レミ
前回のあらすじ~
「私は冒険者を辞めて騎士になります!」 シャキリ
「サーガ君! ありがとう! でも娘はやらんよ(ボソリ)」
「頼まれてもいらねーわ」 ギロリ
とっとと食ってさっさと出ようと思っていたサーガは、次々に下げられては出される料理に少し嫌気が差していた。
なんで最初からどかっと目の前に置いておいてくれないのか。そうすればさっさと食べて出られるのにと。
話しの続きをクラリスにせがまれ、少しお行儀が悪いが食べながら話してやると、伯爵と奥方も話しに食いついてきた。話しの上手さが徒になった。
やっとこさ夕飯が終わり、サーガは適当に理由を言って早々に退出を願い出た。
別れ際伯爵と奥方に何度も何度も礼を言われた。礼は言葉よりも形にして欲しいけれども。
逃げるように屋敷を後にし、下町の方へと戻る。
「うん。俺にはこっちの空気の方が合ってる」
喧噪の中に身を沈め、サーガはやっとこさ気を落ち着けた。
口直しに適当に屋台で買った肉を頬張りながら、今夜の宿を求めて彷徨う。
「いや! 放して!」
そんな声が路地の暗がりから聞こえ、サーガが足を止める。
「む? 金の臭いか?」
こいつにかかればどんな騒動も金に換わる。
声が聞こえた路地の方へと足を向けると、暗がりの中から女の子がサーガにぶつかってきた。
「きゃ!」
「おっと」
女の子が転ばないようにと支えてやる。基本女の子には親切である。
「待て! お? お前、そいつを捕まえてくれたのか?」
男が2人駆けてくる。
「助けて! こいつら人攫いよ!」
女の子がサーガにしがみついた。
「何を言ってる! お前は売られた身だろうが!」
「あんたらが騙して連れてきたんじゃない!」
とりあえず、サーガには何が何だか状況がよく分からない。そして、女の子はサーガが期待出来るような身なりではなかった。つまり、金を持って無さそう…。しかも売られた言われてるし…。
「お前さん、金持って、ないよな?」
サーガが女の子に尋ねる。
「当たり前でしょ! お金があったらこんな所にいないわよ!」
まあそうでしょうね。
サーガが溜息を吐く。
「売られたってんなら、ちゃんと金の受け渡しがあって契約がなされたんだろ? だったら逃げ出すのは駄目だろ?」
「違うわ! こいつらが騙したからあたしは売られたのよ!」
売られたことは認めた。
「やっぱり売られてるんじゃねーか。諦めて大人しくしなさい」
サーガが女の子の肩をがっしり掴んで放さない。
「ま、待って! お願い、お金は後で払うから! 助けて!」
「担保も持ってなさそうな君の願いは叶えられません」
「おう、小僧。いいこと言うじゃねえか」
サーガの眉がピクリと動く。
「小僧?」
「ほれ、こっちに来な」
「いや! 放して! 最低! 裏切り者!」
裏切るも何も、仲間になった覚えもない。
女の子が必死に暴れる。それを取り押さえようとした男の肘がサーガの肩に当たった。
「痛い」
サーガが当たったことを主張するように言った。しかしその声は取り押さえるのに必死な男には届いていない。
「大人しくしろ!」
「放して!」
「痛い」
2度目。しかし気付かない。
「ほら、こっち来い!」
「いやああ!」
「痛えっつってんだろーが!!」
「げふん!」
サーガの跳び蹴りが綺麗に決まり、男の1人が吹っ飛ぶ。
「な、何しやがるこのチビ!」
「チビ?」
サーガがギロリと残った男を睨み付ける。
「誰がチビかーーーー!!」
「がふん!」
サーガの頭突きが綺麗に決まり、残った男も転がった。
女の子は突然の出来事にポカンとしている。
「ったく! 俺は大いに傷ついた! よって慰謝料をもらっていくことにする!」
どちらかというと払う方ではないかというツッコミは置いといて、サーガが男達の懐をゴソゴソと漁り、財布らしき物を回収する。
「これ以降、人様をチビ呼ばわりするのは控えるように!」
気絶しているから聞いてないだろうというツッコミは置いといて、サーガが踵を返し、路地から出ていった。
残された女の子は少し迷っているようだったが、意を決したのか身を翻し、サーガの後を追って行った。
サーガが宿屋へ入る。女の子も後に付いて入る。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
無言の攻防。
「俺に付いてきても何もないよ?」
「他に頼れる人もいないんだもん」
女の子が着ている服の裾をギュッと掴む。
見た所13、14歳という所だろうか。サーガアイによる計測では二次成長期真っ只中というところだ。
顔はそれほど悪くない。いや、可愛い部類に入るだろう。このまま1人で街を彷徨ったらどうなるかは誰に聞かなくとも分かる。
「俺と同じ部屋でいいなら、泊めてやるけど?」
「いいの?!」
女の子が顔を輝かせる。
「…ベッド、1つだけだけど…」
「うん。俺と同じ部屋、だぜ?」
部屋に入ると、女の子が顔を曇らせた。
確かに同じ部屋であるが、同じベッドとは聞いていない。
お金がない時などは2人で1つのベッドを使う事もあるのでそう珍しい事でもない。ただし、そこには仲間であるという条件が付く。
「やっぱり…、男の人って結局最後はそういう…」
「一緒が嫌なら床で寝れば?」
サーガが平然とそう言い切る。
「え?」
「ほれ、布団は貸してやるから」
掛け布団を女の子に渡し、自分はベッドにゴロリと転がった。
「え、ちょ、そこは、俺が床で寝るからって言うところでしょうが!」
「この部屋の代金払ったの俺だけど?」
ぐうの音も出ない。
「じゃ、おやすみ~」
サーガはさっさと寝息を立て始めた。
女の子は渋々布団を体に巻き付け、床に横になった。
「お母さん、お父さん…」
しばらくの間、女の子の静かにすすり泣く声が聞こえていた。
「ん…」
女の子が目を開ける。既に辺りは明るくなっていた。
「あれ?」
何故かベッドに寝ている。そして床にサーガが転がっている。
「あん? 起きたか?」
サーガも体を起こし、伸びをする。
「あてて…。やっぱ床は体が痛い…」
と腰などをさすっている。
「え? なんで?」
確か寝る前は逆であったはずなのに。
「お前、覚えてないんかよ」
サーガが女の子を睨み付ける。
「え?」
「夜中に寝惚けて「床でなんて寝られるかー!」って俺をベッドから蹴り転がしたんだぜ? 酷えもんだ」
「うそ…」
「まったく。俺が金払ってるのになんで床で寝にゃあならんのだ」
「あ、その、ご、ごめんなさい…」
「言葉は良いから形で示せ」
つまり金払えと。
「ご、ごめんなさ…」
ぐうううううううきゅるるるるううううううう
女の子の言葉を遮るように、女の子のお腹が盛大に悲鳴を上げた。
女の子が顔を真っ赤にする。
「飯の世話もしろと?」
「あ、あの、その…」
ぐぎゅるうううううきゅるるるううううう
お腹は正直だった。
女の子が涙目になる。
「はあ…。ちょっと待ってろ。その腹を黙らせにゃ、まともに話しも出来そうにない」
「あ、あの、本当に、ごめんなさい…」
ぎゅるるるるうううううきゅる
女の子がお腹を押さえるが、腹の虫は泣き止みそうになかった。
サーガは溜息を吐きつつ、部屋から出て行った。
しばらくして、サーガが食料を持って帰って来た。この宿には食堂が付いていないらしい。
おずおずとパンを受け取った女の子。初めは恐る恐る食べていたのが、お腹が空いていたのか途中からガツガツとなった。パンは逃げないからゆっくりお食べ。
その横に座ったサーガもパンに齧り付く。
「お前名前は?」
「レミ」
口いっぱいに頬張りながら女の子、レミが答える。
「俺はサーガ。冒険者やってる。騙されて売られたとか言ってたよな? あれってどういうこった?」
パンをゴクリと飲み込み、レミが言葉を探す。その目の前にサーガが肉の串刺しを翳すとぱくついた。食欲は正直だ。
「あたしにょ村…こにょ街から西にちょっといっひゃとこりょなんりゃけろ…」
「食ってから話せ」
レミが口の中で味わっていたお肉を慌てて飲み込んだ。
お読みいただきありがとうございます。
今年は2月の後半まで祝日がないんですよね~…。
何をモチベーションにしろと?




