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サーガとクロムの異世界譚  作者: 小笠原慎二
本編
27/81

レミ

前回のあらすじ~

「私は冒険者を辞めて騎士になります!」 シャキリ

「サーガ君! ありがとう! でも娘はやらんよ(ボソリ)」

「頼まれてもいらねーわ」 ギロリ

とっとと食ってさっさと出ようと思っていたサーガは、次々に下げられては出される料理に少し嫌気が差していた。

なんで最初からどかっと目の前に置いておいてくれないのか。そうすればさっさと食べて出られるのにと。

話しの続きをクラリスにせがまれ、少しお行儀が悪いが食べながら話してやると、伯爵と奥方も話しに食いついてきた。話しの上手さが徒になった。

やっとこさ夕飯が終わり、サーガは適当に理由を言って早々に退出を願い出た。

別れ際伯爵と奥方に何度も何度も礼を言われた。礼は言葉よりも形にして欲しいけれども。

逃げるように屋敷を後にし、下町の方へと戻る。


「うん。俺にはこっちの空気の方が合ってる」


喧噪の中に身を沈め、サーガはやっとこさ気を落ち着けた。

口直しに適当に屋台で買った肉を頬張りながら、今夜の宿を求めて彷徨う。


「いや! 放して!」


そんな声が路地の暗がりから聞こえ、サーガが足を止める。


「む? 金の臭いか?」


こいつにかかればどんな騒動も金に換わる。

声が聞こえた路地の方へと足を向けると、暗がりの中から女の子がサーガにぶつかってきた。


「きゃ!」

「おっと」


女の子が転ばないようにと支えてやる。基本女の子には親切である。


「待て! お? お前、そいつを捕まえてくれたのか?」


男が2人駆けてくる。


「助けて! こいつら人攫いよ!」


女の子がサーガにしがみついた。


「何を言ってる! お前は売られた身だろうが!」

「あんたらが騙して連れてきたんじゃない!」


とりあえず、サーガには何が何だか状況がよく分からない。そして、女の子はサーガが期待出来るような身なりではなかった。つまり、金を持って無さそう…。しかも売られた言われてるし…。


「お前さん、金持って、ないよな?」


サーガが女の子に尋ねる。


「当たり前でしょ! お金があったらこんな所にいないわよ!」


まあそうでしょうね。

サーガが溜息を吐く。


「売られたってんなら、ちゃんと金の受け渡しがあって契約がなされたんだろ? だったら逃げ出すのは駄目だろ?」

「違うわ! こいつらが騙したからあたしは売られたのよ!」


売られたことは認めた。


「やっぱり売られてるんじゃねーか。諦めて大人しくしなさい」


サーガが女の子の肩をがっしり掴んで放さない。


「ま、待って! お願い、お金は後で払うから! 助けて!」

「担保も持ってなさそうな君の願いは叶えられません」

「おう、小僧。いいこと言うじゃねえか」


サーガの眉がピクリと動く。


()僧?」

「ほれ、こっちに来な」

「いや! 放して! 最低! 裏切り者!」


裏切るも何も、仲間になった覚えもない。

女の子が必死に暴れる。それを取り押さえようとした男の肘がサーガの肩に当たった。


「痛い」


サーガが当たったことを主張するように言った。しかしその声は取り押さえるのに必死な男には届いていない。


「大人しくしろ!」

「放して!」

「痛い」


2度目。しかし気付かない。


「ほら、こっち来い!」

「いやああ!」

「痛えっつってんだろーが!!」

「げふん!」


サーガの跳び蹴りが綺麗に決まり、男の1人が吹っ飛ぶ。


「な、何しやがるこのチビ!」

「チビ?」


サーガがギロリと残った男を睨み付ける。


「誰がチビかーーーー!!」

「がふん!」


サーガの頭突きが綺麗に決まり、残った男も転がった。

女の子は突然の出来事にポカンとしている。


「ったく! 俺は大いに傷ついた! よって慰謝料をもらっていくことにする!」


どちらかというと払う方ではないかというツッコミは置いといて、サーガが男達の懐をゴソゴソと漁り、財布らしき物を回収する。


「これ以降、人様をチビ呼ばわりするのは控えるように!」


気絶しているから聞いてないだろうというツッコミは置いといて、サーガが踵を返し、路地から出ていった。

残された女の子は少し迷っているようだったが、意を決したのか身を翻し、サーガの後を追って行った。










サーガが宿屋へ入る。女の子も後に付いて入る。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


無言の攻防。


「俺に付いてきても何もないよ?」

「他に頼れる人もいないんだもん」


女の子が着ている服の裾をギュッと掴む。

見た所13、14歳という所だろうか。サーガアイによる計測では二次成長期真っ只中というところだ。

顔はそれほど悪くない。いや、可愛い部類に入るだろう。このまま1人で街を彷徨ったらどうなるかは誰に聞かなくとも分かる。


「俺と同じ部屋でいいなら、泊めてやるけど?」

「いいの?!」


女の子が顔を輝かせる。













「…ベッド、1つだけだけど…」

「うん。俺と同じ部屋、だぜ?」


部屋に入ると、女の子が顔を曇らせた。

確かに同じ部屋であるが、同じベッドとは聞いていない。

お金がない時などは2人で1つのベッドを使う事もあるのでそう珍しい事でもない。ただし、そこには仲間であるという条件が付く。


「やっぱり…、男の人って結局最後はそういう…」

「一緒が嫌なら床で寝れば?」


サーガが平然とそう言い切る。


「え?」

「ほれ、布団は貸してやるから」


掛け布団を女の子に渡し、自分はベッドにゴロリと転がった。


「え、ちょ、そこは、俺が床で寝るからって言うところでしょうが!」

「この部屋の代金払ったの俺だけど?」


ぐうの音も出ない。


「じゃ、おやすみ~」


サーガはさっさと寝息を立て始めた。

女の子は渋々布団を体に巻き付け、床に横になった。


「お母さん、お父さん…」


しばらくの間、女の子の静かにすすり泣く声が聞こえていた。













「ん…」


女の子が目を開ける。既に辺りは明るくなっていた。


「あれ?」


何故かベッドに寝ている。そして床にサーガが転がっている。


「あん? 起きたか?」


サーガも体を起こし、伸びをする。


「あてて…。やっぱ床は体が痛い…」


と腰などをさすっている。


「え? なんで?」


確か寝る前は逆であったはずなのに。


「お前、覚えてないんかよ」


サーガが女の子を睨み付ける。


「え?」

「夜中に寝惚けて「床でなんて寝られるかー!」って俺をベッドから蹴り転がしたんだぜ? 酷えもんだ」

「うそ…」

「まったく。俺が金払ってるのになんで床で寝にゃあならんのだ」

「あ、その、ご、ごめんなさい…」

「言葉は良いから形で示せ」


つまり金払えと。


「ご、ごめんなさ…」


ぐうううううううきゅるるるるううううううう


女の子の言葉を遮るように、女の子のお腹が盛大に悲鳴を上げた。

女の子が顔を真っ赤にする。


「飯の世話もしろと?」

「あ、あの、その…」


ぐぎゅるうううううきゅるるるううううう


お腹は正直だった。

女の子が涙目になる。


「はあ…。ちょっと待ってろ。その腹を黙らせにゃ、まともに話しも出来そうにない」

「あ、あの、本当に、ごめんなさい…」


ぎゅるるるるうううううきゅる


女の子がお腹を押さえるが、腹の虫は泣き止みそうになかった。

サーガは溜息を吐きつつ、部屋から出て行った。












しばらくして、サーガが食料を持って帰って来た。この宿には食堂が付いていないらしい。

おずおずとパンを受け取った女の子。初めは恐る恐る食べていたのが、お腹が空いていたのか途中からガツガツとなった。パンは逃げないからゆっくりお食べ。

その横に座ったサーガもパンに齧り付く。


「お前名前は?」

「レミ」


口いっぱいに頬張りながら女の子、レミが答える。


「俺はサーガ。冒険者やってる。騙されて売られたとか言ってたよな? あれってどういうこった?」


パンをゴクリと飲み込み、レミが言葉を探す。その目の前にサーガが肉の串刺しを翳すとぱくついた。食欲は正直だ。


「あたしにょ村…こにょ街から西にちょっといっひゃとこりょなんりゃけろ…」

「食ってから話せ」


レミが口の中で味わっていたお肉を慌てて飲み込んだ。


お読みいただきありがとうございます。


今年は2月の後半まで祝日がないんですよね~…。

何をモチベーションにしろと?

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