2-11 守りたいという想い
レオンは祭りの『星』について語りはじめた。
「天姫の星は、一番欲深い者の元に降りる。つまり悪人。それとは逆に、神王の星は、一番欲がない者の所に降りると言われている。ようするに善人だと伝えられている」
みんなにも分かりやすいように話してくれたが、それでも大きな問題があった。
「善人なんてどうやって探るのさ。街の噂? 近所の評判?」
ダニエレがつっこんで聞くとレオンは少し考え込んだ。
「……方法がないことはないね」
エンツォがダニエレの手から精霊祭のチラシを奪って眺める。
「私の家は孤児と貧困の慈善団体を主催しているのだけど、そこに寄付してくれる人達とカオスの帳簿を見比べたら絞り込める」
エンツォの提案に、アーリアはやっと肩の力をおろした。
「そうね、エンツォの家はアリキート国で唯一の慈善団体を運営してるものね。善人なら寄付をしているかもしれないわ」
光明が見えたような気がしたが、目の前にいるレオンの表情は険しいままだ。
「神王の星を探す刻限は、夜明けまでだ」
「それじゃあ、明日の朝までってこと?」
アーリアが聞くと、レオンが固い動作で頷いた。
「しかも、それまで気配を発しない……つまり光らない。だからカオスの形が変わったか見せてもらうしかないが――。祭りで人が家にいない可能性があるし。もう一つ、困った点がある」
続けて言う前に、レオンはアーリアから少し目をそらした。
「カオスを見たらお守りとしての効力を失う、という俗説を信じている人が多い」
その時、花火の上がる音が聞こえた。
商店街の方から人々の歓声が聞こえる。
花火の始まりは、八時からだ。
星を付けられてから一時間も経っている……。
「もうこんな時間か……。そろそろ精霊達が動き始めて、天姫の邪魔をする時間だ」
アーリアは、右手の人差し指に体温を感じた。
見ると、レオンの手が指先を握りしめていた。
だけど、それはほんの一瞬だけ。
レオンの手がそろりと離れていく。
彼の爪が第二関節から第一関節に滑っていき、爪に当たって遠ざかった。
指を包んでいた体温が消え、アーリアは声をかけられてもいないのに食い入るようにレオンを見つめる。
今のは友達の触れ方ではないような気がした。
「アーリア、泣くなよ。全部すんだ後に、俺が側にいるから、そん時に泣け。分かったな、バカ」
レオンのきつめの声がさくっと心の中の悲しみを斬る。
アーリアは奥歯を噛みしめた。
(そうだ、泣いている場合じゃない)
頭の中に浮かぶのは、久しく見てないイルマの笑顔だ。
再び、彼女の笑顔を見るためにアーリアは頑張らなくちゃいけないのだ。
(――守りたいの)
大切な、大切な、イルマの為に……生きていたかった。




