6-2 見つけた星の輝き
ガラスの向こうが明るくなり、ゆらゆらと鈍く動く人影が見えた。
眼鏡をかけたクールオさんがランプを手にこちらへ向かってくる。
「朝っぱらからどうしたんだい、レオン」
戸を開けたクールオさんは起きているのが当たり前のように言った。
「……起きていたのか」
「私は朝の五時になったら起きるよ」
彼女は笑って、レオンを店の中へ招き入れた。
「髪飾りを作っていたんだよ。みんなが欲しい欲しいって言ってくれるから、急がないとね」
店の奥の作業スペースに向かう彼女をレオンは呼び止めた。
「カオスが見たいんだ。カオスを見せてくれ」
「あーあれね、ないよ」
「ない!」
確信のような気持ちを抱いて此処まで走ってきたのに、時間の無駄になってしまった。
「クールオさん、もう時間がないんだ。この街で一番の善人を捜している。いいや、欲のない人だ。誰かいないかっ」
早口で言うと、彼女は困ったような顔をした。
「なにか事情があるんだね?」
「アーリアが大変なんだ。死んじゃうかもしれない。だから欲がない者を探しているんだ」
気持ちが焦ってしまって上手く説明できないでいると、クールオさんは腕組みして作業机に座った。
彼女の横に、一枚の紙が置かれている。
紙にはインクで書かれた花の髪飾りの絵が描かれてあった。
レオンが買った髪飾りの図だった。
クールオさんは、図を寂しげに撫でてからレオンを見た。
「あんたとアーリアが幸せになれるようにと、精霊に守られるようにと、特別な髪飾りを作ったのに……怖いことが起きているんだね」
あまりに哀しそうに言うので、レオンは疑問に思って口を開いた。
「特別な?」
「レオンがいろいろな事情を抱えているのも、アーリアが会社のことで大変なのも、全部知っていたからさ……効果があるかもと思って、髪飾りに――」
そこで少し躊躇ってから、彼女は再び口を開く。
「――カオスを入れたんだ」
ズボンのポケットから感じるのは、清浄な神殿の気。
だが、それは、神殿で祈りを捧げた綿や、カオス入りの紙吹雪が入っているからだと思い込んでいた。
レオンはズボンのポケットに手を入れて、紙吹雪にまみれた髪飾りを取り出した。
絹の三つの花が並んだ髪飾り、中心の花の花心がぼんやりと蒼く光っている。
「まさか……」
レオンは机の上のはさみを取り出した。
「ごめん」
そう言って、花心にはさみを入れると、綿の中から蒼く輝く宝石が顔を出す。
「四角い宝石……カオスじゃないわ」
クールオさんが驚きの声を上げた。
「ありがとう、クールオさん。俺は、これを探していたんだ」
星を掴むと、長剣のような光の帯が何本も出て部屋中を照らした。
光は、窓を超えて路地へ流れ出る。
クールオさんが小さな声を漏らしてから「綺麗」と呟いた。
「ずっと、俺が持っていたなんて」
レオンは神王の星を握りしめて、店を飛び出す。
「よく分からないけど、頑張って!」
クールオさんが、レオンの背に声援を送ってくれた。
彼女の期待に応えるべく、彼は勢いよく足を動かしていく。
両足の筋肉は腫れていて、奥から鈍痛が響いてくる。
だが、止まるわけにはいかない。
愛しい人が愛する国。
そして己自身も愛するようになった国を守りたい。




