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サーガとクロムの異世界譚  作者: 小笠原慎二
本編
3/81

冒険者登録試験

前回のあらすじ~

命の危険に晒されて困っていたオックスを、金に困っていたサーガが助けてウィンウィン。

その後多少魔物に襲われることもあったが、無事に街に着くことが出来た。


「見たことのねー奴だな。これも魔物? 素材が売れる? へー、そんなこともあるのか」


いちいちサーガが感心していたが、オックスは道々丁寧に説明してやったのだった。今は時間がないので素材の回収は諦めた。

街に着いてザイードはさっそく医者の元へと運ばれていった。

サーガは門の所でいろいろと審査されるのであるが、


「記憶喪失だ」


と名前と年齢以外いっさい覚えていないと主張。少し怪しまれたものの、オックスの助言も手伝い、危険はないだろうと判断を下された。一応犯罪歴を見られるという魔道具に手を翳すことはあったが全く問題はなかった。


「魔道具? へー、面白いものがあるんだな」


サーガはこれもまじまじとよく見ていた。

魔道具も知らない、いや覚えていないのかと、兵士達も若干呆れていた。

ちなみに、盗賊達を捕まえたと言うことでちゃんと報償金も頂いた。幌馬車の屋根の上で何やら口をパクパクさせながら身悶えしている盗賊達を見て、兵士達は首を傾げていたが。


問題なく門を潜り、街へと入る。

オックスは1度店へと戻るという。サーガは冒険者ギルドの場所を聞いて、馬車を降りた。


「登録が終わったら是非店に来てくれ。もちろん治療費と護衛料もその時にきちんと払うよ」


という言葉をしっかり聞いてから。

教えてもらった通りに進んで行くと、3階建ての立派な建物。看板にもきちんと「冒険者ギルド」と書かれている。


「見たことねー文字なのに、なんで読めるんだろ?」


サーガが首を傾げつつ、建物の中へと入っていく。酒場が併設されているようで、まだ昼間だというのに飲んでいる者が数人見受けられた。暇なのか休暇中なのか。

受付と書かれた所にいる綺麗なお姉さんを目指して近づく。やはり受付は綺麗なお姉さんがいいよね。


「こんにちは。初めての方ですね?」


冒険者の顔をいちいち覚えているのだろうか、サーガにむかってにっこり笑いかけるお姉さん。



「そ。初めてなんだけど~。なんか登録したほうがいろいろ便利だって聞いてさ。とりあえず登録しておこうかと思って。で、お姉さん名前なんてーの?」


サーガもにっかりお姉さんに笑顔を向ける。


「私はサララと申します。初めてでしたらご説明が必要ですね?」

「ランクがあってA~Gとかいうやつ?」

「あら、多少はご存じなんですね。では簡単に説明させて頂きます」


・冒険者にはランクがあり、一番下がG、最高がSとなる。

・ランクに応じた依頼しか受けることは出来ない。

・依頼をこなすことでランクが上がり、報酬のいい依頼をこなせるようになる。

・依頼には通常依頼と指名依頼があり、指名依頼の方が報酬額が良い。断わることももちろんできるが、その後の活動に影響してくる。

・ギルドカードは身分証明書にもなるので、通行税などが免除されることもある。

・凶悪な犯罪を犯した者はカードを没収される。


などなど。


「ギルドカードがあれば各地のギルド支店でお金を預けたり引き出したりも出来ますので便利ですよ」

「そいつあ便利だな」

「そしてとても重要な事がもう一つ」

「なになに?」

「冒険者は少なからず魔物と戦う技量を持っていなくてはなりませんので、登録時には試験を受けてもらいます」

「試験ねぇ」

「今なら試験官もおりますので、すぐに試験を始めることもできますが、如何致しますか?」

「面白そうだから受けます」

「面白…。かしこまりました。では試験料千エニーを頂きます」

「うわ、金取るんだ」


素直にサーガがお金を払う。


「では、試験場へご案内致します。試験官も呼んで参りますので少しお待ちください」


受付のお姉さんサララの後に続き、試験場へとサーガは向かった。












「意外に、狭い?」


サッカーが出来そうなくらいに広い地下修練場へと案内され、サーガがその場所を見渡し呟いた。十分に広いと思うが。

適当にぶらついていると、サララお姉さんがごつい男を従えて戻って来た。


「試験官の元Aランク冒険者、ゴルドさんです」

「お前が試験を受ける奴か? おい、まだ子供じゃないか?」


サーガの背丈を見てゴルドがサララに問いかける。


ひきっ


サーガのこめかみが引き攣った。


「年齢は十分に満たしておりますので試験を受ける資格はありますよ」

「年齢詐称してないか?」

「してないわ!」


サーガが突っ込んだ。


「まあ、あとは戦闘能力に問題がなければ、でございましょう?」


にっこりとサララがゴルドに笑いかけた。ゴルドがなるほどと頷いた。


「分かったいいだろう」


そしてサーガと少し距離を置いて立つと、背中に背負っていた大剣を構える。


「いつでもいいぞ。全力で来い」


へっ、とサーガが笑う。


「全力で行ったらあんたなんかペシャ、だぜ」

「口は達者なようだな」


ゴルドが苦笑いした時、目の前からサーガの姿が消えた。


「!」

「で? 本当に本気出していいわけ?」


頭の上から声がし、肩にずしりと何かが乗っかった。


「!!!!」


ゴルドが身動き出来ず、冷や汗を流す。

サララもサーガの姿が消え、突然ゴルドの肩の上に乗っているのを見て驚いている。


「腕がいい? 足がいい? それともお腹?」


気楽な感じな口調の割に、頭上からの殺気が重い。


「わ、分かった…。降参だ…」


ゴルドが構えていた剣を下げた。途端に殺気が消え、肩の重みもなくなる。


「あ~良かった。そんな剣と打ち合ったら俺の剣が痛んじまうよ」


軽い感じで床に降り立ったサーガを見て、ゴルドは先程の殺気が本当にこの男から出ていたのか疑問に思ってしまう。


「い、今のは、身体強化か?」


まさに目にも止まらぬ、いや映らぬ速さ。魔法で身体能力を底上げしたとしか思えない。


「ん? 身体強化って何?」

「はあ?! 身体強化を知らない?!」

「うん、俺、記憶喪失らしいのよ」


驚きつつゴルドが身体強化について説明する。


「魔法でね~。そんなことも出来るのか。俺のとはちょっと違うかな?」

「違うのか?」

「俺、風の魔法しか使えないもん」

「か、風?」

「そ。風で速さは底上げしたけど。力も上がるのか。いいな~、便利そうだな~」

「風、とは、ウィンドカッターとかではないのか?」

「風を体に纏わせて空気抵抗を減らしてさらに追い風で~みたいな感じかな。ウィンドカッターって何?」

「はあ?! ウィンドカッターを知らない?!」


再び説明。


「俺とは魔法の質? が違うみたいだわ。同じようなことは出来るけど」

「魔法も使えるのか。試しにちょっと使ってみてくれないか?」

「ええ? めんどい」

「試験に色を付けることが出来るぞ。魔法も使えるならランクも更に上にしてやれるぞ」

「う~ん、ならいいか」


サーガが風を集め出す。

ゴルドはてっきりウィンドカッターのような魔法を見せてくれるのだと思っていた。魔法とは、特に風ともなれば主に攻撃することに使われるからだ。

しかし、違った。

ふわり、とサーガの体が宙に浮かぶ。


「は?」

「え?」


ゴルドとサララの口から思わず声が漏れる。


「ここ地下だからやっぱちょっとやりづれぇ」


文句を言いながらもすい~っとサーガが試験場を端から端まで飛び回る。


「こんなもんで良き? あ、あとあっちにゴミ落ちてるぜ」


ゴルドの側まで戻って来て床に降り立つと、何故かぽかんとしている2人。


「どしたん?」


サーガがおーいとゴルドの顔の前で手を振る。ゴルドの背丈は190㎝に迫るもの。大してサーガは163㎝。まるで子供と大人である。背伸びまではしなくて良かった。良かった良かった。


「なんだか何かがうるさい気がする…」


なんでしょう?


「と、飛んだ? お前、飛べるのか?」


ゴルドが震える声でサーガに問いかける。


「え? 風の魔法習得すれば、まあ素質の問題も有るけど飛べる奴は飛べるっしょ。あいつだって普通に…」


ズキリ!


「っつ…」


サーガが頭を押さえた。


「? なんだ? あいつって誰だ…?」


突然の頭の痛み。そして知っているようで知らない何かを思い出せそうで思い出せない。


「い、いや! 風の魔法と言えど今までに飛んだ奴なんて聞いたこともないぞ! こ、これは、どうなるんだ?! おいサララ!」

「は、はいい!」

「ギルマスの所にこいつを連れて行くぞ!」

「は、はいい!」

「え? 何? 俺何かした?」


サーガは強制連行されていった。

お読みいただきありがとうございます。


少し書き溜めがあるので、また金曜日に更新致します。

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