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シルヴァの飯屋

「えっ?はっ?はああああああ!?どこよ、ここ」

辺りを見回しても、木、木、木。緑、緑、緑。

「おいおい。まさか本当に転生したのか……?」

持ち物を見てみる。鞄を持っている。

「短剣が一本と、何かのカード。身分証明書?見た事ない文字だ。俺の名前が書いてあるギルドカードか。……ってなんで読めるんだ、俺」

さてこの状況をどう見る?

転生のペンダントを身に着けたら、森の中にいた。

これは状況的に本当に異世界転生したってことだ。

森と短剣とギルドカードと見たことない文字。

情報はたったこれだけだが、異世界っぽい。

いや、これはまだドッキリの可能性もある。

誰が?なぜ俺に?

いいや、そんなことは後で考えればいい。

とりあえず森を抜けなければ。

なんか獣とか危険な生物が出そうだ。

広い広い森の中をひたすら歩いた。

何時間くらい歩いただろう。

疲れたし、腹が減ってきた。

「だ、だめだ……。もう歩けない……」

俺はその場に倒れこんだ。


次に目を覚ますと、知らない部屋のベッドにいた。

「マジかよ。夢じゃなかった……」

状況的には、どうやら誰かが助けてくれたらしいな。

俺をここまで運んでくれて寝かせてくれたみたいだ。

「おや、目が覚めたかね」

おじいさんだった。

「えっと……あのっ……」

「あんた森の中で倒れていたんだよ。客の若いのに頼んでここまで運んでもらったんだ」

「そうでしたか。助けてくれてありがとうございます。あの……ここは……」

「メリウスの町の離れの所さ」

「メリウス……」

「お前さん。冒険者だろ?悪いとは思ったが身元を知るために、鞄を見させてもらった。ギルドカードが入っていた」

「冒険者……何だろうか。自分の事はよく覚えてないんです」

と、まあここは、記憶喪失とかそういう感じにしておいた方が都合が良いだろう。

異世界転生して来ましたなんて言うと怪しまれるからな。

ぐぅーと腹の音が鳴った。

「あんた腹減ってるだろ?ずっと寝てたからな」

「ああ、はい」

「ワシは飯屋をやっていてな。なんか作ってやろう」

「ああ、いや、でもお金がないから」

「あんた冒険者じゃろ?そのうち依頼をこなして儲けてからでいいよ。ツケでいい。催促もしないから金払うのは、いつでもいい」

「ああ、そうですか。じゃあお言葉に甘えて」

冒険は、まあ……したことないけどな。

部屋を出て廊下に出て階段を下りていくと、一階が店になっていた。

店舗兼住宅か。

席に座って待っていると、男が俺の前の席に座った。

「お、兄ちゃん。気が付いたかい?」

「ええっと、あなたは?」

「俺はジョージってんだ。倒れてたあんたをシルヴァの爺さんにここまで運んでくれって言われて運んで来たんだ」

「そうだったんですか。ありがとうございます」

少し待っていると料理が運ばれてきた。

「ほれ、食いな」

肉料理だ。空腹の今、腹に溜まる物は嬉しい。

「頂きます」

何の肉なのかは知らないが、まあ今はそんなことを言ってる場合じゃない。

とにかく食える時に食わなければ死んでしまう。

料理を口の中に入れた。肉汁があふれてくる。

「う、美味い!!」

「そうなんだよ。ここの料理、めちゃ美味だろ?」

なぜかジョージさんが得意げに言う。

「はい。めちゃ美味です。でもその割にお客さん少ないですね」

「うちは町から離れたところにあるからのお。立地が悪いんじゃよ」

シルヴァのおじいさんが言う。

「キャンペーンとかしないんですか?」

「なんだ?そのキャン・・・なんとかってのは?」

「ああ、えーと……つまり人を集めるためのイベントみたいな。懸賞とか」

「やったことないのお。懸賞とはなんじゃ?」

「えっ?懸賞ないんですか?」

「知らんのお」

「俺も」

「そ、そんなっ……。懸賞がないなんて……」

俺は物凄いショックを受けた。

懸賞がないなんて、俺はただのひきこもりのぼっち大学生じゃないか。

そんな会話をしてショックを受けていると、店の中に郵便局員らしき人がやってきた。

「シルヴァさん。お手紙です」

「おお、いつもすまんのお。こんな離れたところまで」

「いえ、仕事ですから」

そう言って郵便局員は、忙しそうに次の配達へと向かった。

なるほど。住所の概念とか手紙の概念はあるみたいだな。よし。

「シルヴァさん。懸賞の企画をやってみませんか?」

「ん?どういうものなんじゃ?」

「人を集める為に、プレゼントが当たるようにするんです」

「プレゼントじゃと?」

「ええ。例えばそうですね。この店の料金1回分無料チケットが当たるとか」

「お、大人数にそんなことをしていたらワシは破産してしまう。無理じゃ」

「大丈夫ですよ。当選人数は無理のない範囲で決めていいんです。例えば十人とか」

「まあそれくらいなら大丈夫じゃのお」

「応募には住所と名前を書いて、ここに手紙を送ってもらうんです。そして抽選日当日に大量に送られてきた手紙の中から、当選者を選ぶんです」

「そんなことをすればハズレる者がほとんどじゃろう。ハズレた者はどうなるんじゃ?」

「運がなかったと思ってあきらめてもらいます。でも中には、せっかくここまで足を運んだんだから料理を食べていこうという人も必ず現れるはずです」

「なるほど。ワシらの本命は、そっちということじゃな?」

「そういうことです。多くの人達に店に興味を持ってもらうことができます」

「ふむ。町の掲示板に告知を張り出せば、多くの者が興味を持つじゃろう。面白そうじゃな。よし、やろう」

こうして俺は、助けてもらった恩返しも兼ねて、シルヴァさんの店のプレゼントキャンペーンを手伝うことになった。

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