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おとこが先か、おねぇが先か

作者: 古境幻

「お客なんて珍しい。」


 耳障りの良い声の方へ振り向く。

見目麗しい女が、華奢な体に不相応な大きな玉座に座っていた。

傍には屈強な男が、彼の大事な物を壊しただろうか?と考える程の鋭い視線を向ける。どこか見覚えがある。

「土足で入るなんて、許さない……と言いたい所だけど、幸の薄い私好みの顔に免じて許してあげる。」

…ありがたい事で。


 霧が徐々に晴れる感覚。その頭で、経緯を考える。

先程まで同僚に連れられ、二丁目のバーというやつに居たはず。そこのおねぇのママに、酔った俺は散々愚痴を吐いていた。その後の記憶は無いらしい。


……そう、ママだ。あの男への既視感。煌びやかなドレスやメイクではないが、あの体格にあの目つき。間違いなくママだ。

すると、こちらの俺好みの女は?こんな美人、忘れるだろうか。

「覚えてないの?」

首を縦に振る。

「まぁ酷い!私の唇を、あ…あんな強引に……奪っておいて……。」


 おっと。将棋でいえば、桂馬ぐらい予測不能な展開。

そんな楽しい事を忘れたと?何てこった。

女は手で顔を覆うが、細い指の間から、少し早い桜色の頬を覗かせた。口調とは裏腹、中身は乙女か。


……目線を滑らせる。

男が、巨躯を限界まで縮め、女と同じ仕草をしていた。太い指の間はビッシリ埋まっているが、茹蛸の様な耳は見えた。


 バーにいた俺は女にキスをし、その事で二人が顔を隠す。男に見覚えはあるが、ママの格好や口調は女に近い……。


何とも奇妙な仮説が頭を過ぎる。


「やっと気付いたの?そう。ここは私達ママの心の中。」



 ふむ。すると玉座は体を操る装置で、体は男だが、意識は女が操っていると。

「この子引っ込み思案だから、基本私が表なの。好みは私と同じで、あなたに釘付けみたいね。」

男、いや大きいママの顔が更に赤くなる。

苦労してるんだね……。


 謎が解けた所で、早く出たいのだが。

「入って来た時と同じ事をすれば?」

なるほど名案。では早速。

「さっきは不意を突かれたけど、次は情熱的にね?」

喜んで。


綺麗なママは顔を赤らめながらも立ち上がり、一歩一歩歩み寄る。後ろで大きいママが羨ましそうに見ている。

歩く度に解ける衣服。一糸纏わぬママが俺の前に佇む。

欲望に負け、視線を下げ…


………ここで教訓を一つ。

男はやはり男だし、おねぇもまたおねぇだ。例え心の中でも……。


今、俺は精神体のはずだが、魂が抜けそうになる。

引き締まった腕に硬く抱かれ、美しい顔が近付いた所で意識が遠のいた。



初めまして。

古境幻コサカイ ゲンと申します。

1,000文字って大変ですね。(笑)


まず、今回「おねぇ」という私からすると理解し切れていない存在をテーマにした為、その理解が及ばない所で不快に思われた方がいらっしゃったら、お詫び申し上げます。


今回のこのお話はコメディタッチで書かせていただきましたが、

裏テーマは少し哲学的です。


このお話では、身体的性別は男であるママの心の中が舞台です。

主人公は仮説を立てたとき、「体は男だが、心は女」と解釈しましたが、

後に「体も心も『おねぇ』」なのだと悟ります。


タイトルは「身体としての男が先に決定しその中におねぇという性が形成されるのか、それともおねぇという人格に男という身体が当てがわれたのか」という意味を込めています。


そもそも私は心自体に性別なんてないし、心と体は切り離せるものではないと思っている人間です。しかし、もし心と体が別個体で、心にも性別があるとしたらそれは男女なんて完結に分けられるものではなく、もっと複雑なものなのではないかと思います。そういう意味でタイトルには、精神側を「女」ではなく「おねぇ」という第3の「精神的性別」を当てました。

少し難しいですね。私も書いていてよく分からなくなりそうです。(笑)

でもまぁ、こんな答えのない問題をじっくり考えるのが好きだったりするので、皆さんにもそんな問題提起をしてみた次第です。


ところでこの主人公、結局最初にキスをしたのはおねぇだと言うことや、後ろの大きいママの反応が乙女な事をスルーしていて、相手がおねぇである事に全然気付かない。頭が回る様で回っていない、落ち着いている様で、欲に忠実で落ち着きがない。一貫性のない変な奴でした。

個人的には、この一貫性のなさに人間味を感じていて気に入っております。

皆さんはどうですか?


最後に、ここまでお読みいただいた方へ。

拙い文章にも根気強く付き合っていただき、誠にありがとうございました。

メリークリスマス!

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