39 DAY2暗雲
本日二話更新。
一話目です。
戦闘が終了したのを確認すると、アスカはポータルの近くに着陸する。
島にはすでに数万人が上陸しているためポータル付近も人が多いのだが、なんとか場所を見つけてアプローチを開始。
それに気づいたランナー達も気を利かせ、場所を開けてくれたのだ。
「アスカ、お疲れさん」
「お疲れ様、アルバ。でも、私飛んでただけだよ?」
地上に降りたアスカを待っていたのは、アルバ達先鋒組だった。
今回に至ってはアスカはあまり攻撃を行っていない。
地上からの支援要請はアスカの変わりに味方の迫撃砲のチームに行ってもらったのだ。
これは火力として考えた場合、グレネードの投下や機銃掃射よりも迫撃砲の一撃の方が威力が高い為。
一発目で直撃とはいかないが、そこはアスカが弾着観測を行う事で精度を上げ、最終的に要請を受けた防御陣地は石器時代へと時間を戻している。
これを繰り返した結果、アスカは弾薬類を大きく節約できた。
ピエリスの弾薬は支給品があるが、グレネードは自前で用意しなければならない分お財布にも優しい。
「謙遜するな。アスカのおかげで迫撃砲や加農砲を持ち込めた。おかげで攻略も短時間で済んだ」
「そうなの?」
迫撃砲は大きな山なり弾道のため、弾着地点が分かりにくく、加農砲は展開に時間がかかるため腰を据えて構える事が出来る中・遠距離での射撃を余儀なくされる。
どちらも単独での使用は難しく、敵の位置と弾着地点、成果を教えてくれる優秀なスカウトが必要になるのだ。
「アスカのおかげで敵の位置はばっちり、弾着地点も教えてもらえるからな」
「まぁ、その為の装備だし……」
戦闘偵察型フライトアーマーの面目躍如である。
その後は一度編成、陣形を整理するという事で一時間ほどの休憩となった。
数万人規模の編成などどうするのか気になるが、そこは何やら方法があるという事なのでお任せする。
イベントマップにいると制限時間が減ってしまうので一度ログアウト。
夕食には早いので軽食、休憩を取ってから再ログイン。
ポータルでロミオに移動する。
「お、来たねぇ、アスカ」
ポータルの前でアスカを出迎えてくれたのはエグゾアーマーを身に付けたフランだ。
曰く、この島の南側に港湾施設がありそこから推測通りユニフォーム行きの船がアンロックされたのだという。
フランは土地勘のないアスカをそこまで案内するため、待っていてくれたのだ。
フランのありがたいお言葉に甘えて道案内をお願いする。
道ながらに周りを見れば、ロミオにはすでに休憩用の簡易施設や防御陣地などが作られ、拠点として機能し始めていた。
トランスポート達が一時間でやってくれたようだ。
移動に関してはアスカがアーマーを装備したフランにおぶってもらう形になっている。
フライトアーマーの地上歩行速度は装着していないときより少し早いというお察しレベル。
港に着くまで相当時間がかかってしまうため、ホバー移動しているフランにおんぶしてもらう方が手っ取り早いのだ。
こうしてたどり着いた南部の港。
そこにはすでにおなじみとなった大型の揚陸艦が接岸しており、艦首門扉を口のように大きく開け皆が乗りこむのを待っていた。
かなりの人で込み合う港。
揚陸艦に近付くだけでも大変そうなのだが。
「はいはーい、皆どいてー! リコリス1が通るよー」
「ちょ、ちょっと、フラン!?」
フランは減速することなく、アスカ、リコリス1の事を大声で叫びながら人だかりに突っ込んでゆく。
すると……。
「なに?」
「リコリス1?」
「あの背中の娘がそうなの?」
皆がフランとアスカの方を振り返り、注視する。
同時にその勢いから行先が揚陸艦であると察し、道を開けてくれたのだ。
その光景はモーゼが海を割るがごとく。
「リコリス1、また頼むぜ!」
「航空支援待ってるぞ!」
フランの背に乗りながら、周りからの声援にどうしていいかも分からず、やや引きつった笑みをこぼしつつ、アスカは揚陸艦に乗船。
揚陸艦はそこで丁度満員となったらしく、艦首門扉が重量感たっぷりに閉まり、港から出航した。
「お、時間通りだね」
「有限会社フランタクシーは時間厳守なのさぁ」
揚陸艦の中で待っていたのはファルクら見知った者達だ。
皆すでにエグゾアーマーを装備しているが、アスカは例によって未だ装備していない。
「ユニフォームに近付いたら発艦して、また観測と支援をしたらいいんだね?」
「うん。さっき同様、先制攻撃と陽動を頼むよ。それだけでこちらの被害は大分少なくなる」
ファルクと上陸作戦におけるアスカの役割を確認するが、基本的にロミオ攻略の時と変わりはない。
船の接岸に先駆けて発艦、周囲の敵の偵察と航空爆撃による陽動をかけ、味方の上陸の支援がアスカの主任務だ。
それまではとりあえず艦内待機という事で空いているスペースに移動。
フランやキスカと談笑していると、メラーナからメールが届く。
内容はアスカが今日はどの戦場に行くか聞いてくるもの。
アスカは少し悩んだ後、キスカに問う。
「ねぇ、キスカ。私のフレンドもこの作戦に参加してもいいかな?」
「うん、問題ないよ。むしろ是非にってお願いしたいくらい。敵の本拠地に殴りこむんだし、戦力は少しでも多い方が良いわ」
返答を聞いてアスカも笑みをこぼし、メラーナに返信。
ユニフォームへの上陸作戦へ参加していることと、メラーナ達も参戦可能であること。
そして、ロミオ南部の港から揚陸艦が出ていることを明記する。
返事もすぐに帰ってきて、ホロと共に四人で参加するとの事だ。
「ユニフォーム攻略、どのくらいの人が参加するの?」
「たぶん十万人くらいじゃないかな。私も含めたβテスターが主だって掲示板とかで募集かけたし」
「まぁ、それで十万って言うのは判断が分かれるとこだよねぇ」
「そうなの?」
「うん。やっぱり急ぎ過ぎだっていう意見もあって、そう考える人は参加してないみたいなの」
レイドイベントである以上、ある程度の人数はどうしても必要になる。
その為昨日から『明日、大掛かりな攻略をする』という情報は流していたのだ。
だが、作戦会議で決定した最終攻略地点ユニフォームに速攻を仕掛けるという物に異を唱える者も多く、作戦不参加を表明した。
多くはアスカ同様『台風なんか来るわけない』『他の拠点を落とさないまま最終地点は落とせるはずがない』という意見。
結果、集まった戦力は十万ほど。
初日同様十五万ほどを予定していたため、大幅な戦力減となる。
「つまり、戦力不足?」
「……そうとも言うわね」
そんな話は聞いていない、とキスカをじーっと見つめるが、彼女はそっぽを向いてアスカと視線を合わせようとしなかった。
「にゃはは、とりあえず、やれるだけやってみようぜぃ、アスカ」
「ま、私のアーマーは地上に味方がいないと意味がないし、しょうがないか」
知らされていない話ではあるが、気にしたところで仕方がない。
アスカはキスカを見るのをやめ、ふぅ、と息を吐く。
その横でキスカがほっと胸をなでおろしていたのをアスカは見逃さなかった。
「アスカ、そろそろ良いか?」
「あれ、もうそんな時間?」
「あぁ。ユニフォーム到着まであと五分ほどだ」
アルバに声をかけられ、周りを見れば皆準備を整え、艦首門扉の前に集合、上陸作戦開始に備えている。
「おっけー、じゃあ私も準備しないとね」
「発射装置はまた私が押してあげるよぉ」
ロミオ攻略の時同様、射出機へ向かい歩き出す。
後ろから数名ついてくる状況も同じだ。
大名行列になったような後続を横目で見ながら、甲板に続く階段に足をかけようとしたその時。
爆発音とともに船が大きく揺れた。
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嬉しさのあまり鳥取空港から飛び立ってしまいそうです!




