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サーガとクロムの異世界譚  作者: 小笠原慎二
本編
11/81

頭を抱える再び

前回のあらすじ~

風の力のお復習い。

空気そのものを操ることが出来る。空気に関連した力、音や臭いも敏感に感じたり操る事が出来る。

それから約1時間後。


「ただいま~」


帰って来やがった。


「さ、サーガさん…?」

「倒したよ~。今回はそのまま素材になるっつーから、袋に入れて持って来た」


コルドラの皮は防寒素材、肉は食用、骨や内臓は薬に使われる事もある。なのでできるだけ綺麗に持って来たら高額で買い取るとは話しはしていたが…。


「あっちだっけ?」


査定カウンターの方へ向かう。


「ちょ、ちょっと待って下さい!」


慌ててサララが止めに入る。


「ん? 違うの?」

「いいえ、違わないですけど、ちょっとこちらへ」


何やら査定カウンターのお姉さんに耳打ちすると、カウンターから出て来て歩き出した。


「こちらへ。解体所になってますので」


奥の扉の方へと案内された。

扉を開けると少し長い通路。その先の扉を開けて中に踏み込むと血の臭いがサーガの鼻についた。小綺麗にはしてあっても臭いは簡単には取れないものだ。

暇そうにしていたひとりの禿げのおっさんにサララが声を掛ける。


「ジンさん。よろしくお願いします」

「お? こんな日に客か?」


椅子からよっこらしょと立ち上がったジンと呼ばれた男がサーガ達の方へ近づく。


「見ない顔だな。俺はジン。ここで解体業をしてる。これから顔見知りになるかもだが、よろしくだな」

「俺はサーガ。暇そうだなぁ。俺がじゃんじゃか仕事持って来てやるよ」

「そいつはありがてえな」


ガハハとジンが笑う。


「で、なんの獲物持って来たんだ?」


ジンがサーガの腰の袋に目を落とす。収納袋だと分かっているようだ。


「ジンさん、驚かないで下さいね」


サララが額に手を当て、溜息を吐きながらジンに忠告する。


「ん? なんだ? 何か珍しいものか?」

「通常、Cランク1人では討伐しない、出来ないものです…」


サララが言うが早いか、サーガが袋に手を伸ばし、中の物をよっこらせと取り出した。


ずん


少し大きな音がして、それが解体所の真ん中に横たえられた。


「こ、これは…。コルドラ?」


綺麗に首を掻かれた、白い大きな虎のような魔物。

サーガに目をやり、次にサララに目をやった。


「え? 1人? Cランク?」


サララがこくんと頷いた。







なんでこんな奴がCなんだと騒ぐジンにある程度の事情を説明。まだ登録したてと聞いて再び唖然となるジン。


「とにかく、早めに報酬のことについて話をしなければなりません。できるだけ早く解体をお願い致します」

「おう、分かった。最速で終わらそう!」


腕まくりをして早速長い包丁のようなものを取り出して来たジン。


「私達は、またギルマスのお部屋に行きましょうか」

「え? また?」


解体を始めたジンを置き、少しいやな顔をしながらサーガがサララに付いていった。








「さすがに一日でランクをまた上げることは難しいよ。なんで明日にしてくれなかったんだ…」


今度はゴルドはいなかった。新米冒険者のパーティーがゴルドに指導を頼みに来たらしい。

今頃鍛錬場で心穏やかに剣を振るっているのだろう。


「んなこと言われても。自由になるのが今日しかなかったし…」

「自由になるのが今日だけ? どういう意味だい?」


ヤンの問いに、サーガは嵌められて借金を負わされたことを話した。


「それなら、余計に冒険者の仕事をした方が君にとっては早めに借金を返せそうだけど…」

「俺も途中からそんな気がしてきてた」


ゴブリンの依頼料は調査が主だったので数千エニー程度だが、ゴブリン1体の討伐報酬が千エニー。ホブがいると1万。それだけでもサーガは4万エニー程度は稼いだことになる。

ここにコルドラの依頼料と素材買い取り料を足せば、今日一日ですでに数十万は稼いだことになる。

アオイの護衛料が1日3万(サーガが頑張って値を引き上げた)となれば、どっちで稼いだ方がお得か、すぐに分かるだろう。


「ただ200万にはまだ足りねえんだよな」


今持っている金をかき集めてもまだ100万近くは足りない。


「まあ綺麗なお姉さんに囲まれている生活は嫌ではない」


娼館なのでもちろんだが綺麗な女性ばかりである。


「借金に綺麗な女性か…」


ヤンが何か考えているようだが、あまり現実味はないと思うぞ。


「まあそれは置いといて、ちなみにどうやって倒したのか参考までに聞いてもいいかな?」


火魔法を使わずに倒せるならば、他の冒険者達の可能性も広がる。


「ええと、風の刃を使っても氷で弾かれちまったんだよな」


サーガが語りだす。

もちろんだが門から出て飛んで行った。目撃情報のあった場所から風を駆使して場所を特定。すぐさま強襲した。

しかしあちらも勘がいいのか、サーガに気づきすぐに氷の壁を張った。

地面も凍らされたがそこはサーガ、飛んでいるので然程影響はない。何度も風の刃で氷の壁を壊すが、すぐに再生されてしまう。しかも周りの雨を凍らせてこちらへ攻撃までしてくる。

風の結界を張って攻撃を躱す。このままではにっちもさっちも行かない。そこで風の刃を途切れなく連続で叩き込み、目眩ましをして背後に回り込んだ。そのまま背後から襲いかかるも、コルドラはこれにも気づき鋭い爪を振り上げた。

気づかれるとは思わなかったサーガは慌てて爪を避ける。その時うっかり氷で足を滑らせスッテンコロリン。何かのコントかと思える程綺麗に氷の上をコルドラに向かってツルーっと滑って行った。

運良く?コルドラの腹の下に滑り込んだサーガはその腹に向かって風の弾を放つ。

衝撃で体が浮き、動きを止めたコルドラ。すかさずサーガは剣を抜き、コルドラの首を掻き切ったのだった。


「てなところだけど」


ヤンは項垂れている。予想はしていたがまったく参考にならない戦い方だった。

普通は火魔法を持つ者が氷の壁を撃破、出来るならそのまま火魔法でコルドラに連続攻撃。そこまでの魔力を持たない者ならばパーティーを組んで、火魔法で気を反らしている間に別方向から攻撃という手法を取る。

もちろん氷による攻撃も受けるので盾などの装備も必要であるし、足元が滑らないように滑り止めのついた靴を用意しなければならない。普通はいろいろ準備がいるものなのである。


「うん、ありがとう。今後の参考にさせてもらうよ」


ならないけれど、一応礼は述べておく。


「早く借金を返して冒険者としての活躍を期待しているよ。君なら近日中にはAランクになることも難しくないだろう」

「ランクが上がると強い奴と戦えるとか…」

「魔物ならね。冒険者同士の戦いはできるだけ控えて欲しいかな?」


活躍できる人材を減らすのは勘弁して欲しい。

笑顔でサーガ達を送り出した後、ヤンは溜息を吐く。


「実績がなくとも早く上に上がれる方法を確立しておいた方が良いかな?」


サーガはとてつもなく珍しい存在だから、これからその体勢を整えても誰も追随しないと思うが。













「コルドラの解体が終わって査定が済み次第、素材の料金は銀行に振り込んでおきますね。コルドラ退治の依頼料も銀行でよろしいですか?」

「うん。頼んだ」


手続きを終え、カードをサーガに返す。


「で、もう一個くらいなんか面白そうなものない?」


まだやるんかい、と心の中でツッコみつつ、こうなれば面倒そうなものを押しつけてやれと依頼書を捲る。


「これなどどうでしょう? ドコンガと呼ばれる毒液を吐く蛙です。今年は大量繁殖してしまったのである程度狩って欲しいとの依頼です」

「ふ~ん。大量か…。うん、まあいいか。やるわ」

「ではお手続きを」


手続きをしながら一応普通の対処法をサーガに伝える。


「毒液を吐いてくるので普通はそれ用の防具を揃えたりするのですけど、サーガさんは大丈夫そうですね。あと毒液を吐いた後沼に潜ってしまうのが厄介なのですが、サーガさんなら大丈夫ですね」

「なんだろう、サララさんの言葉に毒が含まれてる気がするんだけど」

「気のせいですよ」


きっと気のせいだ。

手続きを終えると、首を捻りながらもサーガがギルドを出て行った。


「また1時間かしら…?」


そろそろ昼が近い。雨は朝とあまり変わらず降り続いているが、それでも食堂の方に人が集まりだしている。

サーガの実力を知ったなら、激しい獲得競争が始まるかもしれない。


「実力が突出し過ぎていても、面倒なものなんですね」


サララは溜息を吐きながら、また雑用を片付け始めた。


お読みいただきありがとうございます。

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