終章2 王宮に突入!
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「アーリア、神殿の中庭を突っ切って神王の寝室へ行って」
呪い祓いをしてもらうという名目で神殿へ入ると、ダニエレは中庭の小屋の中でアーリアの前で設計図を広げ、指でルートを教えていった。
「中庭は外庭より警備が手薄なんだ。神兵が油断している間に、一気に駆けていって、この神王の室まで行って」
忍び込むという易しい話ではなかった。
強行突破するのだ。
しかし、やるしかない。
「う、うんっ……でも」
「なぁに?」
「ダニエレが処分されたりしない?」
不安を口にすると、ダニエレがニッと微笑んだ。
「僕を処分できるかな?」
思っていたより強そうな口調で言うので、アーリアは不思議に思って彼を見つめる。
「百番目の天姫の遊戯を見事やり遂げ、閉神話の深い場所を知っている僕を、神殿がどう処分するのかな?」
「解雇したり、降格したりできるでしょ」
「解雇したら真実を知っているものを野放しにすることになるし、僕、一番の下っ端だからこれ以上の降格ってないと思うよ。まあ、閑職に追いやるぐらいはするだろうけど、僕にとってはあんまり問題じゃない」
平然と言ってのけ、彼は更に言葉を付け加える。
「暇になったら、誰かに相談して神王派でもつくったりするのもいいね。同じ志を持つ者を秘密裏に集めて、レオンを補佐するんだ」
「ダニエレは、そういうところが逞しいわよね」
「僕、アーリアより負けず嫌いかもよ?」
確かに、エンツォより、レオンより、アーリアより、ダニエレが一番強いかもしれない。
「どっちかというと、アーリアの方が大変じゃない? せっかく、神殿のお酒に選ばれたのに、全部が水の泡になるかも」
言われて、アーリアは「そうね」と呟いた。
「だけれど、今、この大変な時期に、レオンを一人ぼっちにしちゃいけないと思うの」
素直な心境を口にしてから、アーリアはちょっと苦笑いした。
「アウラート酒造だって、もう一回や二回は立て直せるわ。わたしって逆境には弱いけれど、イルマが側にいてくれるから、大丈夫だと思うの」
ダニエレは頷いてから、ポケットから一枚の瑞々しい葉を取り出した。レモンの葉だった。
「これをアーリアに。祈りを捧げているから、なにかのお守りになるかもしれない」
アーリアは葉を受け取ってエプロンのポケットに入れる。
そして二人は小屋から出た。
枯れ木達の向こう、かなり長い距離の先に神王の寝室がある。
剣を下げた神兵達がそれぞれの拠点を守り固めているが、アーリアの目には隙間が見える。
広域をカバーするために神兵の目は、人が忍び込みそうな戸や窓ばかり見ている。
まさか神官に導き入れられた女性が、神王の室を目指すとは思っていないのだろう。
(――行けるわ)
「アーリア、この国の未来は君にかかってるからね」
「……え?」
「さあ、行って」
ダニエレが、軽くアーリアの背を叩いた。
それが合図となって彼女は走り出した。
風のように、風にとけ込むように。
灰色のおばあさんの服があまりの速さで見えなくなるように。
虚をつかれた神兵が、大声でアーリアを怒鳴った。
だが、止まらない。
中庭の左右から次々と矢が飛んでくる。
しかし、矢は彼女の後方に刺さっていく。
(大丈夫、逃げ切れる)
中庭の木立に入り、せまり来る神兵を引き離し、前方の建物の、二階のベランダを目指した。
すると、彼女の前に弓を構えた神兵達が飛び出す。
「矢を放て!」
木々の幹に矢尻が刺さり、頬を矢羽根がかすめていった。




