表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
204/232

13 轟竜対策会議

遂にあの人が登場


 武器の更新を行うべく、ミッドガルの街に戻ってきたアスカ達一行。

 ホクトベイの開拓村にはまだ大きな工廠やショップがなく、個人販売の露店がほとんど。

 通常装備であれば露店でも事足りるが、アスカはフライトアーマーという戦闘スタイル上、使用武器に制約があり要求性能が高い。


 故に、アスカの事をよく知る行きつけのショップに向かう事にしたのだ。

 もちろんそのショップとは……。


「ダイクさん、こんにちは!」

「おっちゃん、また来たぜ!」

「お邪魔します」

「またお世話になります」

「こりゃまた大所帯だな、いらっしゃい」


 アスカの行きつけ、ダイクのエグゾアーマーショップだ。

 各方面の深部とナインステイツが解放されてからさらに人の少なさに拍車のかかる店内なだけに、アスカ達4人の来店にダイクは大喜び。

 強面ながらもさわやかな笑顔で歓迎してくれた。


「ダイクさん、武器を買いたいんですけど」

「お前さんが武器? どういうこった?」

「実は……」


 アスカから武器を買いたいと言われ、顔を傾げるダイク。

 そんなダイクにアスカ達は今までの状況を説明した。


「なるほど、確かにその手の相手にゃ力不足だわな」

「はい。それでピエリスとエルジアエを強力にしたいんですけど……」

「ふむふむ……無理だな!」

「えぇっ!? ど、どういうことですか!」


 快い解答が返ってくる物だとばかり思っていたアスカに、ダイクの返事は予想外の物だった。

 全身で驚きを表現し、ダイクに食って掛かる。


「まぁ、正確には素材と時間と金がねぇと無理だ」

「はえ……?」

「嬢ちゃんの武器は特殊すぎんだよ」


 通常、エグゾアーマーの武器更新は汎用品で行う事が多い。

 アサルトライフル、スナイパーライフル、マシンガン、近接武器、実弾、レイ弾などが代表格。

 しかし、アスカが使用するのはPDWピエリスにオーダーメイドに近い上下二段式レイライフルエルジアエ。

 

 PDWは元から需要が少なく、オーダーメイドであるエルジアエならば言わずもがな。

 アイビスの言うように両銃をアップグレードさせるにしても、素材を一から探さなければならない。


「つーこった。通常火器なら在庫はあるんだがな」

「ぐぬぬ……」

「気持ちは分かります、アスカお姉さん。僕のエグゾアーマーもそうですから」

「ラゴのエグゾアーマー?」

「はい。鎧型のプレミアムエグゾアーマーです」

「あ、あの鎧甲冑!」


 そう、ラゴが先ほど装着していたエグゾアーマーがイベントで使用していた鎧武者の物ではなく、ストライカーアーマーツリーの物だったのもこれが理由。

 開始直後は強力なプレミアムエグゾアーマーだが、環境が進めば世代遅れとなり、アップグレードにも希少素材が必要となる。


 イベントで、ある程度の成績を残しているラゴでも希少素材を集めきることが出来ず、間に合わせとして通常ツリーの物を使用しているのが現状なのだ。


「坊主の大剣も同じだな。火力はTier相応のものになるが買い替えたほうが早ぇ」

「えー、気に入ってたんだけどなぁ」

「あ、なら私は大丈夫ですね。ライフルは使ってますけど、汎用品なので」


 ラゴのメイン装備である刀も汎用品であるため更新が容易く、カルブのツーハンデットソードも類似品が多く問題なし。

 パイルバンカーこそアップグレードが必要になるが、型落ち状態でも十二分に火力が出るため保留。

 銃火器に関しては元から買い足した汎用装備。


 問題はやはりアスカの武器になる。


「アスカさん、エルジアエが通るスタンダードに難易度落としますか?」

「う~ん、それでもピエリスが通りそうにないし……」

「フライトアーマーの許容積載量がすくねーからピエリスとエルジアエにしたんだろ? 今なら余裕あるんじゃね?」

「報酬はエキスパートの方が美味しいの間違いないです。プレイヤースキルが不足しているわけではないので、汎用品で何とかするのもありだと思います」


 ダイクを含め、5人で意見を出し合ってはいるのだが、良い解決策は出てこない。

 仕方なく難易度を落として無難に討伐しようかとした、その時。


「こんにちは」

「あれ、ロビンさん!?」

「あらアスカちゃん。久しぶりね」


 ダイクの店のドアベルを鳴らしながら、一人のランナーが入店してきた。

 それはアスカにイベント攻略の助言を行い、フルカスタムアーマーまで用意してくれた大恩人ロビンだったのだ。


「うわぁ、お久しぶりですロビンさん! ここ最近ログインも無くて心配してたんですよ?」

「ふふ、ごめんなさいね。ちょっとごたごたしてて。他の皆もお久しぶりね」

「こんにちは!」

「お久しぶりです」

「でっけーねーちゃん、久しぶり!」

「それで、みんな集まってどうしたのかしら?」

「実はですね……」


 リアルの方が忙しく久しぶりのログインとなったロビンは情報収集も含めこの店に訪れた。

 そこにアスカ達がいたのはたまたまだったが、アスカからするとこれ以上ない幸運。


 すぐさまロビンに事情を話し、アドバイスを求めた。

 ロビンもアスカから頼られるのは嬉しいようで、最初から前のめり。

 話を聞き進むうちに満開の笑顔なり、最後の方には明らかに悪いことを思いついたような含みのある笑みへと変貌していった。


「なるほどなるほど……ダイク」

「あいよ。カマンのスペックノート」


 ロビンが視線もくれずダイクに手を伸ばす。

 ダイクもすべてを悟っているらしく、半分諦め半分呆れの表情で一枚の紙をロビンの手に載せる。


「ふむふむ……これなら何とかなるわね」

「ほ、本当ですか!?」

「武装はね。お金はかかるけど、大丈夫かしら?」

「そっちは捨てるほどあるので、大丈夫です!」

「よろしい」


 そうして始まる、カマン強化計画……という名のジルに物を言わせた武装満載作戦だ。

 ショップ奥のエグゾアーマー装備可能エリアへ移動し、ロビンの指示でカマンを装備したアスカへ火器、オプションパーツを装着してゆく。


「ダイク、これ取り付けて」

「あいよ」

「アスカちゃん、これメインウェポンね」

「えっ、こ、これですか!?」

「うん、まだ余裕あるわね。ならこれもつけましょう」


 制約の多いTierⅡ翡翠のカスタムプランと飛雲を生み出したロビンなのだ。

 予算無限、TierⅣとなれば出来る事は大量にある。

 カマンの飛行能力を維持したまま、大幅な火力強化。

 結論としてたどり着く場所は、やはり……。


「うん、こんなものね」

「うわぁ、アスカさんすごいですね。なんというか、その……」

「全部実弾兵器と言うところにこだわりを感じます」

「すっげー! ねーちゃん対戦車ヘリみてーだ!」


 そう、リアルにおける攻撃ヘリを参考にした重武装化である。


 臀部に尻尾のような増槽兼ウェポンコンテナを設け、腰部に翼状のウェポンラックを増設。

 翼下に三砲身7.62mmガトリング、翼端に4連装ロケットランチャーをそれぞれ両翼に1門、計2門ずつ装備。

 背部のツインローターがあるフライトユニットにも翼を追加し、ミサイルを左右に1つずつ計2個を搭載。


 極めつけはロビンから渡されたメインウェポンとなるライフル。

 ピエリスはおろかエルジアエよりも大口径、大型のライフルであり、分類はスナイパーを超えアンチマテリアル。

 リアルでも存在する『バレット』と呼ばれる強力な対物ライフルである。


 飛行にMPを消費する仕様は変わらない為、兵装は全て実弾。

 近接武器を一つも持たない中・遠距離支援専用コーディネートだ。


「なんかハリネズミ見たいです……」

「実弾兵器で絶対殺すマンだな!」

「絶……マン?」

「あ、気にしなくていいですよアスカお姉さん」

「カルブ、あんたそんな言葉どこで覚えてくるのよ……」


 この装備を整えるのに大量のジルを消費したが、プレミアムランナーであることで割引されたことに加え、潤沢な資金を持つアスカには全く問題なし。

 メラーナ達も順当に装備を更新出来た事で、エキスパート轟竜に再挑戦の流れとなった。



―――――――――――――――――――――――


 場所は再びナインステイツ。

 一度把握した轟竜はマップにアイコン表示されており、先ほどよりも少し移動している。


 先の戦闘では全員がフライトアーマーを装備して移動したが、今度はそう言う訳にもいかない。

 なぜなら……。


「なるほど、ここがあのホクトベイなのね。来るのは初めてだわ」

「相変わらずホクトベイは人が多かね!」

「ゲームの中なのに地元の臭いがするばい」

「にゃ~、お金儲けの臭いがするにゃ!」

「……うむ」


 討伐にはダイクの店で合流したロビンの他、トップクラスのアサルトアーマー使いアルバ、ネコミミマジックアーマー使いのフラン、そして銀髪幼女ホロ率いるクランナインステイツのメンバーが居るのだ。

 これはいくら武器を更新しても1小隊では時間がかかり過ぎるだろうとの判断から。


 出回り始めた情報とアイビスの助言から推測するに難易度エキスパートは2、3小隊で当たるのが順当。

 条件さえ整えば1小隊でも可能だが、ここは効率を重視した形だ。


 そこでアスカとメラーナが声をかけたのがアルバとフラン、ホロ。

 両名とも丁度ログインしており、ホロに至ってはクランメンバーを引き連れての参加となった。


「それじゃあアスカさんとロビンさん、フランさんの小隊、私達とアルバさんの小隊、ホロの小隊で中隊を編成しますね」

「よか!」

「よろしく頼む」

「みなさん、よろしくお願いします」

「ふふ、皆よろしくね」


 さすがに全員がフライトアーマーを使えるわけではなく、メラーナ達もアスカのように誰かを担いで飛行できるほどのスキルはない。

 そこで徒歩での移動となるのだが、この広いナインステイツのマップをエグゾアーマー装備とは言え動き回るのは時間がかかり過ぎてしまう。


 この解消法として用意されているのが移動用アームドビーストのレンタル。

 村はずれに牧場が施設されており、馬、狼、猫型など移動力の高いアームドビーストの他騎乗クラスの恐竜型なども用意されている。


「へぇ、アームドビーストレンタルされてるんだ」

「はい。ナインステイツのマップはかなり広いので、移動用としてレンタルされてるんです」

「アームドビーストに乗ったことなくても店頭で【騎乗】のスキルブックが売ってるから問題ありません」

「乗りたくねーってやつはエグゾアーマーの脚部をカスタムしてキャタピラ付けたり車輪付けたりしてるぜ」

「タンク型ね。そのカスタムも面白そうだわ」


 アスカ一行もメラーナ達に連れられ、この牧場を訪れていた。

 と言ってもアスカはフライトアーマーで移動する為、これはフライトアーマーを使えないロビンやホロ達用。


 それぞれが好きなアームドビーストをレンタルし【騎乗】スキルを取得して移動を開始する。

 メンバーはアスカ、ロビン、フランの小隊にアルバとメラーナ達の小隊、そしてホロとクランメンバー3人で構成された小隊の計3小隊。

 総勢11名での轟竜討伐である。


《轟竜はかなりの大きさですが、見た目以上に俊敏です》

《尻尾に気を付けろよ! 俺めちゃくちゃ吹っ飛ばされたからな!》 

《咆哮で竦み、アラクネの様なレーザー攻撃もしてきます》

《さすがエキスパートは容赦ないわね》

《その方がやり応えがあってよか!》

《にゃ~、それだけ強ければ討伐報酬も期待できそうだねぃ》


 移動の合間に情報交換を行い、作戦を立てておく。

 スタンダードであれば出たとこ勝負でも問題ないだろうが、先ほどの戦闘から推測するにエキスパートは数的有利を生かした連携を取らなければ討伐は難しいだろう。


 道中のモンスター達は空のアスカが索敵し、回避。

 無駄な戦闘を一切行わず、再度轟竜の近くまで接近した。


《よし、ここからは徒歩だな》 

《アームドビースト達は置いて行っていいのかしら?》

《はい。この子たちは基本的にその場から動きませんし、騎乗していなければモンスター達の標的にされることもありません》

《ふむぅ、ゲームらしいご都合主義だねぃ》


 その後はレーダーのアイコンと目視で轟竜の位置を確認しつつ配置につく。

 近接はアルバ、カルブ、ラゴ、ホロとホロの小隊から2名の6人。

 中衛にメラーナ、フランに護衛としてホロの小隊メンバー1名の3人。

 後衛にロビン、航空支援にアスカの陣容だ。


《よっしゃ、んじゃあ轟竜討伐、はじめっぞ!》


 全員が配置を終えた後、カルブの威勢のよい一言で轟竜との戦闘が開始された。


たくさんのいいね、感想、評価、ブックマーク、誤字脱字報告本当にありがとうございます!

嬉しさのあまりフランクリンから発艦してしまいそうです!


茜はる狼様にPVコミックを描いていただきました!

強敵相手にワクワクするアスカの表情をお楽しみください!

https://twitter.com/fio_alnado/status/1496327705599840256

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 火力が足りない、ということでしたのでC-75を使ったガンシップかと思いました
[一言] ロビンさん、来たっ!!これで勝つる!! 全武装実弾とは・・・Excellent!!最高ですねb
2022/03/06 12:24 退会済み
管理
[一言] ゴ○ラなのはわかってるんだけど、轟竜という字面だとティガレックスのイメージが強すぎる……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ