下の子どもの多数が“行方不明”になっているのですよ!」


「そんな、ウチに聞かれましても……」


 薙さんは取材班から逃げ出したいと言う思いが体の微妙な振動で伝わってくる。



 果たして、学生寮の危機は回避出来るのだろうか?

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