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空を夢見た少女はゲームの世界で空を飛ぶ  作者: アル
Welcome to Blue Planet Online world!
30/232

30 フライトアーマーTierⅡ 翡翠

本日二話目です。

新フライトアーマー、ロールアウト!

あとがきにインメルマンターンとスプリットSの解説を追加。


 今日も快晴のミッドガル。

 その露店市の一角に二人の少女の姿があった。


「わぁ、アスカ、大量だねぇ!」

「ふふーん、そうでしょ、そうでしょ!」


 採取してきた大量の魔力草に驚き感心するフラン。

 隣で両手を腰に置き胸を張って精一杯ドヤっているのはアスカだ。


 それもそのはず、午前中の採取でオークを撃退。

 午後の採取ではモンスターが出現しなかったため、初のフル回収が行えたのだ。

 その甲斐あって今までで最高の魔力草の数に品質となった。


「うわ、品質Cまで混じってる。スキルレベル上がった?」

「うん。たくさん採取したから、Ⅲになったよ」


 ここ数日、毎日かなりの数の採取を行った為、スキル【採取】のレベルもⅢに上昇していた。

 スキルのレベルで獲得アイテムテーブルが変化し、外れ枠の雑草の確率低下。空いた枠に品質Cが入るようになったのだ。

 まだまだ数は多くないが、資金源としては十二分。


「すごいよアスカ、全部で二三六四〇ジル!」

「おぉー、最高記録!」


 今までの最高記録は三人で山岳に行き、道中のポイントでも採取を行った時の二二〇〇〇ジル。

 それもフランに色を付けてもらった金額であり、純粋な売却額としてはダントツのトップ。


「いやー、儲けてますなぁ、うりうり」

「いやいやいや、MPポーションで暴利をむさぼるお前さんには負けるぜぃ。あはは」


 肘でつつきながらいじってくるフランに冷やかしでもって笑って返す。



 フランと別れた後はいつものようにダイクの店へ。

 昨日の採掘での鉱石に、今手に入った収入。

 これでフライトアーマーTierⅡ翡翠は問題なく買えるだろう。


「おう、嬢ちゃん。いらっしゃい」

「こんにちは、ダイクさん。素材、持ってきました!」

「お、取ってきたか。どれ、見せてみな」


 相変わらず店内に人影は少なく、暇を持て余していたダイクは常連客の来店にご満悦。

 ダイクに促されるまま、カウンターの上に昨日採掘した鉱石を置いてゆく。

 品質は厳選したため、ボーキサイト、鉄鉱石共にDとEしか持っていない。


 ダイクはその鉱石を手に取ると、じっくりと品定めを行った。

 この時ばかりはダイクも真剣そのもの。

 あまりに険しいその表情に「大丈夫かな?」と不安になってしまうのも仕方のない話だろう。


「……うむ」

「あ、あの……」

「良い鉱石だ。これなら問題ねぇ」


 それまで険しかった表情が弾け、ニカッとわらう。

 その顔にアスカもよかったと胸をなでおろした。

 鉱石は必要以上にあるという事なので、余った分は売却。

 そのまま購入費用に充ててもらう。定価三〇〇〇〇ジルから素材持ち込みと売却分を差し引いた金額が一五〇〇〇ジル。


「あれ、素材持ち込んだら一〇〇〇〇ジルでしたよね?」

「あ~正確には銅が足りねぇ。あとはインゴットになってねぇ分だ」

「もうちょっと安くは……」

「ははは、うちは値下げ交渉お断りだ、ぜ!」

「ぶーぶー」


 サムズアップし、歯を見せながらニカリと笑うダイク。何とも暑苦しい。

 話が違うと文句も言いたいところだが、アイビスに『必要素材は開発ツリーから確認できます』と言われてしまってはぐぅの音も出ない。

 ダイクの暑苦しい顔とにらめっこするのも疲れるので、ここは勉強料だと思って支払う事にする。


「仕方ない、その金額でお願いします」

「まいどあり」


 目の前にウィンドウが表示され購入をタップ。


<フライトアーマーTierⅡ翡翠を入手しました>


『翡翠をガレージで設定しますか?』

「うん。お願い」


 アスカにとっては二つ目のエグゾアーマー。

 これで一つしかなかったガレージ画面も少しは華やかになるだろう。


「ちゃんと増槽搭載しておけよ」

「ついてないんですか!?」

「そりゃあ新規で買ったからな。ついでに言うと動力結晶もついてねぇ」

「えええぇぇぇ!?」


 初耳である。

 エグゾアーマーの製造はあくまでエグゾアーマーだけな為、完成品にはオプション装備どころか動力源すら付いていないのだ。

 もっとも、増槽も動力結晶も種別関係なくすべてのアーマーで共有できるので、そこまで大きな問題にはならない。

 さらに、ガレージにはその特定の組み合わせを記録する『プリセット』機能もあるので、実際にガレージで保存できるエグゾアーマーの数は意外と多いのだ。

 最初はまた動力結晶を探さないといけないのかと焦ったが、アイビスとダイクから説明され安堵する。

 資金は少しずつ増えてきてはいるが、ここでまた動力結晶を買うのは手痛い。


「まぁ、動力結晶はそれでいいんだが、増槽がな」

「共有できないんですか?」

「いや、問題なく使える。使おうと思えばもっと大きな奴も付けられるんだが、どうする?」


 乙式三型ではエンジン出力の関係でフライトユニットにミドルサイズまでしか付けられなかった。

 だが、翡翠になりエンジンパワー、及び最大積載量が増加。

 それに伴いさらに大きい増槽も搭載できるようになったのだ。


 もちろんアスカはこれに飛びつき、即購入の上で翡翠に搭載。

 さらに今までロングソードを付けていた腰のハードポイントにも追加し、これによりMPの最大値が一〇〇増加。

 最後に先の戦闘で消費した弾薬を補充し、ダイクとあいさつを交わした後お店を出る。



 アスカが足早に向かったのはミッドガル西側の門。

 クエストの関係で西門から出た方が効率が良いと言うのもあったが、それ以上に早く翡翠を試したくて仕方がなかったのだ。


 相変わらず人影の多い門の前をかき分けて街の外へ。そこからさらに入り口から離れたところで足を止め、ゆっくりと深呼吸。

 すでに何度も体験したエグゾアーマーの装着だが、今回ばかりは話が別。

 翡翠の初装着にアスカの胸は高鳴りっぱなしだ。


「ふぅーーー、アイビス、準備は良い?」

『いつでも大丈夫です』

「……よし、エグゾアーマー装着!」


 テンションが上がった勢いそのまま力強く発した言葉に呼応し、アスカの足元に魔法陣が形成される。

 体がふわりと浮き上がり、体にエグゾアーマーのシルエットが現れ、実体化してゆく。

 足元の魔法陣が消え、アスカが再び地に足を着けたときには装着シークエンスが全て完了。

 フライトアーマーTierⅡ翡翠が実体化していた。


「これが翡翠……いいね、いいね!」


 フライトアーマーTierⅡ翡翠は名の指し示す通り深めの緑を基調としたカラーリング。

 肩、腰、胸部なども攻撃的ながらも流線的なシルエットをしていて、脚部はやはりスラっとした曲線美。

 無駄を一切そぎ落とした風貌はある意味芸術とも受け取れる。


 そしてフライトアーマー一番の要、ランドセルを背負うような形で配置されたフライトユニット。

 レシプロエンジン、上下に二〇度ずつ動くギミック、後方にプロペラがある推進式等はTierⅠと同様。


 大きく変わった部分として双発だったエンジンは単発四枚羽のプロペラになり、主翼はエンジンの下部に取り付けられた低翼型。

 形状は翼端に行くに従い翼弦長が線形に変化するテーパー翼だ。

 垂直尾翼はエンジン上部に配置され、やや大きくなった。


 さらに、頭部にはTierⅠではなかったエグゾアーマーパーツが存在。

 カチューシャの様なヘアバンドに、そこから動かないながらも左右に向かって小さな翼が付いている。

 増槽は今までとほぼ同じ位置だが、より大きくなったフライトユニットの増槽は左右主翼下部に搭載。

 一周り大きくなった紡錘状のそれはぱっと見爆弾と変わらない。


「主翼の前に小さな前翼、そして推進式のエンジン……これってエンテ型だ!」

 

 TierⅠの乙式三型はどこか試作機のような雰囲気があったが、このTierⅡ翡翠はまさに戦闘機。

 また、アスカの言うように主翼の前に前翼がある形状はエンテ型と呼ばれ、失速しにくい、揚力の増加、設計の自由度が高いなどの利点を持つ。

 もっとも、これらは現実世界での話であり、ゲームにどこまで反映されているのかは不明。

 

 気になるステータスは……。


頭部  翡翠 TierⅡ


胸部  翡翠 TierⅡ

       ハードポイント1 なし

       ハードポイント2 なし

腕部  翡翠 TierⅡ

       ハードポイント1 エルジアエ TierⅢ

       ハードポイント2 アーマライト TierⅠ

       ハードポイント3 増槽+25

       ハードポイント4 増槽+25

腰部  翡翠 TierⅡ

       ハードポイント1 なし

       ハードポイント2 増槽+25

       ハードポイント3 増槽+25

脚部  翡翠 TierⅡ

       ハードポイント1 増槽+25

       ハードポイント2 増槽+25

       ハードポイント3 なし

       ハードポイント4 なし

背部  翡翠 TierⅡ

       ハードポイント1 増槽+75

       ハードポイント2 増槽+75

       ハードポイント3 なし

       ハードポイント4 なし

動力結晶 魔力結晶 TierⅢ 178


アクセサリー1 なし

アクセサリー2 なし

アクセサリー3 なし



HP 520/520

MP 578/578

物理攻撃力 405

魔法攻撃力 980

対物理防御  83

対魔法防御  79

機動性   980

安定性    93

移動速度   50



 TierⅠ乙式三型から、機動性に関しては二〇〇以上の上昇。

 それも増槽を満載してでの数値であり、その全てを切り離すことで一〇〇〇を超える。


 反面、軽いアルミ素材を使用しているためHP、及び防御力はほとんど伸びていない。

 さらに安定に関してはわずかに低下。プレイヤースキルへの依存性がさらにその度合いを強めていた。


 エンジンが一つになった事で減るかと思われた飛行時消費MPは据え置きの毎秒一。

 単発にはなったがその分大型になり燃費が悪くなったのか、はたまたゲームバランスか。


 他のアーマーが各ハードポイントに防御を増加させる追加装甲やブースター、武装など搭載し強化していく中、MP増加用の増槽を満載することで極振りとなったMPはようやく一〇分間近くの飛行を可能とさせるレベル。

 しかしアスカはある程度まで上昇した後は滑空で飛行する上、MPポーションにMP回復のスキルもあるのでスペック以上の飛行時間を有する。



「うん、うん! うん!!」


 翡翠の姿を思う存分堪能したアスカは、次に操作方法を確認するかのようにエンジンを上下。

 そしてエレボン、ラダーを動かし、最後にエンジンをスタートさせる。


 ブルン、ブル、ブルル、バスン! ブルルルルン! ブルルルルルルル……。


 景気よくスタートしたエンジンはすぐさま回転を開始。

 始動直後こそ高回転になるが、すぐにアイドル回転まで回転数を落としその回転を維持、アスカからの指示を待つ。


「よし、無限の彼方へ、さぁ行くぞ!」


 全ての確認を終えると、アスカはどこかのスペースレンジャーのごとく決め台詞を言い放ち、離陸を開始。

 今までと同じように回転数を上げ、背中を押される勢いそのままに走り出す。

 速度はぐんぐん上がり、主翼が揚力を生み出し、地面から足が離れる。


「す、すごい、すごい!」


 この時点ですでにアスカはTierⅠとの違いを実感。

 翡翠の加速度はTierⅠを遥かに上回り、より短い距離で離陸出来たのだ。


「よし、上昇!」


 十分に加速したところでエンジンの角度を操作し、高速姿勢。

 そのままピッチアップし上昇。

 かなりの上昇角で上がって行くが、エンジンは唸りをあげ推進力を作り出し失速する気配はない。


 辛抱できなくなったアスカはアクロバット飛行を開始。

 ロールに始まり、ループ、インメルマンターン、スプリットS、そして慣れてきた所でバレルロール。


 TierⅠ乙式三型で身に付けた機動飛行はすべて行え、改めて翡翠の性能を確認。


「旋回性も推力もあがってる! これならあの技を……」


 翡翠の性能の良さにテンションが最高潮に達し、新しい技を試す。

 だが、その技は乙式三型で一回も成功せず、失敗時はすべて墜落してしまったため封印した危険な技。

 その名は……。


「いくよ! 奥義、木の葉落とし!」


 それはループ中に失速横滑りして斜め旋回に移行し、敵の背面を取るという高難易度の戦闘機動。

 が。


 ズルッ。


「あっ!」


 失速横滑りまではうまくいったが、立て直しに失敗。

 途端に失速錐揉み状態になり、木の葉のようにくるくるひらひら舞いながら落下してゆく。

 こうなるとアスカと言えどももう立て直せない。


「あにゃああぁぁぁ!! やっぱり駄目だったああぁぁぁ!!!」


 人間、調子に乗ると失敗する。

 アスカはそのことを身をもって実感すると共に、大地に大きなクレーターを作り上げたのだった。



エンテ型

 主翼の前に前翼をもつ航空機の形状の事。

 語源はドイツ語のエンテであり鴨が飛ぶ姿に似ている事からこの名が付いた。

 エンテをフランス語読みしたのがカナール、さらにこれを英語読みでしたのがカナードである。

 ただし、現在でカナードは前翼の事を指す。

 前翼を置くメリットデメリットはいろいろあるが、細かいので省略。


インメルマンターン

 水平状態から上昇、半ループしたところで上下逆になった機体を180°ロールさせ水平状態に戻る航空機動。

 いわゆる縦のUターン。

 第一次世界大戦時のドイツ人エースパイロット、マックス・インメルマンが行ったことからこの名で呼ばれる。


スプリットS

 インメルマンターンの逆。

 水平状態から180°ロールを行い背面飛行になった後、半ループを行う航空機動。

 インメルマンターンが高度を稼ぐのに対し、こちらは高度が大きく下がる。

 人体、及び機体にかかる負荷がインメルマンターンよりも大きく、墜落の危険性もある難しい技。


感想、評価、ブックマークなどいただけましたら作者が嬉しさのあまり秋田空港から飛び立ちます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] エンテ翼機といえば震電xp55ミラージュ
[一言] 流石に一線を越えただけに進化も凄いなΣ(-∀-;) おそらくフライトアーマー使い初の新機体開発成功者だな(。-ω-) まだまた強化枠は残ってるし更に化けるのか(ΘдΘ) でも噂になってただけ…
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