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10 能力値上昇系アクセサリー

本日二話目更新。

忘れ去られていたあの人が再登場。


 バゼル港のポータルから移動したアスカは、さっそく露店市の方へ歩いて行く。

 いつもはフランへの納品のために訪れ、混雑時を避けているのだが、今はアクティブ率が高い時間帯。


 必然的に露店市も多くの人でにぎわっていた。


「うわぁ、いつもと違ってすごい人だね」

『今はピークタイムです。また、先のイベント告知もあり、素材、武器等の売買も盛んになっています』


 なるほど、道理で人が多い訳だ。

 とアスカもその波に飲まれながら目的のアクセサリを販売している露店を探す。


 数ある露店の中でも人気なのはやはり武器や追加兵装を販売している露店であり、次いで素材、ポーション類と続く。

 その中でアクセサリは人気が少なくやや不人気。


 それもそのはず『Blue Planet Online』ではアクセサリとは耐性を付けたり能力値を僅かに上昇させるための装備であり、優先順位が低いのだ。

 アスカがクリスからもらったMP+三%のように、HP+五%、魔法攻撃力+三%、麻痺耐性+一五%、スタン耐性+二〇%など、固定数値の上昇ではなく割合上昇となるのが最大の特徴で、ステータスよりも状態異常耐性の方が割合が高い。


 素材と製作者次第では強力なアクセサリも作れるが、現状ではまだそこまで上質な素材とスキルレベルのランナーは少なく、好んでアクセサリを求めるランナーは少ないのだ。


 当然、そんなアクセサリを専門に取り扱う露店は少なくいくつかの露店が他の商品と一緒にわずかに売っている程度。

 それもより上昇値が高いHPや防御力、状態異常耐性の物が多く、アスカが求めるMP増加系のアクセサリはなかなか見つからない。


「うーん、なかなか見つからないね」

『MP増加アクセサリは元のMP数値を基本とするため、効果が薄く人気がないのかもしれません』

「アクセサリは割合上昇だものね。初期の一〇〇くらいしかないMPで三%上がっても効果薄いから、皆HP増加のほうを買うよね……」


 そのまましばらく露店市をさまよい歩いていると、ある露店が目に留まった。

 アスカが気になったその露店は他同様、ポーション等の消耗品と一緒にアクセサリを売っていたのだが、アクセサリの割合が周りよりも大きかった。


 綺麗に棚に陳列され、太陽の光を浴びてキラキラ光る指輪やネックレスなどの見栄えの良さも加わり、フラフラとその露店に吸い寄せられてゆく。


「いらっしゃい。あれ、アスカじゃないか。ようやく見に来てくれたんだ」

「あなたは……スコップ?」

「さては僕の事忘れてたね? うん、アスカに失敗作の動力結晶を買ってもらった、スコップだよ」


 アスカが吸い寄せられた露店、その店主は以前アスカに動力結晶を売ってくれたスコップだった。

 前回あった時からはすでに結構な日数が経過し、その時の内容もうろ覚えではあるが、『またお店を出すから見に来て』や『見に行きますね』と言った会話をした覚えが記憶の片隅にある。


 話を聞けば、スコップは手先が器用で【錬金】と【細工】のスキルを駆使して資金稼ぎをしているとのこと。

 動力結晶の時以降会わなかったのはやはり時間帯の関係で、彼はいつも人の多いこの時間帯に店を出すのに対し、アスカがここに来るのはいつも人の少ない時間帯だったためだ。


 そんなアスカにどうしてこの時間帯に? と問うスコップ。

 

「MPを増加させるアクセサリが欲しくって」

「MPって、まだ上げるつもりなのかい?」

「どういうこと?」

「僕もあの掲示板読んだから。五〇〇以上でしょ? 今の総MP量」


 アスカが掲示板に上げた動画がアスカが去った後もかなり話題になり、再生数もかなりの数になっている。

 スコップも動画を視聴したランナーの一人であり、その後の書き込みも読んでいたのだ。


「でも、それだけあるなら%の低いMP増加のアクセサリでも効果が出てくるよね」


 そう言いながら、店頭の棚ではなく後ろに置いてあった鞄からアクセサリを取り出し、アスカに見せる。


「僕の所だとこの二つだよ。結構自信作なんだけど、やっぱり買い手がなくってさ」



[アクセサリ]シルバーピアス TierⅠ


 銀に魔石の粒子を混ぜ込みんだ魔銀を使い製作したピアス。

  最大MP+2%



[アクセサリ]アメジストネックレス TierⅢ


 紫水晶をペンダントトップにしたネックレス。チェーンは魔銀であり、宝石と相性が良い。

  最大MP+5%



 シルバーピアスはリング状をしたオーソドックスなピアス、アメジストネックレスは小ぶりな丸い紫水晶にフックを付けチェーンに通しただけという、こちらもシンプルなデザインのネックレスだった。


「う~ん、微妙?」

「いや~、本職でもない限りこれ以上の物は現状では無理だよ」


 他の能力上昇系が魔物がドロップする牙やツノの素材を使うのに対し、MP増加用アクセサリが求めるのは宝石と魔石だ。


 宝石は【細工】スキルを駆使し研磨する必要があり、魔石は【錬金】スキルで砕いて金属に混ぜ込み、魔銀等の合金としなければいけない為、難易度が高い。

 だが、それだけ手間暇をかけて製作しても現状では+一~五%の上昇がせいぜいであり、実用的とは言い難かった。


「値段はピアスが一〇〇〇ジル、ネックレスが一〇〇〇〇ジルだよ」

「むぅ、ネックレス結構高いね……」

「紫水晶がまだレア物でね。ちょっと値段が上がっちゃうんだ。まぁ、それで売れ残っちゃってるわけだけど」


 すこし悩む値段ではあるのだが、他にこれと言って必要と感じるアクセサリも見つからず、この二つを購入する。

 これで翡翠のアクセサリ枠三つにはリング、ピアス、ネックレスの三つが収まり、それぞれ+三%+二%+五%、合計で一〇%のMP最大値上昇。

 アクセサリでの上昇分は増槽、スキル等の合計値を基準にし、上昇した数値はアーマーを装着している間は固定される。


 つまり、途中で増槽を切り離してもアクセサリでの上昇分は変化しない。

 これでアスカのMP最大値は装備前の578から636へ増え、飛行可能時間はついに一〇分の壁を超える。

 

 なお、アスカの耳には支援AI、アイビスのイヤリングが付いていたのだが、これは耳に装備するものがあれば良いらしくその機能は新しくつけたシルバーピアスに移行した。

 

「ある意味お引越しだね。居心地はどう、アイビス?」

『イヤリングやピアスに居心地という物はありません』

「えっと、真面目に返されると困っちゃうかな……」

 


 その後は前回していなかったスコップとのフレンドコードの交換を行い、MP増加アクセサリの予約を行った。

 今はまだ効果の低いものだが、レベルが上がってくればより効果の高いものになってくるはず。

 あちこち探しまわるよりも前もって頼んでおいた方が早いとの考えだ。


 スコップもこの予約には前向き。

 原価も高く、手間暇もかかるこのアクセサリはその分高価で利益率も極めて高い。


 また、生産系スキルはその製作難易度で獲得経験値も変わるのだが、こちらもMP増加系のアクセサリは非常においしいものとなっている。

 スコップからしてもちゃんと買い取り先がいる状態で作れるため不良在庫になる恐れがなく、断る理由が何一つないのだ。



 ランナー達で賑う露店市を後にしたアスカが次に向かったのはフラワーショップ。

 目的は今朝収穫した品質Aの魔力草の採種と、プランターの土の入れ替えのためだ。


 プランターで育てた場合、土には使用回数があるらしく、魔力草を採取したところでアイビスからフォローが入ったのだ。

 曰く『その土でもう一度育てると品質低下する恐れがあります。土を入れ替えてください』とのこと。


 リアルでもプランターの土には使用限度があり、母である奈々と一緒に土の入れ替えを行ったことがあるので納得だ。


「こんにちは!」

「おや、いらっしゃい」


 普段は人気のないフラワーショップだが、今日は軒先でこのお店の主人であるケルヴィンが草花に水をあげていた。


「採種と土の入れ替えをお願いに来たのですが、リーネさんはいますか?」

「あぁ、すまない、彼女は今出かけてるんだ。代わりに僕がやろう」

「じゃあ、お願いしますね」


 アスカはインベントリから魔力草とプランターを取り出し、ケルヴィンに渡す。


「ほう、リーネも言ってたけど、本当に見事な魔力草だ。これは育て甲斐があるね」


 ケルヴィンは渡された五つの魔力草を持つと、今までと同じように魔力草が光を放ち、その姿を種へと変える。

 そしてアスカに渡されたのは一〇粒の魔力草の種。

 その品質はすべてA。最初は一つだけだったものがここまで増えたことを考えればなんとも感慨深い。


 採種が終わったケルヴィンが次に取り掛かるのは土の入れ替えだ。

 プランターに入っていた古い土を廃棄し、そこに新しい土を入れる。


「あの数と品質なら……こいつだな」


 あとは最初に見たとき同様、土の入ったプランターに一〇粒の魔力草の種を植えるだけ。


「はい、できたよ」

「ありがとうございます!」

「プランターで育てられるのは一〇個までだから、次からは畑になるね」

「おぉー、ついにそこまで……」

「次はちゃんと採種出来たら二〇粒以上になっちゃうから。プランター二つで育てるって言う手もあるけど、先を見るなら畑の方が良いと思う」


 そう言ってにっこりと笑うケルヴィン。


「じゃあ、次の採種をお願いするときにまた来ます!」

「うん、その時はリーネもいるだろうから、楽しみにしているよ」


 アスカもケルヴィンに笑顔で返すと、受け取ったプランターをインベントリに収納し手を振ってフラワーショップを後にした。



 その後は一度ホームに戻り、プランターの設置と水やりだ。


「ふふふ~、次は畑だ~、しっかり育てよ~」

『アスカ、この後はどうしますか?』

「う~ん、まだログアウトするにはちょっと早いんだよね。簡単なクエストでも受けて、経験値を稼ごうかな」


 ロビンは昨日からすでに翡翠の製造に取り掛かっており、最低でも一〇日は欲しいと言われている。


 アスカがその間にするように言われたのはTierⅢレイバードの開発と素材集め。

 アイビスのアドバイスによればランナー協会でクエストを受領すれば報酬で素材がもらえる他、クエスト専用ボスなどから開発経験値も獲得できる。

 無駄にあちこち飛んで野良モンスターを相手にするよりは効率は良いとのこと。


『アスカ、ロビンからメールが届きました』

「ロビンさんから? なんだろう?」


 そんなことを考えている時に届いたメール。

 昨日製作に取り掛かったばかりで、しばらくは連絡が取れないかもと思っていたのだが。


『toアスカ

 ごめん、色々改造案立ててたら

 素材足りなくなっちゃった!

 追加の必要素材記載しておくから

 超特急で集めてきて!

 採取場所はランナー協会と

 アイビスちゃんによろしく!

           fromロビン』



「えええぇぇぇぇっ!」


 これから数日、アスカのやるべきことが決定した瞬間だった。



たくさんの感想、評価、ブックマーク、誤字脱字報告ありがとうございます!

皆様のご声援のおかげで本日も日間ランキング一位をキープさせていただいております!

今後もアスカ達の物語をよろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[一言] >これでアスカのMP最大値は装備前の578から636へ増え、飛行可能時間はついに一〇分の壁を超える。 MP578を使いきるのに9分38秒 MP自然回復で1分に1%=MP5回復するから使いき…
[一言] アレやりたいコレやりたいとノリに乗って誰も止めなかった時に陥る古典的なオチ(ーー; 予算オーバー、素材不足、安全性を忘れる・・・誰が乗ると思ってんだ?Σ(゜Д゜ υ)
[一言] そういえば飛行で経験値入手って入手量そんなに多くないのかな? 飛翔Ⅱが取れるレベルで飛んでるからそこそこ稼げてそうなものだが
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