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サーガとクロムの異世界譚  作者: 小笠原慎二
本編
26/81

騎士になる!

前回のあらすじ~

「ダンジョン崩れちゃった。テヘ」

「・・・・・・」

頭を抱える一同。

屋敷の中へと案内されると、さすがのさ。


「お帰りなさいませ、お嬢様」


執事やらメイドやらが揃って頭を下げてお出迎え。


「ああ、ただいま」


当たり前のようにそれを受け、堂々と中へ入っていくクリス、改めクラリス。


「すまない。部屋で着替えてくるので少し待っていてくれるだろうか」

「うん。よかよ」

「では、こちらへ」


前に立った執事さんの後について1つの部屋に案内される。

あきらかに一級品とみられる家具が並んだ応接室。サーガはソファに腰掛ける。


「うへえ。沈む…」


柔らかさが段違いである。


「そのまま、しばらくお待ち下さいませ」

「はいはい」


執事が下がり、サーガが1人になる。


「1つくらい…いや、さすがにそれは泥棒だな」


何を考えている。


そのままソファでだらっとしながら待っていると、扉がノックされる。

メイドに続いてクラリスが入ってくる。


「済まない。待たせてしまった」


令嬢の服装となったクラリスはこれまた段違いの美貌をさらけ出していた。


「まずは、報酬からだな」


後に続いて入って来たメイドさんが、持っていた袋をサーガの前に置いた。サーガが中身を確認する。


「ん。毎度」


ほっこり笑って収納袋へしまう。


「君、いや、サーガ君にはとても助けられた。そこでお礼も兼ねて夕飯にお招きしたいのだが、どうだろう?」

「ん? 有り難く受けようかな」


貰えるものは貰っておく主義。断わる意思はない。


「それは良かった! そこでだ、是非サーガ君の冒険譚も聞かせて貰えると嬉しいのだけれど!」


ウキウキとクラリスが手を合わせる。


「あ、言ってなかったっけ? 俺記憶喪失で昔のことほとんど覚えてないのよ。冒険者活動し始めたのも最近だし、それほど話しもないけど。それでよければ」

「最近? それでCランク? は! もしかして、君は今噂の黄色い小男君かい?!」

「だ・れ・が! 小男だ!」

「あ、す、すまない…」


クラリスが慌てて口を押さえた。

黄色い小男の噂。実績も無いのにDランクから始まり、その日のうちにDランクパーティーを壊滅的に追い込んだ謎の小男。そして雨の日に突然やって来て、難しい依頼を半日で片付けてしまった実力者と評判である。剣を腰に差しているので剣士かと思いきや、実はとんでもない魔術師なのだという噂である。


「そ、それでももちろんいいさ! 1つ2つ依頼は受けているのだろう?」

「3つだけだけど…」

「是非教えてくれないか?!」


目をキラキラさせながら、前のめりになってクラリスが頼み込んできた。












「なんだか、君の話は常軌を逸しているな…」


2つ目の話しが終わり、クラリスがポカンとなっている。


「そもそも、君は剣士なのかい? それとも魔術師?」

「え~と、どちらかというなら剣士、が近いのかな?」


一応基本は剣で戦います。


「それに、どうやってそこまで移動を? かなり場所が離れていないかい?」

「それは教えられない秘密の裏技」

「むむ…」


冒険者には他者には話せない、見せられない伝家の宝刀が1つくらいあっても不思議では無い。

そこへ、扉をノックする音。


「なんだ?」


クラリスが返事をすると、執事が1人入って来てクラリスにそっと耳打ちした。


「そうか。申し訳ない。少し席を外させてもらう。夕飯までもう少しだし、ゆっくりしててくれ」

「あいよ。ゆっくりさせてもらいます」


茶をすすり、茶菓子を齧りながら、サーガは部屋を出て行くクラリスを見送った。

部屋にサーガが1人、いや、メイドさん1人と共に残された。


「…もし良かったら一緒に茶でも飲みません?」


無言で部屋の隅に立たれているのも、なんとなく落ち着かない。


「申し訳ございません。主人のお客様と席を共にするわけにはいきませんので」


丁重にお断りされてしまった。














「父上。お帰りなさいませ。お時間を取っていただき、ありがとうございます」

「うん。クラリス。改まって話しとはなんだい?」

「はい…。実は、冒険者の事なのですが…」


クラリスの父、レナード・プレ・サクセス伯爵の顔が曇る。夢見る末娘の扱いにとても困っている様子が窺える。


「約束は約束だよ。20歳までにCになれなければ…」

「いえ、そうではなく…。私は今日をもって冒険者を辞めようと思いまして」

「え?」


伯爵がポカンとなる。

あれほど冒険者冒険者と言っていた娘が、いきなり辞める宣言だ。思わず目を瞬かせる。


「え? 冒険者、いいの? 辞めるの? 本当に?」

「はい。私は冒険者を辞め、騎士を目指そうと思います!」


ゆっくりとその言葉が伯爵の頭の中に入り、理解していく。

野蛮な冒険者家業を辞めてくれたうえに、栄誉を賜れる騎士団への編入を決意してくれるとは…。

元々サクセス家は聖教国との境を治める辺境伯であり、武に優れた人間を尊ぶ風習がある。クラリスの兄や姉ももちろんだがそれぞれに武に通じている。


「よくぞ決断してくれた! 父は嬉しいぞクラリス!」


大喜びでクラリスに抱きつくレナード伯爵。


「父上…、そ、そこまで…」

「冒険者とは夢のある職業だということは父も分かっている。しかし登り詰められるのはほんの僅かな一握りの人間だけだ。それまでにどれだけの苦労があるか…。それを心配していたのだよ」

「父上…」


特に女性は貞操の問題が心配だ。そちらで精神的に大きなダメージを受けないかとても心配であった。冒険者はやはり野蛮な人種が多いものなので。


「騎士になると言うなら父も応援しよう。なに、騎士になっても冒険が出来ないわけでは無い。ある種鍛える環境が揃っているだけ、冒険者よりもお得だと思うぞ!」

「そ、そうですね!」


鍛えられると聞いてクラリスが顔を輝かせる。脳筋であったか…。


「中央であれば、女性だけで編成された白百合騎士団がある。さっそくそちらへ入れないか打診してみよう」

「ありがとうございます。父上」


ニコニコと伯爵が早速とばかりに書類を用意し始める。


「そういえば、どうして突然そんなことを思ったのかね?」


昨日までも冒険者になる! と意気込んでいた娘が、突然考えを変えたことにやっと疑問を持った。


「それがですね。昨日の事なのですが…」


クラリスがサーガについて説明し始めた。












「夕飯の準備が出来ましたので、ご案内致します」


結局クラリスは戻って来ず、サーガは1人食堂へと案内される。

立派な長テーブルに、指紋を付けることを躊躇うような立派な椅子。しかも執事さんが椅子を引いてくれるというVIP待遇。サーガは背中が痒くなりそうだった。


(とっとと食ってさっさと出よう)


なんとなくもぞもぞ落ち着かないサーガは、さっさと屋敷を出ようと考える。しかし貴族の食事というものが、順番にメインやオードブルが出てくると言うことをサーガは知らない。

時を置かず、食堂に誰かがやって来た。


「君がサーガ君かい?!」


赤茶けた髪のイケおじが、入って来て早々サーガにずかずかと近寄って来る。


「あ、はあ…」


ここで立ち上がって挨拶という礼儀も知らないサーガは、座ったままその迫力に飲まれている。


「ち、父上!」


慌てて後から入って来たクラリスが止めようとするも、レナード伯爵はサーガに近づき、そして抱きついた。

いきなり男に抱きつかれ、驚いて身を震わせるサーガ。


「話しは聞いた! 君のおかげだ! ありがとう!」


バンバンと背中を叩きながら伯爵が言う。そしてその後に、


「でも娘はやらんよ?」


ぼそり、と低い声で呟いた。サーガは背筋が寒くなった。


「いや、いらねっす」


思わず小声で正直に答えてしまう。

体を離し、サーガの両肩に手を置いたまま笑顔の伯爵。なんだか怒っているようにも見えるのはサーガの気のせいだろうか?


「うちの娘に魅力がないとでも…?」


結局どうしたいんだあんたは。


「父上! 自己紹介もなしに失礼ですよ!」

「おお、すまない。つい嬉しくて…」

「なんの騒ぎです?」

「あ、母上…」

「マリアンナ! 聞いてくれ、とても嬉しい事があったのだよ!」


伯爵の自己紹介はそれからしばらく後だったという。


お読みいただきありがとうございます。


なんだかパソコンの調子がおかしくなってきております。

そろそろ寿命かもとは思うのですが、このスペックの物だと近頃は10万以上するので悩みどころ。

でももそっと上の物も欲しいけど…そんな金何処にあるンぞ。

宝くじでも当たらんカナと夢をみる毎日であります。

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