表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
優等生だった子爵令嬢は、恋を知りたい。~六人目の子供ができたので離縁します~【コミック1巻発売中】  作者: 完菜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/39

028 騒動

若干の無理やり的な要素を含みます。

嫌いな方は、ご注意下さい。

 エディーが部屋を出て行った後は、レーヴィーもセレスティーヌもセシーリアも話し合いを続ける気になれず解散になった。


 セレスティーヌは、疲れてしまった。夕食を食べると、早い時間に自分の部屋に戻ってゆっくりする事にする。

 夕飯に、エディーは現れなかったがそっとしておいた。


 セレスティーヌは、眠る気になれずに本を読んでいると扉をノックする音が聞こえる。


「はい?」


 セレスティーヌが返事をする。


「少し、いいだろうか?」


 声の主は、エディーだった。こんな時間に何の用だろうと、セレスティーヌは訝しみながら、座っていた椅子に掛けてあった上着を着こむ。


 扉を開けた。


 開けた瞬間、エディーが体を部屋の中に滑り込ませる。


「ブランシェット公爵様、勝手に部屋に入られては困ります」


 セレスティーヌはびっくりする。だが、セレスティーヌの言葉を聞いていないのか、エディーがセレスティーヌの両腕を掴んで迫って来た。


「セレスティーヌ、やはりもう一度やり直したいんだ。一晩一緒に過ごせば、分かり合えると思うんだ。だって、私達は何も始まっていなかったじゃないか。異性として通じれば、きっと違う関係になれるはずだよ」


 セレスティーヌは、何を言われているのか理解出来なかった。ただ分かるのは、嫌悪感のみ。

 勝手に部屋に入って来て、意味の分からない事を捲し立てるエディーに恐怖を覚えた。


「止めて下さい。そんな事しても意味なんかありません」


 セレスティーヌが必死に抵抗して、腕を離して貰おうと振り払うがびくともしない。


「そんなのやってみないと分からないじゃないか」


 そう言って、エディーにセレスティーヌは抱え上げられベッドの方に運ばれてしまう。セレスティーヌが必死に抵抗して、降ろしてもらおうともがくが男の人の力に敵わない。


「旦那様、本当に止めて! 人を呼びますよ!」


 セレスティーヌをベッドに降ろすと、エディーが上に覆いかぶさって来た。セレスティーヌは、何とかヘッド部分に後ずさる。

 エディーが、止めてくれる気配がなくどんどんセレスティーヌの方に迫ってくる。


「ねえ、セレスティーヌ。僕は、これが一番平和な解決策だと思うんだ。帰って来て欲しいんだよ。お願いだよ」


 そう言って、セレスティーヌの顔にエディーの顔が近づいて来る。耐えきれなくなったセレスティーヌは、エディーの頬目掛けて力の限り手を振るった。


 ッッバッチーン!!


「いい加減にして!! 私を何だと思っているの! 私は、貴方のおもり役でも母親の代わりでもない!」


 そう言い放つと、叩かれた事に驚愕したのか言われた言葉に衝撃を受けたのか、エディーが頬を押さえながら放心してしまった。

 その隙に、セレスティーヌが、サイドテーブルに置いてあるベルを鳴らす。


 するとすぐに、侍女のカミラが駆けつけてくれた。


「奥様、如何なさいました?」


 扉を開けて入って来たカミラは、言葉を発しながらセレスティーヌの目の前にいるエディーを見ると驚きを露わにした。


「カミラ、お願い。誰かすぐに呼んで来て!」


 カミラは、異常を察して分かりましたと答えると、踵を返して誰かを呼びに行った。


 セレスティーヌが、エディーに視線を戻すと涙を流して泣いていた。


「だって……。もうどうしていいか分からないんだ。セレスティーヌしか、僕を助けてくれる人がいないんだよ」


 エディーが縋る様な眼差しで、セレスティーヌを見ている。その瞳を見たセレスティーヌは、沸々と怒りが沸き上がる。


「旦那様は、今まで嫌な事からずっと逃げて生きて来たんです。好きな事だけして。でも人生って殆どは、嫌いな事、やりたくない事から出来ているんです。みんなそれを必死でこなしながら生きてて。時にそれが実を結ぶ瞬間があって、そこに幸せを感じるものなんです。旦那様は、誰かにいつまでも頼らないで、自分の力で何とかする事を覚えて下さい!」


 セレスティーヌが、今までずっと思っていた事をぶつける。


「そんな事言われても、僕には無理なんだよ。そんな事出来ないよ」


 この期に及んで、弱気な事ばかり吐くエディーに怒りが爆発する。


 バシン!!


 エディーの頬をもう一度、叩く。


「出来る出来ないじゃない! やるかやらないかなんです! やったらやった様に、出来るんです。そうやって積み重ねて、大人になっていくの。私はずっとそうやってきたの。軽々しく、出来ないなんて口にしないで!」


 セレスティーヌの握りしめている拳が、感情が高まり過ぎて震えている。目には涙が浮かんでいた。


 バタバタバタと、誰かが駆けて来る。


「母上!」


 部屋に駆け込んで来たのは、レーヴィーだった。レーヴィーももう、寝る準備をしていたのかとてもラフな格好だ。


「レーヴィー、悪いんだけどこの人を部屋に連れて行って。それで今日はもう、部屋から出ないように誰かに監視させて」


 セレスティーヌは、落ち着こうと必死で感情を抑える。

 部屋に入って来たレーヴィーは、珍しく驚いた表情をしていた。父親は、母親のベッドの上で頬を赤く腫らして涙を流している。

 母親は、目に涙を浮かべながら興奮を収めようと肩で息をしていた。


「父上、何をしているんですか! こんな事を許した覚えはありません!」


 レーヴィーが、父親に近づいてベッドから降りる様に促す。

 エディーは、セレスティーヌに言われた事が分かったのか分からなかったのか、表情からは察する事は出来なかった。

 ただ、ボロボロと涙を零して泣き続けていた。


 それでも、もう観念したのか大人しくレーヴィーに従ってベッドから降りて扉に向かって歩く。

 扉の前まで行くと、ゆっくりと振り返りセレスティーヌを見て言った。


「セレスティーヌ、悪かったね」


 それだけ言うと、大人しく部屋から出て行った。


「母上、大丈夫ですか?」


 レーヴィーが、セレスティーヌを気遣わしげに見やる。


「大丈夫。ここは良いから、お父様について行って」


 セレスティーヌが、レーヴィーにお願いする。レーヴィーは、心配そうにしながらも父親の出て行った後を追って行った。


 それとすれ違いに、カミラが部屋に入ってくる。


「奥様、大丈夫ですか?」


 カミラが、憤悶の表情を浮かべている。


「大丈夫よ。大丈夫。レーヴィーを呼んで来てくれてありがとう」


 セレスティーヌは、上着の胸元を握りしめながら呟いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

「優等生だった子爵令嬢は、恋を知りたい」二巻


発売日 5月10日(金) 

itm795cwbzsu61s3fm81jsl94g8h_var_yu_1ag_80dg.jpg

「優等生だった子爵令嬢は、恋を知りたい」一巻


好評発売中 

itm795cwbzsu61s3fm81jsl94g8h_var_yu_1ag_80dg.jpg
― 新着の感想 ―
[一言] 「出来る出来ないじゃない! やるかやらないかなんです! やったらやった様に、出来るんです。そうやって積み重ねて、大人になっていくの。私はずっとそうやってきたの。軽々しく、出来ないなんて口にし…
[一言] ランキングで作品に気付いて読み始めました。 主人公の優等生ぶりに圧倒されたり、枷から解き放たれた解放感を追体験したり、優等生の仮面が外れる瞬間に周囲と慄いたり…などなど考え考えしながら読んで…
[良い点] セレスティーヌもエヴァルドも落ち着いた誠実な人間として描かれていて非常に魅力的です これからも楽しみにさせていただきます [一言] エディー序盤の方では憎めないクズって感じで嫌いじゃなかっ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ