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食事無料券、当選者発表

一週間が過ぎた。今日は運命の抽選日である。

抽選会場は、シルヴァの店。

俺はジョージさんに言って透明の大きな箱を用意してもらった。

その中に届いた大量の応募手紙を入れていくのである。

「凄い量が届きましたね」

「おお、本当にすごいのお」

「数を数えながら、箱の中に入れていきましょう」

「ふむ。そうじゃな」

数えていった結果、応募総数は二百八だった。

「凄いです。二百八人もの人が少なくとも、シルヴァの店の存在を認知することができましたよ」

「おお。凄いのお」

「後はどれくらいの人が実際に来るかですね」

「ふむ。楽しみじゃ」


俺達は、抽選会場として事前に店の外に舞台を作っていた。

ここに見物人を集めれば、店の中に人が入りきらないなんてことにはならない。

外には椅子とテーブルも臨時で用意し、万が一お客さんが料理を食べていくことにしたとしても、対応できる。

料理やホールを手伝ってくれるボランティアの人もジョージさんが集めてくれた。


「やれることはやった。準備万端だ」


そして時間は、午前十一時五十分。抽選十分前になった。

見物人が大量に訪れていた。

「す、すごい!!こんなにも人がワシの店に来ているなんて初めてのことじゃ」

「これは食べていく人も大勢いるはずですよ。忙しくなりそうだ」

「凄いぞ、どんどん人が集まってくる」

シルヴァさんだけでなく、ジョージさんも興奮していた。


正午。抽選の時間がやってきた。

俺は舞台の上に上がった。


「皆さん。こんにちは。シルヴァの店。お食事券無料チケットプレゼントキャンペーンにご参加頂きありがとうございます」

「わーー!!!!」

「待ってましたーー!!」


賑やか。お祭り騒ぎ。

やばい。凄い盛り上がりようだ。

いやー、実は一度でいいから懸賞をやる側をやってみたかったんだよな。

その願いが叶って、俺は嬉しい。


「それでは、抽選方法を説明させて頂きます。ここに大きな透明の箱があるのが見えると思います。ご覧頂いたら分かると思いますが、この中には皆さんから届いた応募手紙が全て入っています」

「おお、あんなに届いたのか」

「凄い量だ」


見物人達の驚きの声が聞こえてくる。


「今から俺がこの箱の中に手を入れて、十枚の手紙を取り出します。その人達にシルヴァの店で使えるお食事無料券を差し上げます」

「おお」

「よし、俺が貰う」

「私が当てるわよ」

「もし選ばれなかった手紙は、全て焼却処分させて頂きますので、ご安心ください。それでは始めさせて頂きます」


一枚目の手紙をひく。

「ノエルさん。ノエルさんです。今、この場にいますか?」

「はいはいはーい!!俺でーす!!」

「では、こちらのお食事券無料チケットをどうぞ」

「ありがとうー。やったぜー」

「うおーーー!!」

「これはドキドキするぜ!!」

「楽しいイベントじゃないか!!」


そして二枚目、三枚目と、どんどん手紙を引いていく。

歓喜の声と落胆の声が聞こえてくる。


その中に最前列で目を閉じて、必死に祈っている女の子が目に入った。

可愛い女の子だ。

でもごめんね。そう簡単には当たらないんだ。

なぜなら懸賞は、賞品をかけた戦争だからだ。


そしてついに最後の十枚目。


「さあ皆さん。最後のひとりですよ。最後の一人は……ジェシカ・クローバーさん」


最前列にいる祈っていた女の子が手を挙げた。


「はい、どうぞ。おめでとうございます」

「やった……!!ありがとうございますっ!!」


次の瞬間、あー……という落胆の声が色々なところから聞こえてきた。

「だめだなー。でもここの店の料理、そんなに美味いのか?」

「試しに食っていくか?丁度昼時だしな」

「俺も食ってこう」

「私も食べていく」


きた。これを狙っていたんだ。

抽選時間を正午にしたのも、お昼時の時間帯を狙っての事。

全ては計算通りだ。


「肉料理くれるー?」

「私、魚が食べたいんだけどあるー?」

「肉料理ね。魚料理も、もちろんあるよ」

シルヴァさんが答えて、忙しそうに厨房の中へと入っていく。


「こりゃ手伝わないとな」

俺も完成した料理を運んで手伝った。


「あのう……」

声をかけてきたのは、さっき必死に祈っていた女の子だ。


「あ、お食事券無料チケット当選したさっきの!!おめでとうございます。何か?」

「ジェシカ・クローバーです。このチケットってすぐ使えますか?」

「はい。使えますよ」

「やった!!じゃあ私も肉料理を」

「はい。少々お待ちください」


料理が完成して次から次へと持っていく。

ジェシカさんの肉料理が完成し、持っていく。


「お待たせしました。肉料理です」

「わあ!!美味しそう。頂きます」


ジェシカさんは、物凄い勢いで食べ始めた。


「美味しいーー!!!!!」

「ですよね。俺も初めてシルヴァさんの料理を食べた時は感動しました」

「これ本当に無料で食べていいんですか?後でやっぱりお金を請求されたりしないですか?」

「大丈夫ですよ。おかわりも自由ですので、おなか一杯食べてくださいね」

「よーし、いっぱい食べちゃおう。じゃあおかわり!!」

「わかりました。少々お待ちくださいね」


そしてジェシカさんは、何度もおかわりして、俺達はその食欲に驚かされた。


「はあー、美味しかったー。もうおなか一杯。いやー、もう三日も何も食べてないから死ぬかと思った」

「えっ、三日も何も食べてなかったんですか?」

「はい。お金なくて」

「そうだったんですか」

「私は運が良いなあー。本当に死ぬところだったよ」

「ははは」

「あ、私ね。一応、これでも冒険者なんだけど、へっぽこでさ。実力もないし、時々パーティーに連れて行ってもらってるんだけど、いつもギリギリの生活してるんだよね」

「なるほど」

「いつもモンスターに殺されかけて死にかけてるんだけど、運良く生き残ってるんだよね」

「それ洒落にならないっすよ」

「さて、それじゃ、私はそろそろ行くね。ごちそうさまでした。とっても美味しかったです」


ジェシカさんはそう言って、無料お食事チケットで支払いを済ませて出て行った。

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