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【完結】その乙女は妃にと望まれる 〜じれじれ初恋と王座の精霊ファンタジー開幕!!〜  作者: 前田留依


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3-8 危機回避のための危機

「郵便局長、どこに行ったんだ」


 レオンが苦虫をかみつぶしたような顔になる。


「祭りを見に行ったか、寝ちゃったのか、どっちかだろうね」


 郵便局長の家は、普通の家の三軒分ぐらいありそうなほど大きかった。

 ドアノックの音が隅まで聞こえないのかもしれない。


 カンカンカン、カンカンカン!

 

 エンツォが二十回目のノックをしてから溜息をつき、レオンを見た。

 重なり合うオリーブの葉の下でレオンはエンツォの視線を受け止め、小さく頷く。


「ちょっと行ってくる」

「どこへ?」


 アーリアは咄嗟とっさにレオンの服を掴んだ。


「屋敷に人がいるかどうか、庭から確認する。ここには何度も来ているから、家の構造は分かっている」

「……う、うん」


 玄関の横のこんもりとした垣根かきねを跳び越え、レオンは庭へと入っていく。


「誰もいなかったら忍び込むしかないね」


 アーリアと同じ方向を見ていたエンツォが最悪の考えを口に出した。


「それ……は、問題があるわ。気がとがめるし、悪いことにみんなを巻き込みたくないわ」

「自分は儀式を勝手に見に行くくせに」


 笑いながらダニエレが言う。


「外から見るのと、中から見るのじゃ、悪いことの度合いが違うわよっ」


 ムキになって言い返すと、エンツォがアーリアの唇を人差し指で押さえた。


「声が大きいよ。侵入する前に誰かに声を聞かれたらまずいからね」

「……だけど、エンツォ」


 アーリアは他に手だてがないのかと彼に聞こうとした。

 だけれど、エンツォはもう頭の中で全てを決めてしまったような涼しい表情をしている。


「私たちは、君を守りたい」


 父のような優しい声でエンツォが言って、アーリアの唇から人差し指を離す。


「アーリアを死なせるわけにはいかない。どんな手段でもとってみせる」


 そして、彼はポケットから針金のような細い金属を二種類取り出した。


「大丈夫、大丈夫。なーんも、怖いことなんてないから」


 今、怖いのは、何かを企んでいるような顔のエンツォだった。


「そ、その金属棒は何?」

「家の倉庫を開ける時に使っている小道具だよ」

「……鍵には見えないわ」

「アーリア、錠は必ず鍵で開けるとは決まっていない」


 ふっふっふっと笑うエンツォの後ろで、ダニエレがランタンを手に鍵穴をのぞき込んでいる。


「あー、これなら三秒でエンツォ開けられそう」

「穴覗いただけで、そんなことが分かるの!」

「アーリア君、静粛せいしゅくに」


 エンツォが二種類の金属を手にして不適に微笑む。


「私は、家が廃業になったらこの特技を生かして怪盗エンツォになろうと思っていたところなんだよ」

「あなたの家は廃業にならないと思うし、どうしてそんな特技を身につけたのかも理解不能だわ」

「うちの倉庫には、世間に知られてはいけない幻の何とか本が沢山あってね。読みたいってせがんでも両親は倉庫を開けてくれないから――鍵師かぎしの本を手に入れたんだよ」

「……また、作り話よね?」


 疑ってアーリアが訊ねると、ダニエレが首を横に振った。


「これは本当。僕、エンツォが倉庫の鍵を開けるところ見たことがあるもん。あのデカイ倉庫の鍵を三個、立て続けに開けていったよ。それに僕が家の鍵をなくした時、開けてくれたもの」


 幼なじみの裏の一面を知り、アーリアは何とも言えない気分になる。


「まるで凄腕すごうでの鍵師みたいだった」


 ダニエレが言った時に、レオンが垣根を跳び越えて戻ってきた。


「凄腕の鍵師ってより、凄腕の泥棒だろ」


 会話が聞こえていたのか、レオンがぼそりと言う。


「まさか、泥棒しているのっ」


 お金に不自由していないはずのエンツォを見ると、彼は苦笑した。


「神殿で隔離かくりされている禁書を勝手に読んでいるだけだよ」

「……えっと、実害がないから良いわ」

「良くないだろ。俺に会いに来たふりをして、禁断の区域に入ろうとするんだから」


 レオンがすかさず突っ込みをいれる。


「エンツォ、特技は閉まっておけ」


 意外なことを言ってレオンがポケットをごそごそしだした。


「これ一枚あればいい」


 彼がポケットから出したのは一枚の金貨だ。


「……金貨をどうするの?」

「窓を割って、窓枠に置く」

「ちょっ!」


 大きな声を上げそうになったアーリアの口を、ダニエレが直ぐに押さえ込んだ。


「レオン、それは良い考えだよね」


 ダニエレがアーリアの口を塞いだまま言う。


「離してっ、何が良い考えなのよ……泥棒みたいじゃない」


 ダニエレの手を両手で叩き落としてアーリアが責めると、ニッとレオンが笑った。


「泥棒になるんだ。宝石泥棒に」

「……なんで?」


 仲間達の考えが読めず、アーリアは二度大きく瞬きした。


「宝石泥棒の真似をして、窓を割って侵入し、金貨を置いていくんだ」

「いけないことだわ。それに、あなた達が宝石泥棒だって誤解ごかいされてしまうわ」


 アーリアが言うとダニエレが「でもね」と口を挟んだ。


「本物の宝石泥棒も今、カオスを探しているから警察はバタバタすると思うよ」


 彼の言葉にレオンが頷く。


「今夜、頻繁に事件が起きれば、宝石泥棒を警察達は血眼ちまなこになって捜す。彼の動きを封じられれば、彼を捕まえることができれば、彼に天姫の星を取ってもらえるかもしれない」


 レオンが言っていることは、かなり危ない手段ではないだろうか。


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