お金の稼ぎ方(クロムの場合)
前回のあらすじ~
「こんちは~」
「いらっしゃ…」ぽかん
「来たよ~」
「来たのかぃ…」ぽかん
「んで? どうやって3日でこんな大金稼いだんだ?」
聖教国へ向かいつつ、サーガが肩に乗ったクロムに尋ねる。すっかりここが定位置になっている。
「簡単な事だの。まず、少し程度の低い賭場へ行く」
「子供が賭場…」
「もちろん大人の姿になってだの。そして元から持っていた金、およそ10万を50万にして切り上げる」
「切り上げる?」
「あまり稼ぎすぎると怖いお兄さんが出てくるからの」
賭場では荒稼ぎすると目を付けられるのは定石だ。
「次に少し程度の高い賭場へ行く。そして50万を200万にする」
「ちょっと待て。簡単そうに言ってるけど、賭け事ってそんなに簡単に稼げねーだろ」
「我が輩にはちと裏技があるのでの」
「どんな?」
サーガが興味津々という風に聞いて来る。
「我が輩にしか使えぬ力だの。お主では無理だの」
「ちぇ」
人生そう甘くはない。
「そしてその200万を持って、今度は闘技場へと行く」
「コロシアムって奴か。んで賭けると?」
確かにコロシアムならば掛け率も場合によっては40倍に跳ね上がる事もある。
「うむ。まず選手登録をし、隙を見て自分に全額つぎ込む」
「ちょっと待て。どうやったら自分に賭けられるんだよ」
普通選手登録したらそのまま控え室などに缶詰だ。自分に賭けることなど出来るはずがない。
「忘れたか? 我が輩の瞬間移動の力を」
「あ…」
隙を見て瞬間移動で移動して、自分に全額つぎ込んだ。出来ない事もない。
「少し見た目を弱そうな感じに変身しておいたからの。倍率も跳ね上がること」
「だろうな…」
名も知らぬ弱そうな者より、そこそこ名の売れた強そうな者に皆が賭けることは当たり前のことだろう。
「ありがたいことに対戦者は見るからに筋肉ムキムキで強そうな者での。これは決まったと思っただろうの」
さらに倍率が上がる。
「そして戦いが始まる。我が輩は弱い振りをして最初こそ多少剣を受けるが、その後は逃げ回る」
ちゃんと戦えなどのヤジもあったかもしれない。
「そして隙を見て、なんとも幸運が重なったとばかりの勝ち方をする。いや~、これが一番難しかったの」
「だろうね」
格下相手に幸運で勝ったなんて芝居、サーガでも難しいのではなかろうか。
「これで5000万近くは行ったかの? そしてもう1回戦臨んで、同じような勝ち方をする。そこで1億は超えたので、3回戦目でなんとか無様に負けることに成功したのだの」
無様に負ける芝居…。サーガに出来るだろうか…。
「そして瞬間移動で戻って来たら、お主が丁度ギルマスの所へ行くようだったので、影に潜んで話を聞いていたのだの」
「その影に潜むってなんだよ?」
「こういうことだの」
「わ!」
突然足元から地面がなくなり、サーガの体が落ちる。しかし底なしに落ちるというわけではなく、地面?の中にすっぽり埋まったくらいのところで止まる。
「なんだここ…」
辺り一面真っ暗なのだが、何故か暗く感じない。
「裏道、みたいなものかの。闇に潜む者が通ることの出来る道、のようなものだの」
「裏道? 闇に潜む?」
「まあ深くは考えぬ方が良い。我が輩の世界のもののけ道のようなもので空間を一枚隔てた…いや、詳しいことは良いかの。まあ簡単に言えば影から影へ移動出来るという事だの。距離を短縮することが出来る。ほれ」
ふっと体が浮かび上がる感覚がすると、森の影の中に出て来ていた。
「・・・・・・」
前後を振り返り、居場所を確認するサーガ。先程まで歩いていた道から見えていた森の中だと認識する。
「べ、便利じゃね?」
「短距離や整合性を伴う移動であればこちらの方が便利ではあるの。瞬間移動も便利ではあるが、1度目にした所ではないと行けないというデメリットがあるの」
サーガが感心しつつ、クロムに問う。
「この移動方法で行けない?」
「お主、門番になんと説明するつもりだの?」
時間的整合性が説明出来ない。
「飛んで来た」
「この世界の人間は空を飛ぶ魔法は知らぬはずだがの?」
「そうとも言う」
サーガは面倒くさそうに、クロムを肩に乗せたまま歩いて行った。
「てか、お前自分で歩けるだろ?」
「変身もいろいろ制約があるでの。この姿ではこの方が楽だの」
「俺は楽じゃないんだが?」
聖教国へ入り、聖女のいる首都を目指す。本来ならば数日の時間を要するのであるが…。
「国境さえ越えてしまえば問題はあるまい」
と、クロムが瞬間移動で街の側まで跳んでしまった。楽なことこのうえない。
一応この国にも冒険者ギルドはあるので、サーガのギルドカードで易々と街の中へと入る事が出来た。
「お前、前回はどうやって侵入したんだ?」
「いや~。瞬間移動は便利だの~」
というわけらしい。
「まずはお主も一度大聖堂を見に行くが良い」
というクロムの有り難いお言葉にしぶしぶ従い、サーガ達はまず大聖堂とやらの見学へ行った。
「うわ…。こりゃすげえ」
「であろう」
大聖堂はとても立派な建物であった。例えるならば、かのサグラダファミリアのように。
「奥に聖宮があり、そこで聖女が暮らしておるらしい。しかし我が輩とて迂闊には近寄れぬ」
「これは、俺でも無理だわ…」
どんな敵を想定したのか分からぬほど厳重な結界が聖宮の方に見て取れた。物理、魔法はもちろんのこと、空間に干渉する結界も張られているようだ。瞬間移動とは言え、空間と空間を渡る術であるが故、クロムの力を持ってしても侵入は難しいと言うことだった。
「諦めよう」
「おい。1億払ったであろう」
「返そうか」
「受け取らぬぞ」
「んなこと言っても無理なものは無理ー」
「であるからその方法を探るのであろうが!」
わちゃわちゃ言いながら、とりあえず時間も時間だからと、2人は宿を見つけてそのまま休む事にしたのだった。
「なんで俺がお前の分まで払うの?」
「パパと言って欲しいかの?」
欲しくない。
「金持ってるなら払えよ!」
「大方お主に渡してしまってほとんど残っておらぬわ! 1億も持ってるくせにケチケチするでない!」
「お前ならすぐに稼げんだろーが!」
「この国で賭場はまだ見かけたことがないの」
あるんだろうか。
結局サーガが宿代飯代を持つことになった。
「なんか釈然としねー…」
起きると、何故かクロムがボロのような服を着ていた。
「何その格好」
「起きたかの? これは我が輩の情報収集の1つだの」
「んなボロを着ることが?」
「これならば浮浪児に見えるであろう?」
「見える」
浮浪児にしか見えない。
「我が輩はお主のような聖徳太子のような耳は持ち合わせておらぬ。その代わりと言ってはなんだが、人の記憶を見ることが出来る」
「しょう…? いや、ちょっと待て。記憶を見るって…」
「人の体を持ってしまった弊害か、昔ほど掘り下げて見ることは叶わぬが、行きずりにちと覗くくらいならばなんとかの」
「いや、記憶を見るって、何?」
「そのままだの。お主の考えも丸見えになるぞ? 普段はやらぬが」
「そ、それも神からの力ってやつなのか?」
「これは元から我が輩が持っていた力だの」
「そんな便利な力! ずっりい! 女の子誘い放題じゃねーか!」
「お主はそういうことしか考えられぬのか!」
考えられないようです。
ローブを着てボロい服を隠しながら朝食を摂ると、さっそく2人は街中へふらりと出掛けていった。
サーガは街中をブラブラ歩き、風の力で人の話を集める。
クロムは適当な場所で浮浪児を演じつつ、道行く人の記憶を覗く。
とても効率の良い情報収集である。
だがしかし、その中に目当ての情報がいつもあるとは限らない。
「やはり教会関係の者の頭を覗かなければ難しいかの」
1日浮浪児の格好をして街を彷徨ったが、一般市民では情報も限られてくる。それに妖だった頃に比べると、その力は格段に劣る。
「人の体故の弊害かの」
一足先に宿へ戻ってきたクロムが溜息をついていた。
そこへ、
「ういーっす。もう戻ってやがったんか」
ほろ酔い状態のサーガが帰って来た。
「こんな幼子を置いてこんな遅くまでどこまで行っていたのだの」
「何言ってんの。大人の時間はこれからよ」
花街に行かなかっただけでも偉いのかもしれない。
「で、ちょっと良さそうな情報を仕入れてきたけど、聞きたくないんかな~?」
「もったいぶらずに早う話せ」
「おーおー、可愛くないガキ様でございますこと~」
ベッドにふらりと腰を下ろすと、サーガが話し始めた。
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