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サーガとクロムの異世界譚  作者: 小笠原慎二
本編
5/81

早速トラブル

前回のあらすじ~

ギルマスのヤンと出会った。

「以上で手続きは完了です。そして、こちらが冒険者ギルドカードとなります」

「へ~、これがカードかぁ」


手渡されたカードを裏にしたり表にしたりとまじまじと見つめるサーガ。余程珍しいらしい。


「ねえねえ、ここに書いてあるのがDってこと? このランクってのを上げたら強いってことなんだよね?」


悪気無くサーガがサララに問いかける。


(あああ! 自分で公表してどうするんですか!!)


ギルド内の空気がざわりとなったのが分かった。いきなり無名の新人がDランクスタートなのだ。嫌でも悪目立ちする。


「そ、そうです。何か依頼を受けますか?」

「いや。金に困ってるわけでもねーし。今日はいいや。ね、強い奴と戦うとか出来るの?」

「ええと、基本冒険者同士で戦うことは禁止しております。双方の同意の下立会人を付けてやる分には許可されておりますが…」

「ち、手続きがいるのか…」

「何を考えていらっしゃるので?」

「強い奴ぶっ倒したらランク上がるとか…?」

「ございません!! あくまでも依頼の達成率などで審査されます!」

「そっか~。残念」


戦闘狂か此奴、とサララは思った。


「向こうからふっかけられた場合は?」

「何かするつもりですか?」


サララがサーガを睨む。


「うんにゃ。俺がせんでも向こうから来ることがよくあるから」


ニヤリと笑ったサーガの顔に何故か納得出来たサララ。溜息交じりに答える。


「正当防衛が認められれば、特に問題はございません。でも認められれば! の話しですからね!」

「分かってるって。何? 心配してくれてるの~?」

「そうですね。後片付けに奔走する私やギルマスのことを」

「冷たい」


サーガが渋い顔になった。


「そんじゃま、今日は用があるからまたね~」


早く出ていけと心の中で呟きつつ、


「はい。お待ちしております」


満面の笑顔で送り出す。送り出したかった。そのまま何事も無く。

サーガの行く先で待ち受けの椅子に座っていた男が徐に足を伸ばす。そのまま行けばサーガが足に引っ掛かって転けることが分かってしまう。


「あ…」


サララが声を掛けようとしたが遅かった。


ぐしゃり


「ぎゃあ!」

「あらごめん? 気付かなかったわ~」


絶対気付いてただろう! とサララは心の中でツッコむ。

引っ掛かる寸前でサーガが足を少し高く上げ、勢いよく踏みつぶしたのだ。


「この野郎! 何しやがる!」


痛がる男の仲間なのか、周りにいた男達が立ち上がる。


「何しやがるって、人の進行方向に足を伸ばしてるのが悪いんじゃん?」


それはそうだが。

ニヤニヤと悪びれもしないサーガの態度が、男達の怒りをヒートアップさせる。


「こいつ、痛い目を見たいようだな…」

「待って下さい! ギルド内での争いは禁止ですよ!」


慌ててサララも声を張り上げる。


「ち」


男達が渋々引き下がろうとするが、


「双方の同意の下立会人がいればいいんでしょ?」


サーガがいらんことを言い出す。


「あ、あの…?」

「サララちゃん、立会人になってちょ。さ、ここじゃなんだから表で」

「良い度胸してるじゃねーかてめえ」


男達が色めき立つ。


「ま、待って下さい! そういうのは私では…」

「なんだ? 何かあったか?」

「ゴルドさん!」


声が聞こえたのか、ゴルドがやって来た。


「あ、おっさんでもいいや。立会人になってちょ。でないと納得しないっしょ」


サーガがギルド内に視線を走らせた。その視線の意味を汲み取り、ゴルドが溜息を漏らす。


「分かった。ただし、地下の修練場でやってくれ」

「ええ~、地下は嫌いなんだけどなぁ」

「でなければなしだ」

「ちぇ。分かったよ」


口を尖らせながらもサーガは修練場へと足を向ける。

男達もニヤニヤしながらその後に続いた。


「ゴルドさん…」

「遅かれ早かれこうなっていたかもしれないんだ。目の届く所でやってくれただけマシだと思おう」


サララにそう言うと、溜息を吐きながら一行の後ろから修練場に向かう。

4人の男達とサーガが少し距離を取り向かい合った。


「よし。始めて良いぞ。ただもちろんだが、怪我などは自己責任だぞ」


ゴルドが声を上げる。


「分かってら~」


サーガがヒラヒラと手を振る。


「誰から行く?」

「俺が行く」

「いや俺だ」


男達が順番を巡って言い争っていると、


「いいから、全員で纏めて来いよ」


サーガが挑発するように手で来い来いと示す。


「調子に乗るんじゃねえ!」


リーダー格とみられる男が剣を抜いて1人で突っ込んで来た。


「遅っ」


サーガが少し驚いた顔になる。そして容易く剣を躱し、勢いづいていた男の足を払った。


「もべ!」


地面に顔面から激突し、気絶してしまう。


「な、ドルガ?!」

「嘘だろ?!」


その様子を見ていた男達が何故かとても驚いている。

サーガは首を傾げる。


「あんたたちさあ、確かDランクとか言ってなかった?」

「あ?! なんでてめえ俺達のランクを知ってるんだ?!」

「さっき上で話してたじゃん」


サーガがDランク宣言をした時、この男達はひそひそ声で「自分達と同じDランクだと?!」などと話してはいた。それが聞こえるはずがない。普通ならば。


「何を言ってるんだこいつ?」

「もういい! 全員で行くぞ!」


男達がそれぞれの武器を持ち、サーガに突進してくる。1人は矢を番えた。


「う~ん」


サーガはそれを見ながら腕を組んでいた。


「Dランクって…、弱い?」


普通ならばそんなことはない。Dランクに昇格するにはDランクの魔物を倒せる実力がなければなれるものではない。つまりそれなりの強さが必要になる。

ちなみにニードルボアはCランクである。

矢が放たれる。サーガはそれを手で止めた。


「は…?」


先頭で剣を構え突っ込んでいた男がその光景に目を見張る。


「隙だらけ」


サーガの手から矢が男に向かって投げられる。


「ぎゃあ!」


矢は先頭の男の太腿にぶすりと刺さった。


「こいつ!」


後ろを走っていた男が戦斧を振り上げ、サーガに向かって振り下ろす。あっさり躱され、戦斧が床に突き刺さる。


「大物はどうしても動きが大きくなるからね~」


突き刺さった戦斧の上にサーガがふわりと降り立つ。


「な…」

「はい、お休み」


男は顎を蹴り上げられ、そのまま後ろに倒れ込んだ。


ヒュッ!


風を切る音がし、サーガに向かって矢が飛ぶ。


「あ、油断してるとか思った?」


またもや素手でそれを掴み取ってしまうサーガ。


「そんな…、素手で掴むなんて…」


弓矢を構えていた男が愕然とした顔でサーガを見つめる。


「訓練すれば出来ないことでもないっしょ。しっかしなぁ、Dランクって弱くない?」


最後の言葉はゴルドに向かって投げられた。

ゴルドが溜息を吐く。


「ヤンが言っていただろう。本当はすぐにでもAランクにしたいと」

「え、Aランク?」


弓矢を構えた男がゴルドに視線を向ける。


「余所見は駄目っしょ」

「が…」


いつの間にか目の前に来ていたサーガが男の顔を掴み、地面に叩き込んだ。


「はい、お終い」


パンパンとサーガが手を払う。

ゴルドが盛大に溜息を吐いた。


「なによ。ちゃんと手加減はしておいたぜ?」

「分かってる」


サーガが本気を出したらこの男達は命がなかったであろうことはよく分かる。地面に激突で気絶、太腿に矢が刺さり痛がっている、顎を蹴られ昏倒し、床に叩きつけられ気を失っただけ。怪我は負えど死人は出ていない。


「おかわりがあってもいいけど~?」


サーガが修練場の入り口の方へと視線を向ける。何人かの慌てたような足音が遠ざかっていった。物見遊山で見に来ていた野次馬がいたのだろう。


「気は済んだか?」

「それは上の連中に言って欲しいかな?」


サーガが肩を竦めた。


「まあいい。後はやっておく」

「おいっす。よろしく~」


お気楽な足取りでサーガは修練場から出ていった。

上の受付の辺りに出ると、なんとなく先程とは違う空気。


「ちょっと期待外れだったかな~」


そう聞こえないように呟き、微妙な笑顔のサララに見送られながらサーガはギルドを出た。


あけましておめでとうございます!

そしてお読みいただきありがとうございます!

今年もよろしくお願いいたします。


とにかく完結出来るように頑張るつもりです!

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