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1 イベント概要Ⅰ

本日一話目更新。

新章スタートです。


 月の暦は七から八へと変わり、外では相変わらず蝉がけたたましく鳴き、テレビ番組は朝から夏のイベントを宣伝している。

 毎年、夏休みのこの時期は友人たちと毎日のように遊びに出かけていた蒼空だが、この夏ばかりはゲーム三昧。

 インドアの夏を過ごしていた。


「姉ちゃん、公式からの情報、見た?」

「情報?」


 家族そろって朝食を取っている時、そう切り出してきたのは弟の翼だ。

 姉の蒼空に『Blue Planet Online』をプレイするきっかけを与えた張本人である。


 本人は受験生故プレイできずにいるのだが、『Blue Planet Online』への興味はなくなるどころか増してゆく一方であり、常日頃から公式HPや掲示板を読み漁っているのだ。


「うん。最初のイベントの告知が出てたよ」

「イベント?」

「詳細はまだみたいだけど、何かの島に上陸する大型レイドイベントだって」

「レイドイベント?」

「あ~、姉ちゃんはそこからか。んっとね、レイドイベントってのは大勢のプレイヤーでマップを攻略したりボスを倒すイベントの事だよ」

「ふ~ん……」

「あれ、あんまり興味ない?」

「うん。私はそんなイベントより空飛んでいたいから」

「えぇ……」


 分かってはいたが、姉が『Blue Planet Online』をプレイする動機は空を飛ぶ事であり、それ以外には一切興味を示さない。

 本来ならイベントと聞けば心が躍り、気分が高鳴り、居ても立ってもいられなくなるはずなのだが、この姉は例外のようだ。


「なんだ、ゲームの話か?」

「うん。姉ちゃんが今ハマってるゲームの話だよ」


 二人に割って入ってきたのは翼と蒼空の父親である青木翔馬。

 有名航空会社のパイロットであり外泊も多い父だが、今日は家族四人での朝食を取っている。


「あなた、最近蒼空はゲームに夢中なのよ。それこそ朝から晩までやってるわ」

「そうなのか? いつも外に出かけてる蒼空にしては珍しいな。どうしたんだ?」

「機械の鎧を身に付けて進めていくゲームなんだけど、その中に空を飛ぶものがあるんだ」

「……ほほう?」


 空を飛べる。


 その言葉を聞いた瞬間翔馬の目の色が変わった。

 話をする翼にぐぐぐっと身を寄せてくる父が放つ威圧感。

 それは姉に『Blue Planet Online』のCMを見せ、どこで買えるのかと詰め寄られた時に感じたものと同じだった。


「お父さん、すごいんだよ! フライトアーマーっていうんだけど、現実の世界みたいにきれいな空をどこまでも飛んでいけるの!」

「ほう!」

「それも、自分の思いのまま! 航空祭で見たような機動飛行だってできちゃうし、滑空で空中の散歩もできちゃう!」

「ほうほう!!」


 二人は完全に火が付いていた。翔馬は蒼空の父親であり、蒼空の空好きは父である翔馬から受け継いだもの。

 そんな父がゲームの中で自由自在に空を飛べるという話に興味を持たないわけがなく、ぽかんとする母奈々としまったという表情をする翼の二人を置いてけぼりにして盛り上がって行く。


「すごいな。そんなゲームがあるのか。父さんもやってみようかな」

「うん、お父さんも一緒に飛ぼうよ! 気持ちいいんだよ!」

「あ~父さん、盛り上がってるところ悪いんだけど、このゲーム初回生産分はもう完売してるから、次は秋以降の二次生産分を待たないと無理だよ?」

「なに? そうなのか……」


 がっくり項垂れる翔馬。

 明らかに本気で残念がっている。


「それで姉ちゃん。イベントなんだけど、参加したら?」

「え~……」

「イベントは貢献度でランキングがあるみたいなんだけど、上位者にはいろいろ特典がもらえるみたい。で、その中に姉ちゃんの役に立ちそうなのがいくつかあった」

「ふーん……例えば?」

「プレミアムランナーチケット、ジル、あとエグゾアーマーの素材とか」

「素材?」


 ここまで興味なさそうに聞いていた蒼空だが、エグゾアーマーの素材という言葉にぴくりと反応した。

 蒼空が今ゲーム内で保有できているのはTierⅠの乙式三型とTierⅡの翡翠の二種類のみ。


 そこからの派生はTierⅡ『C-75』とTierⅢ『レイバード』で、その先も同Tier派生やTierⅣ、TierⅤと進んでゆく。

 全て確認したわけではないが、それらのエグゾアーマーは未だ見た事のない素材を必要素材として要求されていることだけは覚えていた。


「ふぅん……貢献度ってどうやったら稼げるのかな?」

「公式には敵を倒したり、味方を支援したら貰えるって書いてあったけど、細かいところまではわかんないや」

「う~ん、アイビスに聞いた方が早そうだね」


 ゲームのイベントならAIであるアイビスが一番よく知っているだろう。

 そう判断した蒼空はささっと朝食を終え食器を洗い、仕事に向かう両親と進学塾へ向かう翼を見送ると、自室へ戻り午前中のプレイを開始した。



短くて申し訳ありません。

あまりに長いので分割。

後半へ続く。


たくさんの感想、評価、ブックマーク、誤字脱字ありがとうございます!

おかげさまで日間ランキング2位をいただいて……え、2位!?!?

あわわわわ……これも皆様のご声援のおかげです。本当にありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] そこまで空に食い付くかΣ(゜Д゜ υ)やはり親が親なら娘も娘か(ーー; しかし島を探索、探検ね〰️( ´,_ゝ`)無人島か?それとも昔の砦跡の軍艦島みたいな感じか( -_・)? それな…
[一言] 更新お疲れ様です! イベントは島で行われる、、超大型なら航空支援は役に立ちそうですね。 蒼空ちゃんのお父さんもやりたいのか、、フライトアーマー親子とか呼ばれるのかな、、、w? アスカちゃんの…
感想一覧
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