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空を夢見た少女はゲームの世界で空を飛ぶ  作者: アル
Welcome to Blue Planet Online world!
31/232

31 救援信号

本日一話目更新です。


「ぷはぁ! 失敗した!」


 もう何度目かもわからない、墜落即死でのリスポーン。

 場所は毎度おなじみミッドガルの広場。

 ランナーの数も多く、アスカを物珍し気に見ている者もいたが当の本人はまったく気にしていない。


「行けると思ったんだけどなぁ……」


 アスカはぶつぶつ言いながら、顔なじみとなった屋台からオレンジジュースを購入し、適当なベンチに腰掛けた。


<累計墜落回数が二〇回を超えました。スキル【墜落耐性Ⅰ】が【墜落耐性Ⅱ】にレベルアップしました>


「あ、もうそんなに墜落しちゃってたか~。でも、初日だけで一〇回墜落してるから少しは良くなってる、よね?」


 滑空を覚える前はMP限界まで飛行し、あとはそのまま燃料切れで墜落するだけだったのだ。

 それを考えれば墜落ペースはかなり緩んだと思っていいだろう。墜落しなくなったわけではないが。


『アスカ、所持金と所有アイテムを確認してください』

「え? ……あぁっ!」


 アイビスの一言で顔から一気に血の気が引いて行く。

 普段から飛行での墜落の多いアスカは、フリーフライトの際には必要最低限の所持金しか持たず、アイテムはすべてホームのアイテムBOXに仕舞っていた。

 が、今回は翡翠の入手によりテンションが上がりすぎ、所持金、各種弾薬、果てはフランから買ったMPポーションまでインベントリにいれっぱなしだったのだ。

 その状態で墜落死。

 デスペナルティは避けられない。


 アスカはすぐさまメニューを開いて所持金とアイテムを確認。

 そして膝と頭をがっくりと地面に落とす。

 その姿は見事なまでのorz


「三〇〇〇ジルに弾薬、MPポーション……持っていかれたぁ……」


 弾薬はまだいい。

 資金も翡翠を購入した直後で多少は所持金が減っていたため、なんとかなる。

 だが、MPポーションが致命的だった。五つ買った品質Dポーションのうち、二個をロスト。

 昨日今日と使用し数を減らしていたため、今の在庫数を考えると悔やんでも悔やみきれない。


 精神的ダメージからさっきまでのこれ以上なく燃え上がっていたテンションは一瞬にして鎮火。

 モチベーションもくだくだになり、もう今日はログアウトしてしまおうかと思ったその時。

 目の前にメールアイコンが浮かび上がり、新着メールを報告してきた。


「誰だろう……あ、ロビンさんだ!」


 メールの送り主はロビン。昨日のセンサーポッドについてだった。

 そしてこの内容が面白い。


 まず、センサーポッドは試作のためそのまま使って良いとの事。

 代わりに使用感の感想が欲しいと言う交換条件付きではあるが。


 しかし翡翠にはすでに頭部装備が存在している。

 同じ頭部装備であるセンサーポッドは装備できないのだが、ダイクの店に行けば翡翠にセンサーポッドを組み込んで一つの装備に出来るという。

 センサーポッドの有用性は昨日すでに体験済みであるが、問題があるとしたら改造費。

 金額のことはロビンからのメールには何も書かれていなかった。


「アイビス、どう思う?」

『センサーポッドの組み込みには賛成です。TierⅠとTierⅡの統合ならそれほど金額はかかりませんし、索敵範囲はセンサー類を組み込むか装備しないと強化できません』

「目で見ることは出来るのに?」

『はい。認識できてもマーカー表示されません。アスカが使うフライトアーマーではこのことは極めて重要です』


 航空戦はいつの世も先手必勝。

 先に敵を発見し、仕掛けた方が圧倒的に有利だ。


 センサーポッドがない状態では、視認は出来ても索敵範囲に入っていなければアイコンで表示されない。

 それは視界が良好なら問題ないが、障害物や悪天候の時にはギリギリまで敵を見つけられないことになる。

 

「そうだね……うん、ダイクさんの所へ行こう」


 ポーションロストのショックからなんとか立ち直り、アスカはダイクが営むショップへと向かって行った。



―――――――――――――――――――――――


「ダイクさーん」


 店の扉を開け、陳列されている武器類には目もくれずダイクに声をかける。


「お、どうした嬢ちゃん……もしかして不具合か?」


 アスカの顔を見たダイクが顔をしかめて返事をしてきた。

 先刻ハイテンションでお店を出たのに、今はそのテンションが完全に沈黙し、淡々とした表情になっている。

 アスカとはまだそれほど付き合いが長くないダイクであってもその急変ぶりから何かあったのだと察するには十二分。


 思い当たる節と言えば先ほど買っていった翡翠。

 あれに不具合があったという話ならば穏やかではない。


「あ、違います。実は……」


 ダイクの勘違いを訂正し、事情を伝える。


「はっはっは、そりゃあがっくりきちまうわな」

「笑い事じゃないですよぅ」


 ダイクは豪快に笑うが、アスカからしたら泣くに泣けない失敗だ。

 デスペナルティの勉強代だと言われても、あまりにも高すぎる。


「それで、センサーポッドの組み込みなんですけど」

「おう、そうだったな。見せてみろ」


 アスカは翡翠の頭部ユニットとセンサーポッドを実体化させ、カウンターの上に置く。

 ダイクはその二つを手に取り、「ふぅむ」と一言。


「なるほどな。改造費用が五〇〇ジルだが?」

「安! お願いします」


 思った以上に安かった。

 代金を受け取ったダイクは「すぐに済む」と言って店の奥に消えて行き、一〇分も経たないうちに帰ってきた。


「終わったぞ」

「早!!」


 手に持っていたのは二つの頭部装備が文字通り一つになった姿。

 違いはネックバンド型だったセンサーポッドのバンド部分が無くなり、翡翠のカチューシャに支持される形になっていたこと。


「なんて簡素な……」

「おうよ。だから工賃も安い」


 まったくもって納得の答え。

 これなら自分でできたのでは? と思ってしまうのも無理はない。

 もっとも、こんな簡素な改造でも【製造】スキルが必要らしいのでアスカが自分で行う事は出来なかったが。



頭部  翡翠・改 TierⅡ


HP 60/60

MP 0/0

物理攻撃力   0

魔法攻撃力   0

対物理防御   5

対魔法防御   5

機動性   130

安定性    20

索敵範囲  300m

通信範囲  500m


 翡翠の頭部ユニットにセンサーを組み込んだ改造品。



 性能もお互いを組み合わせたそのままの能力。

 問題なく装備できた。


「うむ、問題ねぇな」

「この改造、失敗する方が難しそうですけど……」

「まぁな。こいつは簡単だが、中には難しいものもある」


 翡翠とセンサーポッドはお互いがすでに独立完成しているユニット同士であり、配置やスペースなども干渉していなかったためこれだけ早く終わったという。

 難しいのはユニット内にこれでもかと言うほど魔力回路や通信回路を組み込んであるもの、肉厚で防御力を持つものなどだそうだ。

 回路はうっかり切断してしまうと当然動作不良をおこし、動かなくなる。

 肉厚なものは取り付ける素材の相性や加工の際削りすぎて防御力が下がったりするという。


「難易度のたけぇ奴はウチとしても儲けが良いがな」


 そう言ってダイクはガハハと笑う。

 

 その後も会話をしつつ、ロストした分と消費した分の弾薬を購入。


「じゃあ、また来ますね」

「おう。いつでも来いよ」


 歯を見せながら笑って見送るダイクに手を振って返し、店を後にした。



―――――――――――――――――――――――


 ダイクの店を出たアスカは西門に向かって歩いている。

 今日のプレイを終了しようと思うほどダダ下がりだったモチベーションは、リーネからのクエストを終わらせようと思うくらいには回復。

 もちろん、資金と不要なアイテム類はホームのアイテムボックスに収納済み。


「お金、よーし。MPポーション、よーし。弾薬類、よーし。配達品、よし!」


 インベントリを開き、指さし確認で所有数を確認してゆく。

 弾薬類は減らせないが、MPポーションとお金は最低限。


「これなら死んでも大丈夫だね」

『無理な機動飛行さえしなければアスカなら問題ないと思われますが?』

「うん、それは無理!」


 機動飛行は目下アスカ最大の楽しみであるため、止める事など土台無理な話。

 できる事と言えば事前に対処しておくことのみ。


「アイビス、西のトティス村って言うのはどういうところなの?」

『ミッドガルを西に出てすぐにクリフ平原が広がりますが、さらに進むとヘレンの森が広がります。トティス村はその平原と森の間にある村になります。人口はジーナ村やラクト村と同程度です』

「なるほど。距離も同じくらい?」

『はい』

「なら、空を飛べばすぐだね」


 雪山のジーナ村、山岳のラクト村はすでに何度も飛行で移動しているが、ミッドガルとの距離は二つの村とも同程度。

 ならば、トティス村も同じくらいの距離だろうという推測。



 西の門から外に出たアスカはすぐにエグゾアーマーを展開。

 いつものように驚く周りのランナーに目もくれず、すぐさま離陸してゆく。


 先ほどは機動飛行で遊んだが、今度は純粋な移動のみ。

 ある程度高度を上げてから水平飛行に移行し、エンジン動力を止めて滑空に移る。


 眼下にはどこまでも続くクリフ平原。

 このクリフ平原は起伏が少なく、草木の丈も短いので見渡しが良い。

 所々で動く影はモンスターと戦うランナーや採取などをしているランナーの姿だ。


 そんなランナー達を横目に、アスカはフリーフライトを堪能。

 しかしここで異変に気付く。


「あれ、なんか降下速度速い?」


 TierⅠ乙式三型ではゆっくりと降下していく感じだった滑空が、このTierⅡ翡翠だと降下が目に見えて速かったのだ。


『翡翠になりエンジン出力は上がりましたが、翼幅は短くなっている為と推測します』

「そっか、グライダーも主翼長いし、増槽みたいな空気抵抗もないものね……主翼、伸ばせたらいいのになぁ」

『……可能ですよ?』

「えっ!?」

『主翼の延長、可能です』

「えっえっ!? ど、どど、どうやるの!?」

『アーマーショップで依頼すればいいだけです』

「それだけ!?」


 あまりに簡単な方法に驚きを隠せなかった。


『主翼の延長は、他のアーマーで言う装甲厚の増加や固定武装の取り付けなどと同じです。先ほどのアーマーショップでの依頼の他、【製造】スキル持ちのランナーに依頼することで可能です』

「なるほど、あとはお金と素材……」

『はい。依頼料、技術料の他、素材費用も掛かります』

「主翼なら素材はアルミだよね。また採掘にいかないと」


 この時点で主翼の延長は決定事項。

 滑空がある程度リアルと同じなら、細くて長い主翼にし、空気抵抗を減らせば長く飛んでいられるはずだ。


「クエスト終わったら、ダイクさんの所に行かないとね!」


 下がった分の高度を取り戻すため、再びフライトユニットのエンジンを作動させて高度を取る。

 と言っても目的地のトティス村には初めて行くので、高度はほどほどに。


 ピピピッ。


「えっ!?」


 翡翠に組み込んだセンサーポッドから音が聞こえてきたのは、上昇を終えて再び水平飛行に移行した時だった。


『救援信号を受信しました。アイコンを表示します』

「アイビス、救援信号って何?」

『スカウトアーマー、及び通信ユニットを搭載しているアーマーが使用できる緊急信号です。ピンチに陥った時に使用可能になり、自身の通信可能範囲全域に救援を求めます。また、この信号を発信した時点で助けを承認したことになりますので、すぐに攻撃を開始してかまいません』

「つまり、これを発信した人は今ピンチって事?」

『その通りです』

「どこ? ……あそこか!」


 周囲を見渡すと、離れた位置にランナーを示す青いアイコンが三つと敵を示す赤いアイコンが複数表示されている。

 この距離ではまだアスカの索敵範囲外だが、救難信号を出してくれたランナーからの通信で敵の詳細は表示され、位置関係は見て取れた。


 ランナー三人は一か所に纏まっているが、モンスター達はそれをぐるりと包囲。

 さらに三人ともHPバーが半分以下、うち一人は一割あるかないかの危険な状況だ。

 

「うわ、滅茶苦茶ピンチじゃない!」

『救援しますか?』

「うん、助けよう!」


 アスカはエンジンを始動させ、姿勢を高速飛行形態に。急旋回して救難信号を出したランナー達へ進路を取り、降下、加速して行く。


『敵、ウォーウルフ四、グラスランドウルフ五』

「ウォーウルフ?」

『クリフ平原に出現する大型の狼です。魔法攻撃などは行いませんが、機動力、攻撃力が高く、組織だった戦闘を行います』

「機動力! 厄介だね!」


 今にもランナー達に飛び掛かりそうな一際大きな四つの陰。あれが恐らくウォーウルフだろう。

 近くの小さな影がグラスランドウルフと推測できることからも、ウォーウルフの大きさがよくわかる。


 この距離、グレネードはもちろん、アーマライトや連射モードのエルジアエも射程外。

 だが、単発モードのエルジアエならばなんとか届く。


 アスカは高速飛行姿勢のままエルジアエを構え、ウォーウルフに照準を付ける。


「今助けるよ!」


 エルジアエのチュイイィィンと言うチャージ音が高まりきったのとほぼ同時に、アスカはトリガーを引いた。



感想、評価、ブックマークなど頂けますと作者が嬉しさのあまり秋田空港から飛び立ちます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 墜落即死も随分と慣れっこになって来たな(ーー; しかし以前質問したが落っこって助からん高さはアウトなら色々ラッキー要素が揃えばセーフありか? 例えば、落下耐性が無駄に高い×空高くても電柱ぐ…
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