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38 DAY2ロミオ攻略戦

本日は二話更新。

この話は二話目になります。


 二日目のホクトベイ。

 初日より雲が多く感じるがそれでも青空の方の割合が多く、飛行、偵察には何の支障も無い良い天気だった。


 揚陸艦から発艦したアスカはすぐに拠点ポイントのあるロミオに到達。

 すでに高度はしっかりととり、ブレードセンサーも稼働済み。

 レーダーはすでに島全体を捉え、敵の配置もすべて割り出している。


 敵の数が一番多いのはやはりポータル周辺。

 この島の面積は約四㎢、一つの山がそのまま島になったような形をしているが、リアルでレジャー施設がある影響か所々で森が切り開かれ整地されている。

 ポータルはそんな整地され開けている場所にあり、その周辺をホブゴブリンが固めていた。


「敵は少ないわけじゃないけど、多いわけでもないね」

『攻撃を開始しますか?』

「うん、皆ももうすぐ到着するし、やっちゃおうか」


 アスカがファルクから頼まれたのは偵察と陽動。

 ロミオ周辺の敵をスカウトし、揚陸艦が接岸するタイミングでアスカが航空爆撃で注意を引き、海への警戒が薄くなったところで上陸したランナー達が強襲、一気に崩すという作戦だ。


 念のためファルクに攻撃の確認を行った後、アスカはインベントリからグレネードの投下を開始する。

 グレネードはまっすぐに落下し、ポータル周辺で炸裂。

 激しい煙と爆発音で周囲のモンスター達は一斉にアクティブ化し、すぐさま空に浮かぶアスカを見つけると、対空攻撃を行ってきた。


 だがそれは投石だったり単発式ライフルであり、シザースによる回避機動を取るアスカにはかすりもしない。


「まだまだ行くよ!」


 特に狙いを定めるでもなく、次々にグレネードを投下していく様はまさに絨毯爆撃。

 本来なら一度行えばそのまま過ぎ去っていくのだが、生憎アスカのインベントリにはまだまだたくさんのグレネードが蓄えられている。


 一度上空を通過した後、大きく旋回して反復攻撃。

 地上からは一方的に爆撃されるモンスター達の怒号が聞こえてきそうだ。


「よしよし、これで意識はみんな私に……って、なにあれ?」


 島にいるモンスター達がすべてアクティブ化し、アスカに狙いを定める中、ポータルから少し離れた場所の地面が数か所盛り上がっていた。

 その盛り上がりは止まることなく膨らみ続け、中から新たなモンスターが出現した。


「ストーンゴーレム!」


 ストーンゴーレムの出現はそれだけにとどまらず、赤い光を放つポータルからも次々に出現する。


「ストーンゴーレム確認! 数、約五〇〇〇! みんな、気を付けて!」

《ほう、防衛部隊か。面白い》


 ストーンゴーレムはロミオ防衛の要として配置されている。本来はランナー達がポータル付近まで攻め込んだ時に一斉に出現し、こちら側を混乱させる目的があったのだが、アスカの航空爆撃に反応し、陸上部隊が攻め込む前に出現してしまった。

 運営は今頃モニターの前で歯ぎしりしながら悔しがっているだろう。


 出現したストーンゴーレムは全てアスカをターゲットにしているらしく、周辺のモンスター達同様対空攻撃を行ってきた。

 ストーンゴーレムの対空攻撃手段は魔法【ストーンブラスト】。


 これは石つぶてをショットガンのように撃ち出す魔法攻撃で、本来は接近戦用だ。

 アスカのいる高度には届きもしない攻撃だが、五〇〇〇もの数から放たれるそれはなかなかの迫力を持っている。

 当然、強烈に張り巡らされた弾幕の前では投下したグレネードは弾着する前に全て撃ち落とされてしまう。


「あちゃー、私が出来るのはここまでかなぁ」


 十分に時間も稼ぎ、注意も引いた。

 これだけやれば大丈夫だろうという予測は、フランからの通信で裏付けられる。


《リコリス1、上陸したよぉ! ポイントを教えて!》

「フラン!」


 マップを見れば、すでに揚陸艦が次々と接岸しておりランナー達がポータルを目指し進軍していた。

 その中で、マジックアーマーを装備するフランが上陸してすることと言えば……


「ポイント……マーク!」

《初弾、いっくよー!》


 島の東、上陸地点がある方角から飛んできたのは複数の火の玉だ。

 その玉はアスカが指定した場所からかなり手前に弾着、爆発する。


 その場所にモンスターがいなかったわけではないが、被害はそれほど大きくない。


「直撃〇、至近弾二! 一〇〇mは東にズレたよ!」

《一〇〇mも!? あ、そうか、撃ち上げになるんだ》


 フランのいる海岸は海抜〇mの地点だが、ポータルがあるのは山の上部。

 海抜は一〇〇mを超えている。


 こうなると高低差により弾着地点が大きくズレる。


《おっけ、修正した! 皆、射角は伝達した通りで! いっくよー!》

「皆?」


 再び放たれる火の玉。

 だが、その数は一〇を超え、アスカが指定したポイント周辺に着弾。

 周囲を火の海にする。


「え、何今の?」

《ふふふ、見たか、これが我ら魔導特科小隊の力! 戦果はどうかなぁ?》

「すごいよ、直撃弾多数! そのまま効力射を続けて」

《よっしゃ、続けていくぞおまえらぁ!》


 次々に撃ち込まれる火の玉。

 火力も十分なその攻撃はホブゴブリンのライフルやストーンゴーレムのストーンブラストでは撃ち落とすことは叶わない。


 魔法防御力の高いストーンゴーレムにはあまり効いていないが、初期モンスターであるゴブリンやウルフには極めて有効であり、その数をどんどんと減らしてゆく。

 しかし……。


「直撃多数!」

《どう、数は減ってきた?》

「ゴブリンやウルフは減ってるけど、元の数が多すぎて」

《ぬぅ……》


 今はまだ戦闘が開始された直後。フラン達以外にも遠距離魔法攻撃を飛ばしているものは居るのだが、いかんせん敵の数が多すぎるのだ。

 敵の総数は約四〇〇〇〇。


 想定よりも多くなっているのに対し、こちらが上陸したのはまだ揚陸艦三隻分、一五〇〇〇だ。


《とりあえず削るだけ削ろう! ストーンゴーレムを避けて、敵が固まっているところを指定して!》

「了解!」


 数が減らないのならばと、フランはキルを取ることよりもダメージを与える事を優先。

 アスカのターゲットポイントに対し、やや拡散気味に放たれる魔法砲撃はただでさえ広い効果範囲をさらに広げ、大勢のモンスターを巻き込む大爆発を起こす。


 しかしモンスター達も馬鹿ではない。

 当初、空からの航空爆撃に加え、海岸線からの砲撃によりモンスター達はこれ以上なく混乱していた。

 それがどうだ、今では魔法防御力の高いストーンゴーレムが身を挺して火の玉を受け止め始めているのだ。


「うわ、ストーンゴーレムあんなことするんだ」

『モンスター達も自分の長所は理解しています。魔法砲撃に対して一番被害が少ないだろうと推定される行動を取っているのでしょう』


 自分を盾にし味方を守るその精神には感服するが、残念ながら敵である。


「ストーンゴーレムが魔法攻撃を防御し始めたよ! どうする?」

《こちらがもう着きます。任せてください》


 聞こえてきたのはファルクの声だった。

 その通信が切れた数分後、砲撃音が周囲に響く。

 見れば、防御姿勢を取っていたストーンゴーレムのうちの一体が倒されていた。

 それも、体に大きな穴をあけて。


 何事かと注視すると、一ヵ所で上がったはずの砲撃音が連続して聞こえ始め、そのたびにストーンゴーレムが倒されてゆく。

 それに続くようにモンスター達に降り注ぐ銃弾の雨と魔法攻撃。

 上陸した陸上部隊が木々の生い茂る山の斜面をようやく抜け、戦闘を開始したのだ。


「あの砲撃音は何? 銃の音じゃないよね」

『アサルトアーマーの三七㎜加農砲と推定』

「さ、三七㎜!?」

『TierⅢ背部収納の装備です。射撃時はその場で屈み、砲をショルダーマウントにして展開。射撃姿勢を取る必要がありますが、徹甲弾、榴弾、成形炸薬弾等の弾種変更が可能であり、並大抵では耐えきれません』

「それはそうだよ! 三七㎜って戦車が持ってる砲だよ!?」


 ストーンゴーレムが耐えきれない筈である。


 実はこの三七㎜加農砲、ランナー達の間では杭打機同様ロマン装備扱いだった。

 理由はその重さ故装備できるアーマーがアサルトに限定されるのに加え、装備すると機動力が大きく減少し、接近戦闘がほぼ不可能になってしまうため。

 挙句、せっかく持っていってもいざ使おうとすると背面に収納している砲を展開するのに時間がかかり、展開中はその場から動けない。

 さらには駐退機を持たない為射撃の反動がすさまじく、連射性も悪い。


 そんな使い勝手の悪い三七㎜加農砲だが、威力はお墨付き。

 当たればほとんどの敵を一撃で倒す超火力を持つ。


 先日の上陸作戦時、敵の防御陣地を崩すための火力が不足していたために持ってきたのであろう三七㎜加農砲は、降ってくる火の玉から味方を守ろうとその大きな体を盾にし、動かないでいるストーンゴーレムを倒すのには持ってこいだったのだ。



 銃撃を受けたモンスター達は銃弾の来る方向、ランナー達が潜む森へ向け突撃を開始。

 同時に森からも接近戦装備のランナー達が飛び出し、激突する。


《はっ、今さらこんな奴らに後れを取るかよ!》

《加農砲持ちは構わず撃ち続けろ! ストーンゴーレムを落とすんだ!》

《特科組がHPを削ってくれてる。いけるぞ!》


 前線部隊が戦闘を開始する。

 フラン達は支援のため後方陣地をターゲットに魔法攻撃を続けるが、高く撃ち上がる弾道故弾着地点に先回りされたストーンゴーレムに防御されてしまう。

 足が止まったストーンゴーレムは加農砲持ちが倒してくれるが、やはり敵の数が多すぎる。


 どうしたものかと考えていると、山の中から弾丸が高く撃ち上げられ、そのまま敵陣の中に落下し爆発した。

 

「今のは?」

『六〇㎜迫撃砲と推定』

「そ、そんなのまであるんだ……」


 迫撃砲は小型軽量の火砲である。

 アサルトアーマー専用の加農砲とは違い、射撃時の衝撃を地面に吸収させる仕組みの為、駐退機などの複雑な機構を必要とせず、携行性に優れ、ほぼすべてのアーマーで装備することが出来る強力な支援火器だ。

 現実世界であれば数人で運用するものだが、そこはゲーム。

 車砲同様一人で設置、射撃、装填ができるようになっている。


 弾道はフランの【ボルカニックバレット】と同じ山なり。

 ただし、こちらは一度に撃てるのは一発。火力も範囲も【ボルカニックバレット】には及ばない。

 だが、フランらマジックアーマーがMPが尽きたら攻撃できないのに対し、こちらは弾がある限りいつまででも打ち続けられ連射性も良好だ。


 最初、山の中から一発だけ放たれた迫撃砲は次第に数が増え、山のいたるところから放たれるようになっていた。

 おそらくスナイパーやトランスポートが持ち込んだのであろうそれは、敵陣に砲弾の雨となって降り注ぐ。

 

 敵のポップはすでに打ち止めらしく、ポータルや土の中から出てくる気配はない。

 ポータル付近は他の地点同様防御陣地が形成されているも、上から降ってくる魔法攻撃と迫撃砲には意味がなく確実にHPを減らされてゆく。


 モンスター達が砲撃により消耗して行く中、ランナー側は上陸地点に接岸した揚陸艦から次々と援軍として参戦。

 当初は数的不利だった状況も次第に五分に、そして気が付けばこちらが数で押し込む形になり、ストーンゴーレムの姿も見えなくなっていた。

 

<ロミオの拠点ポータルを確保しました>


 戦闘を開始してわずか数時間。

 ランナー達は大した被害も出さず、拠点を制圧したのだった。


 

たくさんの感想、評価、ブックマーク、誤字脱字報告ありがとうございます!

嬉しさのあまり松本空港から飛び立ってしまいそうです。

月間ランキング一位記念、明日も二話更新致します。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 大砲を担いだ人型兵器とかパワードスーツってロマンありますよね。 ロマンが長じて英国面に堕ちなきゃいいけど
[良い点] 魔導特科!特科ロマン!砲兵は戦場の女神!唱えよう魔法の言葉〈砲兵支援を要請する!〉 さすれば女神の加護があらんこと!(信仰深きモノ限定。尚女神の気まぐれもある模様 [気になる点] 37mm…
[一言] 37mm…37mm? 携行するには確かに大きいけども…戦車砲とかカノン砲としてはべらぼうに小さくないです? 対戦車砲になれるかどうかギリギリぐらいでは
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