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サーガとクロムの異世界譚  作者: 小笠原慎二
本編
21/81

脱兎の如く

前回のあらすじ~

全部終えて女将に報告。そして麻薬と思われる謎の薄らと赤い液体。

アオイにも終わったよと告げるが、アオイは混乱状態に陥る。

アオイがこめかみを押さえながらサーガの話しを聞いている。


「で、女将さんに報告を終えて、ここに来たってわけ」


話の途中でテッドリーに多少同情してしまったけれど、結局自業自得だわと考えを捨てた。


「本当に? テッドリーを倒したの?」

「うん、証拠の腕でも見る? 慣れてないとグロイかもだけど」

「いえ。いいわ」


収納袋から何かを取り出そうとするサーガを止める。


「で、アオイさんにせめてお別れを言いにと思ってさ。次ここに来る時は客として来たいと思ってるけど、アオイさんここ出るんならもう会うこともないだろうし」


(ああ、そうか)


アオイはすでに自由の身。ここ満華楼から出ることを選択することも出来るのだ。


「で、アオイさん、諜報活動はどうすんの?」


アオイがはっとサーガの顔を見て、睨み付ける。


「あんた…、何を知ってるの?!」

「うんにゃ。実は何も知らない」


珍しく真面目な顔で答えるサーガ。


「カマかけただけなんだけど、そこまで正直に反応されるとはな~」


アオイが顔を青くする。口をパクパクさせるが、言葉は出てこない。


「アオイさんて本当、嘘がつけないよね~。よくそんなんで今まで無事でいられたもんだ」


アオイがしょぼんとなる。


「いや、だからこそ、なのか?」


サーガが腕を組み考えている。

アオイが溜息を吐く。


「どうしてそう思ったわけ」

「俺の経験上、人気の高いお姉さんほど、そういう副業をやっていることが多い」

「あんたの経験値がおかしいわ…」


確かにおかしい。


「ここに入ってから? それとも入る前から?」

「…。あたしの父親の話はしたわよね? あいつ、何処の国だか知らないけど、この国の情報を流していたらしいのよ。病気で死んだのは本当だけど、ほぼ獄中死。あたしと母親も処刑されそうになったけど、ここで情報を集めることをするなら生かして貰えるって話しになって。死にたくなかったからここに来た。母親もどこかで同じような仕事してるはずよ」

「生きてる確証は?」


アオイが黙り込んだ。


「月1で手紙をもらってる。あたしももちろん返してる。でも、ルーデンが、代筆なんじゃないかって言い出して…。それを聞いたら、本当にお母様が生きてるのか、分からなくなっちゃった…」

「代筆ねぇ」


母親を人質に取られている状態のアオイは国を、諜報機関を裏切る真似は出来ない。それでもルーデンと逃げだそうとしたのは、ルーデンから代筆のことを聞かされ、母親が生きているのか確証が持てなくなったからなのだろう。


「確かめようとはしなかったの? 2人だけしか知らない思い出話とかしてさ」

「え?」


アオイが目をパチクリさせる。


「思いつかなかったのね…」

「あ…、ルーデンの話しを思い切り信じ込んじゃって…」


惚れてる相手に盲目し過ぎていたようだ。


「そ、そっか、次の手紙で…」

「うん、まあ確かめてみたら?」

「うん!」


アオイの顔が少しだが明るくなった。


「あ、そーそー。アオイさん、これ、奴からぶんどった慰謝料ね」


サーガが何か思い出したように収納袋を漁り、中から青い宝石の付いた指輪を取り出した。


「え?」


アオイの右手を取り、その中指に嵌めるが、ぶかぶかだ。


「やっぱしでかいか。まあこっちもあるしな」


アオイが中指に嵌められた指輪に視線が釘付けになる。どう見繕っても最低でもウン百万はするであろう指輪だ。


「アオイさん、髪上げて」

「え? はい」


後ろに回ったサーガが、アオイの首元に何かを下げる。それを首の後ろで止めている。

アオイは首元に下げられたそれにも視線が釘付けになる。これもどう考えてもウン百万はするであろうネックレスだ。真ん中を飾る大きな青い宝石がとても綺麗に光っている。


「こ、これ、何?」

「奴から強制徴収した慰謝料。これ売れば開店資金の足しになるっしょ。うん。やはりネックレスの方が胸元を良く観察できて良いな」


まじまじと胸元なのかネックレスなのかを見つめるサーガ。


「どこを見とるか!」


アオイのチョップがサーガのでこに決まった。


「あでで…。まあ諜報活動の方は普通に店やってても出来ないこともないだろうし、アオイさんだけがやってるわけでもないんだろ? その辺りはアオイさんが頑張って話し付けるしかないよな」

「う、うん…」


そうだ。この商売の方が閨の中で情報を漏らす男が多いので諜報活動には向いているが、別にこの商売だからこそ出来ないというわけでもない。それに、テッドリーに売られた時も、奴等はアオイを助けに来なかった。つまり切り捨てたのだ。同じようなことをしている娼妓が他にいることはアオイも知っている。アオイはその中の1人でしかない。

ある意味切り捨てたことを逆手にとってこちらに有利に持って行けるのでは? と考える。しかし海千山千の相手と渡り合える自信はないけれど。


「頑張ってみるわ」


折角落ちてきたチャンスなのだ。逃す手はない。


「うん。店が出来たら1回くらいは顔出しに行くよ」

「あら、1回と言わず何回来てもいいわよ?」

「ええ~。女の子の小物売るお店だろ? 俺が行くのもおかしいでしょ。それとも遊びに行ったらやらせてくれるとか?」


冗談交じりにサーガが言うが、何故かいつものツッコミが返ってこない。

何故か顔を赤くし、モジモジしている。

たらり、とサーガの頬を汗が流れる。


「え~と、アオイさん? ツッコミが返ってこないと立つ瀬がないのですけれど…」

「…サーガだったら、いいわよ?」


サーガの顔から血の気が引く。


「というか、もしなんだったら、一緒にお店…」

「俺! 一所に留まるの苦手なもんで! それに商売女以外は手を出さない主義なので!」


何故か後退り始めるサーガ。


「え…そうなの?」

「そうそう! じゃ! アオイさん、元気で!」


逃げるようにサーガが扉を開けて出ていった。


「え、ちょっと?!」


アオイが呆然となる。


「逃げた…」


逃げた。とにかく逃げた。初めて逃げられた、いや避けられた。

アオイは人気娼妓だ。アオイの気を引こうとする客は多い。アオイがいい顔をすれば皆喜ぶ。そのフリだがを見せれば皆鼻の下を伸ばしたものだ。

誰もがアオイの気を引こうと頑張るのに、サーガは逃げた。


「逃げた…」


これにはアオイのプライドが傷ついた。今まで男など手玉に取るようなものだったのに。


「逃げたわね、サーガ…」


アオイの目が据わった。

アオイは頭をフル回転させる。今の己の立場を存分に使って、どうやったらあの男を追い詰めて手に入れることが出来るだろうかと…。

女って怖い。












用意されていた昼食を急いでかっこみ、1千万と処分料の入った袋を中身も良く確認せずに引ったくるように受け取った。


「じゃ、元気でな!」


挨拶もそこそこにサーガは満華楼から逃げるように去って行った。


「あ、サーガさん?!」


事情をよく分かっていないツナグとアカネがその後ろ姿を見送った。あっという間にその姿は道の向こうに消えて行ってしまった。


「忙しないね。もう行ったのかい」


見送る気があったのか、女将も裏の戸口の所までやって来ていた。


「なんだか慌てたように行っちゃいましたよ」


ツナグが呆れた口調で言った。


(ふん? アオイと何かあったのかね?)


怒らせるようなことでもしたのかと考えるが、なんだかいつも漫才のようなボケ突っ込みをしていた気がする。

よく分からないがまあいいかと、女将がアオイの部屋へと赴いた。もちろん今後についての話し合いである。


「アオイ? 開けるよ?」


女将がノックすると、


「どうぞ」


とアオイの声。

扉を開けて中に入れば、鏡台の前に座るアオイがいた。背を向けているので顔は見えない。


「アオイ、今後の事なんだけどね」

「丁度良かった。あたしも女将さんにその事で話そうと思ってたのよ」


振り向いたアオイの顔は、笑顔なのにどす黒い怒気を纏っていた。


(何やったんだねあいつは…)


思わず女将も顔を引き攣らせた。


お読みいただきありがとうございます。


章をつけるなら多分ここで「満華楼アオイ編」終了であります。

章をつけるかは今悩み中。

「クロムはどうした」

というお声が聞こえそうですが、神様の方もいろいろ考えがあるようです。

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