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サーガとクロムの異世界譚  作者: 小笠原慎二
本編
77/81

望みの力

前回のあらすじ~

戦闘開始!

「地系の力は苦手だっつーの!」

「自分で弱点をばらしてどうする!!」

「あんだぁ?」


岩の攻撃が止み、水の攻撃が収まった。クロムと赤髪の女は何やら奥の部屋に駆け込みもちゃもちゃと言い合っている。


「何話してんだ?」


風で聞き耳をたてようかと用意し始めたと思ったら、突然クロムの姿がサーガの側に現われた。


「どぅわ!」

「ち、どうしろというのだの!」


珍しくクロムが焦った顔をしている。


「な、なん?」


何があったのか問いかけようとしたら、奥の扉の方から再び岩の塊が飛んで来た。


「きゃー!」


慌てて逃げるサーガ。やすやす躱すクロム。


「けひひひひ! ほらあ! やってみろ!!」


先程とは違う声にサーガが顔を向けると、そこには赤髪の女ではなく黒髪黒眼の女性が立っていた。


「あれ? 誰あれ?」

「お主! いつもの得意の聞き耳はどうしたのだの!」

「いや、そんな戦闘中に常時聞き耳立ててるわけないっしょ」


防御と攻撃を優先してしまえば、小技の方に使う力などセーブしてしまうのが普通ではないか。

黒髪の女性となったモードが腕を振るえば、大きな岩の塊がサーガとクロムに向かって飛ぶ。

2人はそれを器用に躱しながら会話を続ける。


「彼奴が我が輩達の標的の聖女だの! 我が輩の目当ての人物だの!」

「あらあ。じゃああの人殺せばいいのね」

「事態はそう簡単にはいかなくなったのだの! 今彼奴には邪神が取り憑いてしまっているのだの!」

「取り憑く?」

「今のまま彼奴の命を奪ってしまえば、我が輩の目的の人物の魂がそのまま邪神に連れ去られてしまう! そうしたらまた同じ事の繰り返しになる!」

「どゆこと?」

「簡単に言ってしまえば、今あのままで彼奴の命を絶てば、我が輩達は元の世界に帰る事は叶わず、この世界のどこかの時間軸に再び降り立たなければならぬということだの!」

「え~、ちょっと待って…」


飛んでくる岩岩を避けながら、サーガは考える。


「ちょこまかと!」


モードも絶えず力を放ち続ける。


「つまり、あの女殺しても仕事が終わらねえってことだな?」

「そういうことだの!」


時に岩を両断しながら、クロムが答える。


「え~、契約期間の延長は追加料金が発生しまして~…」

「アホな事を言っとる場合か!」


風の力をドリルのように使い、岩に穴を開けるサーガ。


「え~。俺も早く帰りたいんだけど。んで殺せないならどうやって倒すのよ」

「それが分からぬからこうして攻撃を避け続けているのだろうが!」

「けひゃひゃひゃひゃひゃ! いつまで避け続けられるかな~?!」


嬉しそうにモードが腕を振るう。

サーガ達の立っている地面が波打ち、地面が盛り上がる。棘のように突き出たそれを素早く避ける。


「ちょっとちょっと。俺の仕事はあの人を殺すのを手助けするだけでしょーが。なんで仕事がややこしくなってるのよ」

「我が輩が知るか! 文句はあの邪神に言えだの!」

「おい。てめえのせいで俺の仕事が終わんねーじゃねーか」

「本当に言うのかの…」

「知るかぁ! さっさとくたばりやがれ!」


四方八方から2人を目がけて石の刃が飛ぶ。


(これは、避けきれぬ…?!)


クロムがサーガを連れて影に逃げ込もうかとするが、思ったよりも2人の距離は離れてしまっていた。


「く…!」


仕方なく1人影へと逃げ込むクロム。サーガは石の刃にズタズタにされて命を散らしてしまうかも知れない。


(だがしかし…、打つ手がなければ…)


このまま何も出来ずにクロムも邪神に殺されるしかないだろう。再び体を得てこの世界に降り立っても、邪神が八重子と同化してしまっていては何も手は出せない。


(どうすれば…)


別の影から表へ出る。サーガの方へ目を向け、その姿を確認する。


「ぬ?」


てっきりズタボロの雑巾のようにでもなり果ててしまっているのではないかと思ったが、違った。


「あ! おいてめえ! 自分だけ逃げやがって!」


サーガの周りで、一定の距離を置いて石の刃が静止している。

そして、サーガの体が淡く金の光を発していた。ちなみに、どこぞの戦闘民族のように髪が逆立ったりはしていない。


「んの野郎!」


モードが賢明にサーガを押し潰そうと力を込めているが、石達はピクリとも動きそうにない。


「お主…、地の力は弱点なのでは…」

「んだからほれ、本気で止めてるだろ」


まだまだ余裕そうに見えるが…。この金の光を纏った状態がサーガの本気モードということなのだろう。


「助けなくて良かったの…」

「だから平気だっつーたじゃねーか」

「ち、このお!」


モードが諦めたのか、石達が床に落ちる。


「弱点だっつーことには代わりねーんだろ!」


モードが手を上げる。すると空中に岩の塊が集まって行く。


「部屋の中なのにそんなことしたら…」


壁が、天井が、すでに穴があちらこちらに空いているが、それがさらに広がって行く。ついには天井が綺麗さっぱりなくなってしまう。

こんな時だが空はとても青かった。

そしてサーガ達の頭上にどんどん岩が集まり、巨大なものとなっていく。


「げははははは! さすがにこいつは避けきれねーだろ!」


クロムがサーガの側に立った。


「死ねや!」


巨大な岩がサーガとクロムに向かって落下し始めた。








「俺思い出したんだけど」

「何をだの」


影へと逃げ込んだ2人がのんきに話している。


「なんかさ、望む力をくれるとか、あの別嬪神様言ってなかったか?」

「うむ。故に我が輩は瞬間移動の力をもらったのだの」

「それ使えば良くね? おーい、神様とやら、見てんだろー?」

「もしや、影の内にいるので通信が途絶えたかの?」


別の影から2人が表に出ると、既に巨岩は落下し、建物も無残な姿になり果てていた。


「ぎゃはははは! 俺に逆らうからこうなるんだよ!」


モードが気持ちよさそうに笑う声がする。巨岩の影でその姿は見えない。


「おーい。乳揉ませてくれる約束した女神様ー」

《言ってません!》


サーガとクロムの頭の中で女神のするどいツッコミが冴え渡った。


「ん? なんだ今の声…」


巨岩の向こうでモードが気付いた。


「望む力をくれるって言ったよなー?」

《はい。なんでも望む力を1つだけ》

「だからなんでも覗ける千里眼の力を…」

《却下です》


食い気味に否定された。


「お主、まだそれを言うのかの…」


クロムの非難する目がサーガを見下ろす。


「分かってるよ。真面目に言いますよ。ちょっとしたお茶目ですよ」


半分本気では?と思ったが何も言わなかった。


「! てめら! どうやって…!」


モードがこちらの姿を認めた。


「要は、邪神とやらを倒しゃいいんだろ?」

「そうだの。だが彼奴は今、八重子に憑いておって、ほぼ同化している形であるの」

「だから、神だけ殺す力ってのがありゃいいんだろ?」

「「!」」


モードの顔が強ばった。


「あんでしょ? そーゆーの」

《ございます。されど、その力は大きすぎて、使ったが最後、その肉体は滅んでしまうことになりますが…?》

「結局元の世界に戻るにもどうせ死ななきゃならんのだろ? 結果は同じじゃん?」

「お主…」

「てめえ!」


モードが力を放つ。クロムがサーガを連れて瞬間移動した。巨岩の上に。


「! どこへ行った!」

「相変わらず気配読むの下手なのね。んで? くれるんでしょ? 力」

《分かりました。よろしくお願いします》


女神の声が、若干喜しそうな色を含んでいたのは気のせいではないかもしれない。


「うんぐぅ?!」


一拍おいてサーガがおかしな声を出した。


「どうした? こんな時に大きい方かの?」

「アホなこと言ってんじゃねー! この力…ちょ、大きすぎじゃない?」


サーガの顔が、若干青ざめている。


「まあ、神を殺す力となればの…」

「てめえら! そこか!」


モードが気付いて巨岩の上に行こうと風の力を集め始めた。


「クロムさん? これ発動するまでに時間かかるみたいよ?」

「マジかの…。つまり時間稼ぎをしなければならぬと?」


影に潜んでやり過ごそうかとするが、何故かサーガを影に入れられなくなっている。


「なるほど。神を殺す力かの」

「発動するまで俺を守ってくれなきゃだめみたいよ?」

「やってみるかの」


クロムがやれやれと溜息を吐く。瞬間移動も試してみたが、やはり移動することは叶わないようだ。

モードが風を操り、巨岩の上にやって来た。


「任せるだの」

「任されました」


サーガが力を発動し始める。


「させるか!」


ここぞとばかりにモードも力を奮う。


「我が輩も全力を出そう」


クロムの瞳が煌めいた。


お読みいただきありがとうございます。

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