表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サーガとクロムの異世界譚  作者: 小笠原慎二
本編
30/81

部隊の裏側

前回のあらすじ~

「来ないで! 禿げデブブタキモ親父!」 凄い言われよう…。

「そこまでだ! 神妙にしろ!」

「! 白馬の…お姉様…?」 ちょっと理想とは違かった。

サーガがレミに話しを聞いたその日。

サーガはサクセス伯爵邸を訪れていた。

急な来訪であったにも関わらず、クラリスは時間を作ってサーガに会ってくれた。


「やあ。昨日の今日で突然どうしたんだい?」


ソファに座るクラリスをサーガは座ったまま眺めつつ、少し口角を上げる。


「面白い情報を持って来たんだけど~。幾らで買ってくれるかなと」

「面白い情報?」


どんなことかとクラリスがサーガの話しに耳を傾け、次第に顔を青くさせていった。


「す、すまない。その話し、父と兄を呼んできてからもう一度してもらっていいだろうか?」

「良いよ~。報酬もらえるならなんぼでも」


クラリスが急いで父と兄を呼びに行く。ほどなくして昨日会った父と、よく似た若い男を伴って帰って来た。


「昨日は外に出ていて会えなかったよね。兄のクラウスだ」

「初めまして。クラリスの兄のクラウスだ」

「ども。サーガっす」


一応立って礼をしたサーガ。やればできるじゃないか。

そして皆でソファに座り、もう一度頭からサーガが説明し始める。次第にレナード伯爵とクラウスの顔も青くなっていった。


「薬草の報告は上がっていたな?」

「はい。今年は不作で量が少なめとありました」

「そういう窮状ならば当然の事だな。信頼して任せていたのが徒になったか。時折抜き打ちで様子見に行くべきだったか」

「これからはそういう制度も作りましょう。とにかく今は…」

「ああ。村の復興が最優先だ。あそこは薬草栽培の重要拠点だぞ。まったく何を考えているのか…」

「巡り巡って自分達が困ることも予想がつかないのですかね」


薬草の採取はやはり天然物の方が効果は高い傾向にある。しかし天然ものは冒険者に頼むことになるので収穫量が一定ではない。なのでヤク―の村で栽培し、一定の供給を得ることが出来るから今まで困らなかったのである。その供給が止まったらどうなるかなど目に見えている。


「ありがとうサーガ君。君のおかげで我が家も我が国も救われたよ」


薬草が栽培できる土地は少ない。なのでこの街から供給されるポーションは国中を支えるものとなっていた。その管理を怠ったとなれば伯爵と言えどただでは済まない。


「礼は形で示してくれた方が有り難いんだけど」


手でまるっとお金の形を示す。

その正直な姿に伯爵が呆れたように笑った。


「いいだろう。謝礼は十分に払わせてもらうよ。少し待っていてくれるかな」


早速動き出そうと伯爵が腰を上げかけると、


「おっと待った。も1つ提案があるんだけど」

「ん? 提案?」


何かと思い、伯爵が腰を下ろす。


「もしその証拠になりそうなものを俺が盗って来たら、幾ら払う?」


サーガがニヤリと笑う。

伯爵が目を丸くする。この目の前の男は何を言っているのだろうかと。


「君、何か心当たりでもあるのか?」


クラウスが食いついてくる。


「ないでもないけど、ちょっと調べないと難しいかな。3日くれたら証拠の品を目の前に差し出せると思うよ」

「証拠の品とは?」

「例えば、カーツォ商会の裏帳簿、とか?」


まさしく「盗ってくる」所業だ。


「そ、そんなことが…」


クラウスが言葉を詰まらせる。

大きな商会は警備も厳重だ。しかも裏帳簿となれば何処かに隠されているだろう。それを3日で見付けてくるなど不可能に近い。


「払ってくれるっちゅーなら、やるけど?」


なんでもないことのように言い切るサーガ。


「面白いね」


伯爵もニヤリと笑う。


「君は、出来ると言うんだね?」

「ああ。俺なら出来る」


伯爵が顎をさする。


「良いだろう。もし確実な証拠を目の前に持って来てくれたら、その重要度によっては高く買い取ろうじゃないか」

「「父上?!」」


クラウスとクラリスが同時に声を上げた。


「いいぜ。契約成立、だな!」


サーガが握手をするかのように、伯爵に向かって手を伸ばす。伯爵はその手を握り返した。


「ああ。契約成立だ」


でもすぐに放した。











3日後。


「思ったより簡単だった」


と言ってサーガがサクセス伯爵達の前にドサリと書類の山を出した。

さすがの伯爵達もあんぐりと口を開けてその山を眺める。


「どしたん? 早く精査してちょ」


サーガに急かされ伯爵達が書類を確かめる。

裏帳簿に取引をした役人の名簿、薬草管理の虚偽の記載書類など数々の証拠の山。


「これは、凄い…」


確たる証拠品である。クラウスが書類を調べながら呟いた。


「言葉より形で示してちょ」


早よ金寄越せとサーガがせっつく。


「分かったすぐに用意させよう」


伯爵が頷いた。


「これだけの証拠があればすぐにでも踏み込めますね」


クラウスが息を巻く。


「ああ、それだけど、なんか今日から3日程外に出掛けるらしいってさ」

「なんだって?! 君は予定まで調べて来たのか」

「まあ、耳に入ったというか…」


ぽりぽりと頬を掻く。


「丁度良い。その間にこちらも体勢を整えよう。事情を聞かねばならない所もいくつかあるようだしね」


カーツォ商会に脅されて薬草を買い取りしなかった商会などなどを秘密裏に。その証言も取れれば罪状が1つ2つ増えそうだ。


「も1つ罪状増やすこともできるけど?」


サーガが口を出す。


「なんだい?」

「婦女暴行罪」

「! 君、まさかその子を使おうというんじゃ…」


クラリスが立ち上がる。


「そうよ。そっちに目を向けさせておけば、いろいろ動きやすくなるんじゃね? 禿げデブ親父はレミにご執心のようだったから、手に入るって分かったらそっちにばかり気が取られるだろ? そしたら手入れの情報も耳に入りにくくなるだろうし、居場所も特定しやすくなる」


レミが手に入るとなれば、迎入れる為にそれ用の別宅に引き籠もるだろう。


「確かに、そうではあるが、市民を巻き込むのは危険が…」


伯爵も唸る。


「そこは俺が補助してやるから」


と自信満々に言い切る。


「手を出す寸前で踏み込めればどうってことないだろ?」

「しかし、そんなタイミングどうやって知れば…」

「俺が分かる」


自信満々に言い切った。


「何故分かるんだね?」


伯爵が問いかけるもサーガは視線を逸らす。


「それは、職業上の秘密ということで」


言わぬ。と宣言。

ただ単に説明が面倒だからというわけではない。

話し合った結果、捜査の目を逸らす為にもレミには密かに協力してもらうことになった。


「その子の所には私が踏み込もう! 同じ女性がいた方が安心するだろう!」


父と兄の心配を余所に、クラリスも一役買うことになった。


「あ、そういえば」


話し合いが終わり、金も受け取りさあ帰ろうといったところでサーガがクラリスに顔を向ける。


「女の子が1人で遊べる物ってなんか心当たりない?」


クラリスが一瞬きょとんとした顔をするが、すぐにレミのことと思い当たる。

そして考える。なにせクラリスは幼い頃より暇があれば剣を振るっていたので、女の子らしい遊びに心当たりがなさ過ぎた。いや、ないでもない。


「お人形、などどうだろう?」


クラリスも昔々はお人形を持って一人遊びしていた記憶がある。とっても昔々のことであるが。


「可愛い女の子のお人形などは、私も好きだった」


今でも遊ぶことはなくなったが、部屋に飾ってある。


「人形…。どこで売ってるもん?」


その手のものに全く縁のないサーガは、クラリスに、いや、何故かクラウスの方が店のことをよく知っていた。


「あんがとさん」


そう言って、サーガは去って行った。












その後のサーガの動きはクラリスはよく知らない。

ただカーツォが街に帰ってきたその日にレミの情報を流し、カーツォがレミを手に入れる為に準備を始めたことをサーガから聞き及んだだけだ。

そしてあの日、サーガは手下の男共にレミを連行させていったのである。


「カーツォの隠れ家もサーガ君は既に突き止めていてね」


クラリスはサーガの合図があるまで騎士達と共に周辺で待機。伯爵はカーツォの本邸。クラウスは役人の方へと同時に踏み込む手はずになっていた。一体どういう手を使って同時に合図を送ったのかはクラリスも知らない。

そしてあの捕り物劇となったわけである。


「ちょっと踏み込んだ時に予想以上に手下達に抵抗されてね」


それで少し遅れてしまったのだそうだ。


「君には怖い思いをさせてしまった。申し訳ない」

「そ、そんな…」


クラリスに頭を下げられ、慌てるレミ。貴族様に頭を下げられるなど心臓に悪い。早々に頭を上げてもらう。


「ただ、せめて事前に説明が欲しかったです…」


そうすればもうちょっと落ち着いていられたのに、と思う。


「そこはね、私も言ったんだけれど。そうしたら本当に怖がらなくなるじゃないかと」


クラリスが苦笑いを浮かべる。

確かに、そうだったかもしれない。救いの手があると知っていたら、あんなに必死に逃げ回ろうとしなかったかもしれない。

それは分かるが、やっぱり一言欲しかったとレミは思う。


「あの、サーガはどこにいるんですか? せめて一言…」


一言で済むとは思えないが、やっぱりお礼くらいは言っておきたい。

しかしクラリスが困ったように笑みを浮かべた。


お読みいただきありがとうございます。


「わ~い晴れてる~」洗濯物干し干し。布団干し干し。

1時間後。

「曇って来た…」

空に嫌われてるんだろうか…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ