表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】その乙女は妃にと望まれる 〜じれじれ初恋と王座の精霊ファンタジー開幕!!〜  作者: 前田留依


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/64

4-5 呪い祓いと近づく終わり

「お前達のような、ガキの遊びに付き合っているひまはない」

「我々の話を信じないのですか。信じなくても結構。だが、現に、宝石泥棒はきりのように人々の前から消えている。今回の事件は、不思議だらけなのをお忘れなく」


 おおぼらなのかまことなのか、判断ができない境目さかいめをエンツォは渡っていく。


「アーリアのひたいの石をご覧なさい。内側から光を放って輝いている。こんな石、今まで見たことがありますか?」


 エンツォがアーリアの額を指さし、所長が脂臭い息を吐きながら顔を近づけてきた。


「まあ、光っている……な。火もともっていないのに」

「原理は、宝石泥棒を捕まえたら解ると思われます。多分、あなたがたより、我々は宝石泥棒に詳しいはずです」

「なにを言う!」


 エンツォの一言で、所長が瞬時に怒りをわかせる。


「警察では、宝石泥棒が、どういう理由でカオスがある家を狙っているか分かりますか?」


 所長が黙ると、エンツォは小さく笑った。


「今の彼は、善人の家ばかり狙っているのです」

「しかし、一昨日はマフィアの家でも宝石泥棒騒動があったと聞いている」


 所長が言い返すと、エンツォは安心させる為にアーリアの頭を軽く叩く。


「今は、と言っています。標的が善人の家に絞られたのです。信じないなら、今日、宝石泥棒があった家を並べてみてください。絶対、善人の家にしか忍び込んでいませんから」


 エンツォの歯切れの良い言葉に所長は押されたのか、暫し黙った。


「おい、お前ら。今日、被害にあった家をリストアップしてこい」

「はいっ」


 取調室から警官達が急いで出て行く。


「今年カオスを購入した善人を捜して、カオスが無事なのか確認してください。これによって被害ひがいが防げるでしょう。私達は、あなたたちより一歩踏み込んで調査します」

「――次に違法な動きをしているのを見つけたら、必ず逮捕する」


 言い捨てて、所長も取調室からバタンと出て行く。

 室内が急にしんとして、アーリアは瞬きして、身をかがめさせてきたエンツォを見た。


「もう大丈夫だよ」


 真実と嘘をないぜにして、都合良く警察を動かしたエンツォが笑う。


「今、ダニエレが呪いばらいをしてくれるから」


(――呪いばらい……。ああ、神殿で年に一回やってもらう儀式だ)


 アーリアはぼぉっとしている頭の中で思った。

 ダニエレはレモンの葉をアーリアの唇にはさみ、レモンの枝でアーリアの身体を叩いていく。

 叩かれる度に、少しずつ身体の重りが消えていくような気がした。


「一に北の星の輝力、二に南の星の輝力によって、この者の呪いを祓う」


 ダニエレがレモンの枝をアーリアの頭の上で動かしながら祓えの言葉を唱えていく。


「海の大渦の奥へこの者の罪悪を流し、また山の風によってこの者を清めたまえ。天命を宿す星の輝き、この者の頭上に降り、明るき未来へ誘い給え」


 朗々と唱えられる言葉によって、身体が楽になっていく。

 腕のこわばりが抜け、肩が軽くなり、首を上げられるようになる。

 背骨に張り付いていた重りが消え失せ、上半身を上げられるようになる。


「星神よ、この者を良き方へ導きたまえ!」


 バサっとレモンの木の枝が、アーリアの頭に降りた。

 枝から水のしたたりに似た清涼な風が生まれ、全身を撫でていく。

 身体に溜まった怠さが、頭から足の底へ、そこから床へ向かって流れ落ちていった。


「……はぁ」


 アーリアは大きく息をつき、そして思いっきり空気を吸い込んだ。

 消え失せていた力が、全身にみなぎるのが分かる。

 ぎゅっと手を握り、強くまばたきし、ぶんっと頭を振った。

 それまで動かなかった肉体が、意志のままに機能する。


「――ありがと、二人とも」


 はっきりとした声でエンツォとダニエレに礼をする。


「それとダニエレ」


 アーリアは軽くなった腕を伸ばして、レモンの枝を持って微笑んでいるダニエレの服のそでを掴んだ。


「この前、神様がいないなんて言ってごめんなさい」

「気にしてないよ」


 ダニエレはくすっと笑ってからアーリアに明るい光で満ちた目を向けた。


「だって、わたし……動けるようになっているし……神様はいるんだわ」


 そう言うと、ダニエレは僅かに微笑みを消す。


「たんに精霊の呪いを祓っただけだよ」


 そして軽く唇を舐めてから、


「神様に頼りすぎるといけないと思うけどね。だって神様の力が何にでも効くとは思えないし、もしかしたら神様だってさぼるかもしれないし、神様にだって見落としがあるかもしれない」


 と神官らしからぬことを言って、彼はアーリアの手を掴んだ。


「だけど、今回だけは味方してくれたみたいだ。アーリアが無事で良かった」


 握手をしあってから、アーリアはダニエレの手を離した。


「私の家へ行って、うちのカオスを見よう。一応、私の家も善人の家だからね」

 エンツォの提案にアーリアとダニエレは頷く。

エンツォは懐中時計かいちゅうどけいを開けて時間を確認している。


「……もう四時半か。日の出まで……あと二時間半ぐらいだな」


 精霊遊戯せいれいゆうぎの終わりが近づいていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ