42 DAY2.G大破着底
本日は地上視点。
被弾した揚陸艦からお届けします。
揚陸艦艦尾部分に直撃した敵砲弾。
その一撃は今までで一番の被害と揺れを揚陸艦に与え、艦尾部分は大破。
アスカが発艦に使用した射出機も弾け飛び、海の藻屑と消えた。
<艦尾直撃弾。船体ダメージ一〇〇%。主機、作動停止。火災発生、航行不能>
アナウンスが流れるが、艦内はそれどころではない。
今まさにようやく上陸しようと士気を上げていたところにこの揺れと振動。
衝撃で転倒する者も多く、混乱を極めていた。
「いてぇ! おい、俺を踏まないでくれ!」
「みんな無事なの?」
「船が傾いてる!? 沈むのか!?」
「小隊を組んでる連中は人数確認を! 余裕のある小隊はソロの奴をフォローしてやってくれ!」
直撃の衝撃か船が傾き、船が進んでいる感じもない。
あとわずか数百メートルの位置にある海岸は果てしなく遠く感じ、このまま何もできずにやられるのかと皆が焦る中、更なる衝撃が揚陸艦を襲う。
「ぐっ、今の衝撃は……」
「今の衝撃は外からのもんじゃねぇ、中だ!」
<主機爆発。浸水発生。艦首門扉強制開放>
直撃弾により損傷した揚陸艦主機の爆発。
いきなり船が真っ二つになるという事態にはならなかったが、爆発により穴が開いてしまった揚陸艦は艦尾から浸水、傾斜し始める。
同時に艦首門扉が開き始め、日の光が艦内に差し込む。
その先に見えるのは、モンスター達が待ち構える砂浜と、依然煙で覆われているトーチカ郡だ。
「こうなったら仕方ねぇ、飛ぶぞ!」
「海岸線まで数百メートル、スラスターを吹かせば届く!」
「盾持ちアサルトが先陣だ。海岸からの攻撃を防げ!」
「アサルトの面目躍如だな。任せろ」
「よし、いくぞ!」
「くそったれ! この作戦の立案者、あとで覚えてろよ!」
意を決したランナー達は艦首が上を向き、ジャンプ台のようになった艦内から加速をかけ次々に飛び出してゆく。
スラスターの作動はフライトユニットと同じく使用中はMPを一定量消費し続けてしまう。
上陸するまでの数百メートル、数十秒間はスラスターを吹かし続けなければならず、上陸するためだけに大量のMP消費してしまうのは痛い。
それでもこのまま敵砲の的になるよりかはマシ、と沈みゆく揚陸艦から脱出。海岸へ向けジャンプする。
空中に飛び出し、不安定になっているランナー達を「待ってました」と言わんばかりに銃弾による熱烈歓迎で出迎えたのは、海岸線に巣くうモンスター達だ。
レイライフル、実弾、魔法攻撃、全てが空中にいるランナー達目掛け撃ち込まれる。
状況こそ違うが、形としては初日のエコーで起きたファルク達の撤退劇に近い。
あの時は離脱するファルク達を追うモンスターを他のランナーが迎え撃ち、殲滅したが、現在の状況は攻守が交代。
ランナー達が迎撃される側になっている。
「ものすごい弾幕だ! アサルト各員、しっかり耐えろよ!」
「一人やられた! くそ、空中じゃあ姿勢が……うわああぁぁぁぁ!」
「撃ち返そうとするな! 今は海岸にたどり着くことを考えればいい!」
「盾が持たない!」
「後続にも被害多数! これじゃあたどり着く前にやられちまうぞ!」
アサルトは元々その強襲の名のもと、重圧な装甲とHPを持つエグゾアーマーだ。
だが、こうも一方的に銃撃されては耐えられない。
一人、また一人と撃墜され、光の粒子になりながら墜落してゆく。
さらにその後方、アサルトアーマーに続いたストライカー、ソルジャーアーマーの被害はさらに甚大なものになる。
中には防御力をかなぐり捨て攻撃火力に振ったランナーもおり、そういった軽装甲なものから撃ち落とされてゆく。
海岸線までは道半ば。
このまま到達できないまま全滅かとも考えられたその時、海岸線で爆発が起きた。
モンスター達を撃破できるほどではないが、おかげで弾幕の厚みが減ったのは確かだ。
「爆発? 誰だ!?」
《こちらリコリス1、友軍の上陸を支援します!》
「リコリス1!」
「そうだ、俺達には空神様が付いてたんだ!」
《スモーク弾を使ってください! それで相手の目をつぶせます!》
「リコリス……天上の花か!」
エグゾアーマーの装備にはスモークグレネードの他に発煙弾を発射するスモークディスチャージャーがある。
決してメジャーな装備ではないが、これだけのランナーが居れば装備しているランナーも少なからず居るのだ。
そういった者が未だ迎撃を続ける海岸線のモンスター達へ向けスモーク弾を発射。
数発空中で撃ち落とされるが、その場合も空中に煙をまき散らし、海岸まで到達した弾はあたり一面を煙で覆いつくす。
モンスター達はそのほとんどが目視による照準であるため、煙による視界の遮断は極めて有効だった。
あれだけ厚みのあった弾幕は分散、照準も定まらなくなり、こちらの被害は劇的に減った。
「先鋒、海岸に到達!」
「止まるな! ムーブムーブムーブ!」
「好き放題撃ってくれたお礼をしてやるぜ!」
「倍返しだ!」
「この距離じゃ加農砲も迫撃砲も使えん! 接近戦で仕留めろ!」
弾幕を抜け、ようやく海岸に上陸したランナー達の士気は高い。
今まで散々嬲られた借りを返すと次々にモンスター達へ向け突撃してゆく。
ランナー達が上陸した地点は先のスモーク弾の連射により煙に覆われているが、戦闘の障害にはならない。
彼らのレーダーにはモンスターを示す赤い点がしっかりと表示され、視界にはモンスターを示すアイコンが映し出されているのだ。
これはアスカのセンサーブレードによる上空偵察の成果である。
センサーからのレーダー波はスモーク弾の煙程度では遮断されず、中にいるモンスター達をしっかりと捉え、位置情報を地上のランナー達に提供しているのだ。
「これだけの敵の数、狙いなんかいらねぇ、撃ちまくれ!」
「後続のソルジャーとストライカーも上陸した! 押し込むぞ!」
煙に紛れてソルジャーやストライカーが海岸線に到達。スナイパーとメディックがそれに続き、殿に少数のスカウトとトランスポート。
唯一スラスターを持っていないマジックは海上をホバー移動しながら魔法攻撃を行い、銃撃による被害を出しながらも海岸線に到達した。
スモーク弾の煙が立ち込める中、ついにユニフォームにおける本格的な戦闘が開始される。
数では圧倒的に不利なランナー側だが、煙の中においての接近戦では一方的とも言える状況だ。
敵を見つけては各個撃破し、戦線を押し上げる。
そんな上陸したランナー達を長距離射撃により支援するのは揚陸艦に残った面々だ。
大多数のランナー達が沈没すると騒ぎ、逃げるように飛び出していったのに対し、残ったランナー達は揚陸艦が完全に沈まないことを知っていた。
博多湾は日本海に接する陸繋島と岬により湾口部が狭く、湾内の波が緩やかで蓄積物が滞留しやすい。
そのため湾内は水深が浅く、もし揚陸艦が撃破されても沈没するような深さではないのだ。
このイベントがリアルの博多湾だと気付いたランナー達の中には、そういった地形的特徴を事前に調べ上げ、把握していた者も多かった。
もちろん、確証があったわけではない。
だが、揚陸艦が大破、浸水したときの艦内アナウンスは『沈没』という言葉を一回も発していない。
その事から、沈没することはないだろうと判断し、艦内に残ったのだ。
結果、揚陸艦は甲板部分を残し大破着底。
海岸までの数百メートルという距離はスナイパーアーマーの装備する銃火器では余裕で射程内であり、大破着底した揚陸艦は海上に浮かぶ絶好の射撃ポイントと化したのだ。
そうしているうちに後続の揚陸艦も海岸にたどり着く。
こちらも損害を受けているが、致命傷には至っておらず、勢いそのままに砂浜に乗り上げると、艦首門扉を解放する。
そこから待ってましたと言わんばかりにランナー達が次々と上陸し、第一陣のランナー達と合流する。
「後続の部隊が合流!」
「上陸地点に陣地を作れ! 加農砲と迫撃砲を使えるようにするんだ!」
「トランスポート、こっちだ!」
「敵も強い、無理はするんじゃねぇぞ!」
局所的に始まった戦闘は後続が上陸するたびにその範囲を広げ、すでに海岸線全域にまで広がっていた。
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嬉しさのあまり岡山空港から飛び立ってしまいそうです。
きびだんご!!!




