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47 DAY2トンボ

そう言えば福岡空港はあの機体の試験飛行場でしたね。


 アスカの横をあざ笑うかのように通過してゆく、赤とんぼから放たれた三〇個の黒い何か。

 それはアスカが主翼に下げている増槽と同じ紡錘状で、後部には小型の安定翼が付いていた。


その形状から、この黒い何かは航空自衛隊の航空祭で展示され何度も見た、無誘導爆弾だと直感した。


「敵機直上! 急降下!」

《何!?》

《直上!?》

《空からの攻げ……ぎゃああぁぁぁ!》

《空爆だ! 散開し……ぐあはぁっ!》

《包囲されてるところに爆弾!?》

《被害甚大! 被害甚大!》

《直撃した連中がやられた!》

《鬼人どもが動き出したぞ!》

《迎撃だ! 迎撃しろ!》

《グオオォォオォォォ!》

《くそっ、こいつっ……》

《ギャギャギャギャギャ!》


 包囲され、身動きが取れず一塊になっているど真ん中に落とされた無誘導爆弾。


 爆発の範囲からそれほど大型ではない三〇kgクラスの物と思われるが、これだけランナー達が密集していればそんなことは関係なかった。

 直撃したものはアサルトアーマーでも即死判定を受け、爆発の有効範囲にいた者には至近弾となり、HPを大きく減らす。


 ランナー達の大損害を遠巻きに見ていたシーマンズ軍。

 空爆の効果を確認すると、満を持したかのように鬼人の軍団が包囲したランナー達目掛け突撃を開始した。


「あいつら……赤とんぼの爆撃を待ってたんだ!」


 包囲し、動きを止め、纏まったところに上から爆弾を落とす。

 何故そんな連携が取れているのかは分からないが、効果は見ての通りだ。

 ランナー達はいきなりの爆撃で混乱したところを鬼人に強襲され、もはや布陣も陣形もなく一方的に蹂躙されている。


 一方、爆撃を行った赤とんぼはと言えば、急降下爆撃を行った後一度離脱。

 旋回し再度ランナーたちの上空に戻って来ると、ホバリングで静止。

 細長い尾部の先を地上のランナー達へと向けた。


 その尾の先についていたのは円形に配置された複数の銃身。

 

「あれは……いけない!」


 地上を支援していたアスカはすぐに攻撃目標を赤とんぼに切り替える。


 赤とんぼの尾の先についているもの。

 それもアスカは見覚えがあった。


 無誘導爆弾と同じく、航空自衛隊の航空祭でデモ展示されていた、航空機用の機関銃。

 ガトリングガンだ。


 シュイィィン……ブオオオオオオオオオオオオオオオ!


 高速で連射され、光り輝く弾丸の軌跡はもはや実弾のレーザービーム。

 現実世界なら砲身が焼ける為数秒間しか連射できない筈のガトリングガンを、赤とんぼ達は御構い無しに撃ち続ける。

 

《ぎゃああぁぁぁ!》

《くそ、今度は何だ!》

《空からの銃撃!? 機銃掃射だ!》

《何だ、これは……ミニガンじゃねーか!》

《爆撃の時のダメージが……ぬわーッ!》

《こんな銃撃、盾でふせ……がはぁっ!》

《アサルトの盾の耐久が一瞬で溶けた!》

《メディック、メディックは生き残っていないのか!》

《こいつら、器用に鬼人連中はよけて掃射して来やが……わああぁぁぁ!》

《このままじゃ全滅しちまうぞ!》

《この戦場は……地獄だ……》


 圧倒的不利な状況に置かれたランナー達はみるみるその体力を減らしていった。

 爆撃で、機銃掃射で、鬼人との接近戦で……皆HPはみるみるうちに低下してゆく。

 もはや全滅は秒読み段階だった。


「このっ、よくも、よくもぉっ!」


 アスカは今だ機銃掃射を続ける赤とんぼに狙いを定め、射撃。

 空を飛んでいるとはいえ、空中でホバリングしている赤とんぼに攻撃を命中させることは容易かった。


 エルジアエの軽快な連射音が響き、放たれた光弾が赤とんぼに命中。

 すると数発当てただけで背中の翅が吹き飛び、炎を上げて墜落してゆく。


「こいつら、耐久がないの!?」

『アキアカネは攻撃機であり、空戦は得意としていません』

「火を噴いたのは? こいつら昆虫でしょう?」

『正確にはトンボを模した機械生命体。機蟲とも呼ばれます。』

「機械なの!? 見た目で騙された! でも、耐久が低いならっ!」


 アスカはエルジアエを仕舞い、ピエリスを構えると、次の赤とんぼへ向け射撃する。


 先のアームドウルフやアームドホースのイメージから、攻撃が通らないのではないかとエルジアエを使ったが装甲がないのであれば話は別。

 連射性に優れ、小回りの利くピエリスの方が扱いやすい。

 ピエリスの弾丸はしっかりと赤とんぼを捉え、火花のような被弾エフェクトを散らしながら爆発。


 赤とんぼはバラバラになり墜落しながら光の粒子になって消滅してゆく。


「よし、二つ目!」


 これなら何とかなる。

 多少数は多いが、この紙耐久ならどれだけいようと対処できる、とアスカが気を吐いたその瞬間。

 赤とんぼ達は急に機銃掃射を止め、戦域から離脱を開始した。

 

「引いていく?」

『残弾が尽きたと思われます』


 見れば先ほど赤とんぼ達が飛んでいった中央や東の方からも離脱する赤とんぼ達の姿が見える。


 その集団は示し合わせたかのように一塊になり、離脱してゆく。

 アスカはこれで取り合えずの脅威は去った、と息を吐く。

 が、ふと視線を上に上げたとき、その顔がみるみる青ざめていった。


「な、なんで……」


 そこにいたのはこちらへ向け雁行で編隊飛行する、一〇〇近い赤とんぼ達。

 

『敵、アキアカネ群第二波、来ます』

「ばっか野郎!!」


 あれの到達はこちらの敗北を意味する。


「アキアカネの第二波接近!」

《ファッ!?》

《アイエエエ!? 赤とんぼ!? 赤とんぼナンデ!?》

《お代わりなんていらねぇよ!》

《もうだめだぁ……おしまいだぁ……》

「リコリス1、迎撃します!」

《な……まて、リコリス1! 一人では危険だ!》


 アスカを止める通信を無視し、ポーションを使ってMPを回復。

 フライトユニットの出力を全開にし、一気に上昇する。


 地上への観測が出来なくなってしまうが、今優先するべきは上空から接近する赤とんぼの大群。

 それらは当然のごとく無誘導爆弾をぶら下げ、機銃掃射用の弾丸も満載しているはずだ。


「この……カトンボがぁ!!」


 再びエルジアエを取り出し、ピエリスとの二丁持ちで迎撃する。

 

 すれ違いざまに複数の赤とんぼを撃ち落とし、旋回して再攻撃。

 赤とんぼたちはアスカの攻撃を避けようとせず、目的地である海岸線に向かって真っすぐに飛ぶ。

 八つ、九つ、一〇と落としてゆくが、数が多く手が足りない。

 このままでは味方が全滅する、とアスカが歯を噛みしめた、その時。


『敵、急速接近。方位一五〇』

「えっ!?」


 アイビスが叫び、まだ赤とんぼの増援が来るのかと言われた方角を振り返る。


 そこに表示されていた敵表示は四つ。

 だが、それは赤とんぼではなかった。


「あ、あれは……」


 敵アイコンと共に表示された名称は『ギンヤンマ』と『オニヤンマ』。

 Δ型で飛行し、先頭とその両脇を固める三つがギンヤンマ、横に一つ外れた位置でオニヤンマが飛ぶ、いわゆるフィンガー・フォーと呼ばれる形でこちらへ向け飛行していた。


 ギンヤンマは赤とんぼよりも一回り大きく、緑の胸部に青い尾部。

 そこに黒いラインの入った、アスカも見た事のあるトンボだ。

 赤とんぼが無誘導爆弾を持っているのに対し、ギンヤンマは一丁の大きな銃を持っていた。

 それはロビンの持っていた汎用機関銃よりも厳つく、キスカの持っていた対物ライフルよりも大きな銃。


 そんなギンヤンマ三匹の横を飛ぶのが、オニヤンマだ。

 オニヤンマは赤とんぼより大きくなったギンヤンマよりもさらに大きく、全長は三m近くあるだろう。

 緑の複眼、黒い体に、所々に入った黄色い縦模様。

 日本最大のトンボとして有名な姿をゲームの中で忠実に再現されたオニヤンマは、足にギンヤンマと同じ大型の銃を二丁、左右に連結させた形で持っていた。


 そして、オニヤンマの種族名とは別に記載されていた文字が、アスカを絶望へと突き落す。


『黒い悪魔ブービー』


 空を飛行する、ネームドエネミーの名だった。



運営「色鮮やかな赤とんぼと四匹の蜻蛉が織りなす魅惑のカルテット」


ミニガン

 最大で毎秒100発と言うすさまじい連射速度を持ち、生身の人間に当たると痛みを感じる間もなく絶命することから『Painless gun』(無痛ガン)とも呼ばれるガトリング機関砲。

 実際の航空機はこれよりサイズの大きい『バルカン』を標準装備し、みんな大好きA-10に至っては艦船の近接防御火器システムにも使用される30mmガトリング機関砲『アヴェンジャー』を搭載している。

 映画ではよく生身の人間が持って使用しているが、本体重量で18kg、そこにバッテリーやら弾薬やらで総重量は100kgオーバー、さらに射撃反動も加わる為人が持って使用することは不可能。

 ミニガンが分からない、と言う方は映画ターミネー○ー2でT-800(シュワちゃん)がビルの上層階から地上の警察へ向けガトリングガンを連射しているシーンを思い出してほしい。アレがミニガンであり、撮影用に連射速度を落としている状態である。

 今回赤とんぼが使用したものは正規の毎分3000発程度の設定だが、数はアスカのいる周辺だけで30機相当。

 アサルトアーマーの盾が一瞬で溶けるのも納得だ。


ホバリング

 物体が何らかの作用で空中にとどまっている状態。

 ヘリコプターや虫、ハチドリなどが行うが、羽で得る揚力が自らの自重と重力を足した数値より大きくないと成立しないため、極めて高い難易度を誇る。


黒い悪魔ブービー

 ラーズグ〇ーズではなく、その元ネタ。

 ドイツ空軍エース『エーリヒ・ハルトマン』の二つ名。

 愛機の機首に黒いチューリップを描いたことから『黒い悪魔』として恐れられ、同僚からはその童顔から『ブービー』として愛された。


昨日は本当にたくさんの感想、評価、ブックマーク、誤字脱字報告等々ありがとうございました!

歴代一位の感想の数に、嬉しさのあまり高知空港から飛び立ってしまいそうです!

感想は何時でもお待ちしております。

ちょっと気になった事、聞いてみたい事、こんなエグゾアーマーが見たいなど、どんどん感想に寄せてください。

作者が泣いて喜びます。

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2021/01/23 16:56 退会済み
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