智里との交渉
天也は、頭の中で纏めると口火を切った。
「硬くならなくても宜しいぞ?智里よ。我は、武者修行の旅をしている身の上。平民の世を知りたいと思っておる。だから、貴族だからと恐れる必要は無いのだ」
ハラハラドキドキしながらも、智里の返事を待つ天也。これが吉と出るか凶と出るか…
「元服の儀で御座いますね。解りました。では、いつものアタイでいかせてもらうよ」
「それは重畳。こちらも砕けた言い方でしますね」
「それでも、丁寧語なんだね、アンタは」
天也は、掌で口を隠しながら笑む。
「そちらの方が角が立たなくて良いのではないでしょうか?先に礼を持ってすれば、相手も礼を返してくれると思っていますので」
「そうかい?アタイは、舐められるだけだと思うわよ」
「まあ、そう言う輩も少ないとは、言えませんな」
奇跡である。今までの会話でボロが出ていないことがだ。一歩ずつ目隠しの状態で綱渡りしている様なものである。これからが本番である。
「クズ野菜でも、良いから譲ってくれませんか?実は色々不幸な事故があって、持ち物を全て失ったのです」
「いいよ!」
「本当ですか!?」
「た・だ・し、、、、一日アンタを貰うよ」
天也の隠していた口角が引く着いた。