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サーガとクロムの異世界譚  作者: 小笠原慎二
本編
36/81

サーガ視点

前回のあらすじ~

トエドの家へ、アッシュの家へ、レジーの家へ…。ゾロゾロゾロ…。

「皆捕まえたよ。お疲れさん」

だから何があったんだよ!

風の結界に反応があった。しかしそれは結界に気付いたようで、すぐに引き返していった。サーガは音を立てないように窓から飛び出てそれを追う。


(なるほど。賢いって言ってたっけ)


サーガの結界に、まあ大分適当に張った結界ではあったが、気付くとはかなり敏感な生物のようだ。そしてその結界を通してサーガの力量を察したのだろう。

山の中腹辺りでそれは逃げるのをやめ、サーガが来るのを待っている様子だった。少し間を取ってサーガが地面に降り立つ。


「お前さんがルペンサーって奴か」


赤い豹。初めて見る生き物だったが、その賢さが滲み出ているような顔をしている。ルペンサーは降参したとでもいうように、地面に腹這いになった。


「分かってるならいい。村の連中が迷惑してる。塒を移して狩り場を変えるなら俺は後を追わない」


ルペンサーはサーガの目を見つめ、体を起こす。そして背を向け、もう一度サーガの目を見つめた。


「付いて来いってか?」


サーガが歩を進めると、ルペンサーが山を軽やかに駆ける。サーガは易々とその後ろに付いて行った。


「ミャア」

「ミィ」

「ミャウ」


岩陰から3匹の子ルペンサーが母親の姿を発見し、転がり出てくる。


「うわ~」


サーガが顔を覆う。乳が張っているように見えたので子供がいるのだろうとは思ったが、可愛い…。

毛の色は親とは違い茶に近い色。それらがぴょんこぴょんこ飛び跳ねている。


「ミャア」


子供が腹が減ったとでも言うように、母親のお腹に顔を押しつけようとしている。まずい、可愛い。


「ミィ?」


1匹好奇心旺盛なのか、サーガに近づいて来る。


「やめろ。来るな。俺の臭いが移ったらどうする」


野生生物が人の臭いが移った子供を飼育放棄することは知っている。慌ててサーガが飛び退く。

触りたいけど…。

絶対モフモフだろう、あのお腹に頭に背中に…。触りたいけど触ったら駄目なのだ!


「グル」


母親が呼んだのか、子供が母親の元へと引き返す。

サーガは蹲る。でないと飛びついてしまいそうで怖い。


「子育て中なのは分かったから…。俺に見せないで…」


サーガもモッフルは大好きである。普段あまり触れることはないが。


「グルゥ」


母親が何か言ったのか、子供達がまた岩陰へと引っ込んでいった。賢い子供達である。

母親ルペンサーが立ち上がり、再びサーガの目を見つめた。


「何? まだ何かあるわけ?」


ルペンサーが再び走り出す。サーガはちらりと1度だけ岩陰に視線を走らせ、名残惜しいような顔をしながら後を追いだした。

山の上の迫り出した大岩の上にルペンサーが飛び乗った。サーガも大岩に飛び乗る。そしてルペンサーが下を見下ろす。サーガも真似して下を見下ろした。


「ん? なんだあれ?」


少し影になっていて見にくいが、洞窟のようになっていてそこから明かりが漏れている。こんな山の中で何をやっているのか。

サーガが風を走らせる。中の様子を探ると奥にそれなりの人数がいた。何か慌ただしく動き回っている。


「あそこが元は塒だったとか? あ、あいつらがここらの獲物取っちまうから、仕方なく村に行ってたとか?」


肯定するかのように、ルペンサーが頭を下げた。


「なるへそ。んじゃ、あいつらを追い出しちまえば、万事解決か」


風で音を拾うが、洞窟の中で何かの施設を作っている最中らしい。その中から不吉な単語を広い、サーガが顔を曇らせた。


「どうにも遅れているな」

「ああ。やはり人手が足りない」

「この近くにほとんど他と交流のない村があっただろう。少し早いがそこから人を攫ってきて建設に駆り出すか」

「どうせ後に実験でも使うのだし。問題はないだろう」


(実験?)


何かの実験施設のようだ。しかも人体実験らしい。


(クラリスにまた進言するか?)


しかしまだ村では何も起きていない。しかし起きてからでは遅いのではあるが。

確たる証拠もなしに貴族を動かすのは容易ではない。面倒くさいことは上の方に投げてしまいたかったが、今はそうも行かない。今クラリスに言った所で、まずは調査からとなるだろう。その間に洞窟の奴等に気付かれて逃げられでもしたら、


「報償金がもらえないかもしれないじゃないか」


勿体ない。

折角金になりそうな話しが転がり込んできたのだ。これは最大限有効活用してガッポリ頂かなくてはいけない。

洞窟の連中は攫うための部隊が今洞窟に向かってきていると話していた。その到着予定日が5日後。今いる連中は主に施設建設や実験を行う部隊のようだ。


「ふ~ん」


サーガはニヤリと笑う。人数が増えればそれだけ報償金も上乗せされる。


「ありがとよ。この礼は必ずするぜ」


そうルペンサーに言うと、ルペンサーはゆっくりと体を起こし山の夜の闇の中へと姿を消した。













それからサーガはその施設を重点的に見張った。音は常時集音。必要な情報だけ頭に入れる。


(なんか隣の国から来たっぽいな。隣はなんだっけ? 聖教国だっけ? 宗教っぽい名前の奴)


あきらかに面倒臭そうな国っぽいので、あまりお近づきになりたくないなと思っていた国だ。


(なんでそんな奴等がこんな所に? ある意味人目には付きにくいという条件だけは当てはまるけど)


主要街道からも外れた村の外れの山の中だ。冒険者だって滅多に近寄らない。人目に付かないどころか人が滅多に、いや余程の事がない限り来ない場所である。

定期的に食料などの運搬があるらしい。こんな山の中で食料を手に入れるのは難しい事だろう。収納袋なる便利グッズがあるので大荷物を運ぶのも苦ではない。施設建設に使う資材もそうやって運ばれてきたようだ。

その中で気になる単語を拾った。


「命の雫」


花街の騒動で地下牢にいた痩せこけた人物が言っていた言葉だ。


(麻薬生成工場ってか?)


そんなものをこんな所で大量生産しようとしているのだろうか? となるとこれは本当にクラリスに話しを持って行った方が良いかもしれない。しかし報償金も惜しい。


(あの麻薬、聖教国から流れて来てたのか?)


水系の鑑定も専門外なので、満華楼の女将ならばそんな伝手もあるだろうと物は預けてきた。本当に麻薬かもよく分かっていないが、十中八九麻薬で間違いないだろう。

問題はそれがどこから流れて来たかだ。それも女将に預けて来たのだが、まさかこんな所でそんな話しが繋がるとは思わなかった。


(う~ん、まあ俺の手には負えないだろうから、とりあえず全員捕まえて上の奴等にポイすりゃいいか)


大掛かりな組織となれば、サーガ個人の手に余る。とりあえず今いる全員を捕まえれば何かしら情報も得られるだろうと、後続部隊を待つ。


その間、ルペンサー親子の為に少し獲物を狩ってやった。あの洞窟に人が出入りするようになったので、その周辺にいた獲物達が塒を変えてしまったらしい。そのルペンサー親子はあの洞窟を中心に縄張りにしていたようで、他の縄張りに入って行くのも大変だったようだ。

断じて子供達が可愛いからと言うだけではない。人間の都合で食料不足になってしまったのが可哀相だったからだ。


しかし…、可愛いなぁ…。


モフりたい衝動を抑えつつ、食事する光景を遠くから眺める。すでに乳離れが始まっているようで、小さな口で獲物に齧り付いている。


可愛いなぁ…。


そして極めつけは温泉である。ルペンサー親子に精神的に癒やされ、温泉で身体的に癒やされ…。


「後は飯が美味ければ言いっこなしなんだけどなぁ」


完璧とは行かないようだ。













5日後。後続の実行部隊が到着。早速村人を攫うための準備が始められた。その頃から村人達から向けられる視線冷たい物を感じるようになった。

まあ、実際村ではブラブラしている姿しか見せていなかったし、それは仕方ないだろう。

村でも散歩しつつ、村の情報を探り集める。誰が何人家族でどこに暮らしているか。位置を把握しておかなければならない。聞かずともおば様達はいろいろ噂話に余念がないので、そんな情報は簡単に集まる。

洞窟の連中も早々に村の生活ルーティンを調べ上げてしまう。洞窟の連中が近づいているときは、サーガは姿を隠した。村に村民しかいないと思わせるために。

村はただ日常生活を続けている。洞窟の連中が実行日を決定する。そして襲う順番に配置などが詳細に突き詰められていった。


お読みいただきありがとうございます。


今週ワクチン接種でばてて書けませんでしたので、少し書き溜めて頑張りました。

楽しんで頂ければ幸いでござんす。

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