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サーガとクロムの異世界譚  作者: 小笠原慎二
本編
22/81

しょぼんぬ

前回のあらすじ~

「サーガ、一緒に…」

「ごめんなさい! じゃ、お元気で!」

「逃げた…」

「う~ん。なんだかヤバい気がした…」


花街から離れて大通りを歩く。


「ま、とりあえず、剣をどうにかしないとな」


腰に差してある折れた剣に触れる。安物とはいえ長い間愛用していた剣だ。買い換えるほど金がなかったというわけではない。多分。決して。


「まずは武器屋を探さないとだな~」


と言っても街のどこにあるのかさっぱり分からない。


「こんちゃ~」

「はいどーも! いらっしゃい!」


屋台の1つに顔を突っ込み、果物らしき赤い実を手に取る。


「これ美味いの?」

「皮ごと行ける南方の果物だよ。試しに食ってみりゃ分かる」

「確かに」


折角のご飯をかっ込みすぎて喉が渇いていたこともあり、1つ買ってみる。


「おっさん、武器屋ってどこにあるか知らん?」

「武器屋ね~。ギルドに聞けば一番良いんだろうが、俺が噂に聞いた所だと、ベイルデンの所が一番だって聞いたな」

「ベイルデン? どこにあるんだ?」


果物屋の親父は親切に道を教えてくれた。


「あんがとよ」


礼を言って歩き出す。右手に持った果物を皮ごとシャクリと齧った。


「む、ちょっと酸っぱいけど美味いな」


芯を残して綺麗に食べ尽くした。


「お? ここか」


きちんとゴミはゴミ置き場へと捨て、教えられた通りに進んで行くとそれらしき看板が見えた。

扉を開けて中に入る。


「らっしゃい」


カウンターの向こうには髭もじゃの親父が座っていた。

サーガが目を見張る。

どう観察してもその親父はサーガよりも背が低い。

何故かちょっぴり嬉しそうな顔をして、サーガは中に入っていった。


「何か入り用か?」

「剣がね。折れちまってさ」


鞘から抜き放つ。見事に途中からポッキリいっている。

それを手に持った髭もじゃ親父が溜息を吐いた。


「綺麗にいっちまってるな。こりゃ修復するより買った方が安く済むぞ」

「あ、やっぱり?」

「何を切ったらこんなに綺麗に折れるんだ?」

「めっちゃ固いものかな?」


適当に答えたサーガが、壁に並べてある剣を眺める。


「お前さん冒険者かい?」

「まあね」

「ランクは?」

「この前Cになった」


今頃ギルドではサーガが早く来て何か依頼をこなしてくれないかと、首を長くして待っているなどと言うことなどサーガは知る由もない。


「ほう、その年でCか」


親父さんが感嘆の声を上げる。


「いや待てよ? お前さんただの人間かい?」

「は? それ以外に何に見えると?」

「いや、ドワーフの血が混ざってるとか、エルフ…はなさそうだな」


顔をみて判断した。


「ドワーフ? ドワーフってなんだ?」


サーガが剣を1本手にとって重さを確かめている。


「わしみたいな者だよ。背が低くて、女子供以外は髭を生やしてるのがドワーフ…」

「背丈は平均だ!」


平均の若干下だ。


「ああ、まあ、そこは良いとして。となるとお前さんみたところ15、6ってところか?」

「16だ」

「ほお、その年でCか…」


サーガがブンブン剣を振り、手触りを確かめている。


「おっさん、ちょっと確かめてもいいか?」

「何をだ?」

「壊れないようにはするから」


サーガが剣に集中する。風が剣に集まり纏い出す。


「!」


魔力の流れを感じ、髭もじゃ親父が目を見開く。


「待て、その剣じゃ…」

「おわっと! 駄目か…」


サーガが力を散らした。集まった風がぶわっと散っていく。


「あっぶねー。危うくヒビが入る所だった…」

「その剣はただの鉄の剣だ。魔力を流しても下手すりゃ壊れるぞ」

「そーなのよねー。な~んか剣と相性があるから…。その剣は相性が良かったのかもってくれたんだよな…。あ~あ、失敗したなぁ」

「お前さん、今までこの鉄の剣に魔力を流してたんかい?」

「まあね。風を纏った方が良く切れるようになるし」

「ふむ…」


髭もじゃ親父が剣を調べ出す。確かに魔力の残痕が見えた。


「よくまあ、折れずに耐えたもんじゃ」

「そ。だからそこそこ気に入ってたんだけどね~」


サーガが剣を置き、その隣の剣へと手を伸ばす。


「ちょっと待て。その辺りのものは魔力を流すのには向いてない」

「え? そーなの?」


風の気質のサーガには地の気質の剣などの鑑定は苦手である。


「ふむ。ちょっと待ってろ」


親父はそう言うと奥へ引っ込み、1本の剣を手にして戻って来た。


「これを持ってみろ」

「どれどれ」


青みを帯びた刀身。重すぎず軽すぎず、振った感じも手に馴染む。


「おお、これいいな」

「魔力を流してみい」

「おし」


いつも通りに風を纏おうとして、


「うわ!」

「なんじゃ?!」


部屋の中を突風が吹き荒れた。

すぐに収まる。


「え、なにこれ。すっげー魔法が扱いやすいというか…。威力が倍になったぞ…?」

「ふふん。それはミスリルで出来た剣だからな。魔力伝導率がいいのさ。お前さんには持って来いの剣だろう?」

「ああ! 気に入った! いくらだ?!」

「ミスリルは希少な鉱石だからな。ちと値は張るぞ。その剣はな、なんと1億エニーだ」

「いちおく?!」

「希少な上に扱いが難しいからな。それでいて魔力伝導率も高く折れにくく錆びにくい。となればそれくらいになるのも当然だろう? まあ払えないのは仕方ないが、交換条件でとあるダンジョンに行って――」

「いや、払えるけど?」

「え?」


親父の目が点になる。

サーガが腰の収納袋を取り出し、


「数えてないけど、多分一億近くはあると思う」


そう言ってカウンターに金をザラザラと出し始めた。

親父が口をあんぐりと開ける。

すぐにカウンターの上で金貨が山になった。

もちろんこのお金はテッドリーから「慰謝料&迷惑料」としてもらってきたお金である。屋敷を漁って金目の物を取って来たわけであるが、決して盗って来たわけではない。決して。

衛兵の人達が屋敷を捜索して、何故か金目の物がほとんど消えていることに首を傾げていたことなどサーガは知る由もない。






親父がせっせとお金を数えている。サーガは余程気に入ったのか、軽く素振りをしている。

数え終えた親父がニヤリと口元を歪ませる。


「おい小僧。残念だがちと足りんぞ」

「え? いくら?」

「200万程だな」

「あらホント」

「仕方ないから、どうだ? 交換条件でダンジョンに行って――」

「これ、多分200万くらいすると思うけど」


サーガが収納袋から指輪を取り出した。少し趣味は悪いが、輝いている宝石は本物のようだった。

しょぼんとなった親父がそれを受け取る。念の為よくよく見てみるが、やはり本物のようだった。これなら売れば200万はくだらないだろう。


「そうだな…。それは売ってやろう…」


しょぼんぬになった親父が呟いた。


「おう、あんがとよ。い~い剣だぜ! これならあいつにも負けない…ってあいつって誰だっけ?」


剣を翳して見ていたサーガが1人呟き首を傾げる。


「まあいいや。どっかで試し切りしてぇなぁ…」

「それなら良い場所があるぞ!」


剣の鞘を持って来た親父が食いついた。


「ここから南西に行った所に廃鉱山がある。そこに魔物が住み着いたりして魔力溜まりが出来たらしく、ダンジョン化したらしいんだ。そこへ行けばそこそこ強い魔物と戦えるし、ミスリルなどの鉱石も採れるらしいぞ!」

「廃鉱山ねぇ…。俺穴蔵は苦手なんだよな…」

「ミスリルの鉱石をもし持って来たらギルドより高値で買ってやる! 小遣い稼ぎにどうだ?」

「小遣いは今それほど困ってないんだよな。あ、そうそう、おっさん、宝飾品を買ってくれる店って知らないか?」

「もしダンジョンに行くなら、ツルハシもついでにつけてやるが…」

「なんでそんなに行かせたいんだよ!」


先程から親父がダンジョンダンジョン言っているのはサーガも気付いている。


「むう…。場所が場所だけに行く者も少なくてのう。ついで言うならDランク以上でなければ危ないらしくてあまり人が足を運ばないらしいんじゃ。廃鉱山になったとはいえ魔力溜まりが出来たならミスリルが出来ていてもおかしくない。常時依頼で出してはいるのだが、なかなか入って来なくてのう…」


折角なら良い素材で良い物を作りたいのに、その素材が入手困難になっているらしい。


「分かったよ。まあ試し切りもしたいし、ちょっと寄ってやるよ。石は専門外だから拾えるか分からんが、拾えたら拾っといてやる」

「おお! ではこれも付けてやる! 持っていけ!」

「…どーも。で、宝飾品を買ってくれる店は?」


出されたツルハシも鞘と共に受け取り、親父に店の場所を聞いた。親父も丁寧に道を教えてくれる。


「ちと偏屈な婆さんだが、訳あり品でも買ってくれる所だ」

「そいつはありがてえや。そんじゃ、どーも。良い買い物したぜ」

「おう、ミスリル、待ってるぜ!」

「あ、そうだ。最後に1つ大事な事を」

「なんだ?」

「ダンジョンて何?」


親父が盛大にずっこけた。


お読みいただきありがとうございます。


昔はこの日が成人の日だったんですよね~。懐かしや。

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