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サーガとクロムの異世界譚  作者: 小笠原慎二
本編
71/81

嫁、嫁、嫁(候補)

前回のあらすじ~

「望みの者を持って来たのだの」

「よし。私と腕試しをしろ」

「俺の意思を誰も聞いてくれない」

「サーガ! やっと会えたアル!」

「会えたですぅ!」

「なんでここにいるんだお前ら!」


クロムに引き摺られ、マリエラの寝所に来てみれば、帝国にいるはずのないディアナとサマーラがサーガに飛びついて来た。


「ほう…。獣人が帝国にいるとは面妖な…」


クロムの声に気付いて2人が顔を向けると、2人揃ってポカンとなる。


「こ、この、綺麗なお兄さんは…誰アル…」

「で、ですぅ…」

「我が輩はクロム。訳あってそのサーガという男と行動を共にしているのだの」


と、折り目正しく自己紹介をする。その美しい所作にまたもやぽーっとなる2人。


「そうそう、こいつも強いから、いっそこいつの嫁になっちゃえば?」


2人がハッとなる。


「サーガ。獣人の女舐めてるアルか? そんな浮気性に見えるアルか?」

「見えるですぅ…?」

「く、首…しめるのはやめて…」


前後から首を絞められ、意識が落ちかける。

そんなサーガを放っておいて、クロムが部屋の主のマリエラに尋ねる。


「女帝の寝所に獣人がいて良いのかの?」

「良い。その者達には今竜王と密かに連絡を取るために動いてもらっている」

「となれば、やはり帝国は聖教国を捨て、獣王国と手を結ぶと?」

「其方の話を聞いてこれ以上聖教国と手を結んでいようと考える愚か者はいないだろう。できれば連合諸国の方にも話を広めてしまいたいところだ。ま、それは作戦上出来ぬことだろうがな」

「うむ。下手に動いて水面下に潜ってしまう事が一番恐ろしい。できればさっさと片を付けてしまいたいものだの」

「そうだな。今頃宰相達が必死に招待客達のリストを作っている事だろう。私も忙しくなる」

「マリエラ様、何かあるアルか?」

「です?」


やっとサーガの首から手を離し、2人がマリエラに尋ねる。


「げえほっ! げほっ! ごほっ!」


咳き込んでいるサーガには誰も注意を向けない。


「ああ、お前達にはまだ話していなかったな。私はそこのサーガと結婚式を挙げることになったのだよ」


2人が固まる。


「サーガ…」

「話し、するですぅ…」


2人の顔がギギギと錆び付いた機械人形のように動き、サーガを睨み付ける。


「ちょ、まて、話し、そう、話しをしよう!」


2人の形相に、サーガが後退る。











これまでのことをクロムにも手伝ってもらい説明する。

2人はなんとか納得してくれた。


「偽装結婚アルか。でも本当にマリエラ様いいアルか?」

「結婚は大事ですぅ…」

「なに。今までにもいろいろ捨ててきた。別に構わんさ。遠い血筋のあの子を残したのは、私にもしもの事があった時の保険だしな。いざとなれば竜王の嫁になろうと思ってたところだし。同じようなものだろう」

「違うと思うアルけど…」

「納得してるのですぅ…」


本人が覚悟を決めてしまっているなら外野がとやかく言っても始まらない。


「聖教国とのことを片付けて、獣王国とのことも上手く行ったら、お前達を妾として呼ぶことも出来るぞ?」

「応援するアル! マリエラ様!」

「ですぅ!」


獣王国では一夫多妻であることも多いので、妾という立場も気にしない2人だった。


「あれ? フリだけじゃなかったっけ?」


聖教国のことが片付いたら適当にサーガは事故死したと告げ、終わる話しだったはず。とクロムに視線を流す。クロムは視線を明後日の方へ避ける。


「まあ、終わった後は自由にすればよいのではないかの?」

「俺にとっての自由の意味が違うんだが?」


サーガがクロムを睨んでいる間に、女性陣はドレスに話が進んでいる。


「ふわあ。王族のドレスは凄いアル」

「見てみたいですぅ…」

「そうだな。もう少しデザインについて詰めて、採寸して仮縫いして、出来上がるのは半年後くらいかな?」

「「半年?!」」


ぎょっとなった男2人が声を上げる。


「なにを驚く? 仮にも皇帝の結婚式だぞ? 普通なら1年以上かけて準備するものだぞ?」


サーガとクロムが目を見合わせる。


「え、お貴族様の結婚てそんなかかるの?」

「そういえば…、結婚式とはそういうものだったの…」


庶民のサーガに貴族の結婚など分かるはずもなく。クロムにおいては結婚式の知識はあってもそれとは縁遠い場所にいたため、まるっと結婚式に時間がかかることを忘れていた。


「そんなに時間をかけているわけにはいかぬ…。これはとんだ失態だの…」


いつも冷静沈着なクロムが、珍しく焦りの色を表わす。


「何か別な方法がないか、探さねばなるまいの…」

「ちょっと待て。俺をここに置いて逃げるんじゃねーだろな?」


一所に縛り付けられたら文字通りにサーガの命に関わる。


「なにを焦っておる。私がそんなことを考えないと思っていたか?」


マリエラが呆れたように2人に声を掛ける。


「時間がないことは分かっている。ただ、あまり急ぎすぎても聖教国に怪しまれる。故に、婚前祭なるものを考えている」

「「婚前祭?」」

「結婚する前に結婚することを祝って祭りを催そうと言うのだ。周辺諸国への通達も兼ねて派手に1週間ほどやろうと思っている」

「そ、そんなことが出来るのかの?」

「私は皇帝だぞ? ただ、さすがに準備に時間がいる。1ヶ月は時間をもらいたい」

「1ヶ月…。微妙な時間だの」

「さすがにそれ以上早めることは無理だ。その前にあちらが動かないことを願おう。その婚前祭が終わってから、私が無理を言っていることにして聖女様に祝福を先にしてもらうということにしようと思っている」

「なるほど。一応カモフラージュにはなるかの。しかし念の為他に方法がないか我が輩達も探ってみようと思う」


何故かサーガが嬉しそうな顔になる。


「ああ。他に方法が見つかるならば早い方がいいだろう。だがサーガ。方法が見つかろうと見つかるまいと、婚前祭と結婚式には出席してもらうぞ?」


何故かサーガの顔が暗くなる。


「では我が輩達は何か他に方法がないかの探索。マリエラ様達は結婚式のための準備をお願いするのだの」

「ああ、良かろう。しかしサーガは少し借り受けるぞ? 採寸などもしなければならないからな」


サーガの顔がいっそう暗くなる。


「しかしクロムよ。お前はどうやってこのすばしっこいサーガを捕まえたのだ?」

「ぬ? ああ、確かに不思議に思っても仕方ないかの。まずは少しずつ信頼を稼いで近づき、」

「信頼なんぞしてないぞ?」

「そして金縛りの術で身動きを取れぬようにして運んで来たのだの」

「ええ、酷い目に会いました」

「金縛りの術とな?」

「こういうものだの」


クロムの瞳がキラリと光ると、マリエラが途端に身動き出来なくなる。


「分かって頂けたかの?」


クロムが目を閉じると、途端に体が動くようになった。


「…! なるほど…。また珍しい魔法だな…」


マリエラが動くようになった体を確かめるように眺め回す。


「魔法…とはちと違うが…。まあいいか」


説明するのも面倒だったのか、クロムが言葉を濁した。


「竜王の貢ぎ物としてのサーガがいなければ、お前を夫にしても面白そうだったな」

「そ、それは難しい話だの…」

「どうぞどうぞ。是非ともにお譲り致します」


サーガが嬉々としてクロムを指し示す。


「我が輩には無理な話だの」


クロムの姿が子供の姿に変わった。


「これが我が輩の本当の姿だの。女性の相手をするには難しい年齢だの」

「こ、こ、こ…」

「こ、こ…」

「子供?」


ディアナ、サマーラ、マリエラの目が丸くなる。


「我が輩は変化の術という技を持っておっての。人の姿であればどんな姿でも化けられるのだの」

「「か、可愛~い!!」」


ディアナとサマーラがクロムに飛びかかった。


「な、何を…」

「可愛いアル~! こんな可愛い子だったなんてアル~!」

「可愛いですぅ!」


2人は子供好きだった。

2人に揉みくちゃにされるクロムを見て、サーガはほくそ笑む。


「いー気味」

「これはまた、見たこともない魔法だ。そういえば、サーガも空を飛んでいたな」

「きっと探せば他にも誰か飛べるはず」


サーガが適当な事を述べる。


「いっその事、2人共私の夫になるか? 皇帝ならば何人つまを持っても大丈夫だからな」

「「遠慮します(するだの)」」


速攻でお断りした。


お読みいただきありがとうございます。

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