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2 イベント報酬とポイント交換

本日二話更新。

本話は二話目になります。


 主役であるはずだったアスカが欠席したMVP授賞式翌日。

 朝の家事を終えたアスカはいつものように『Blue Planet Online』にログイン。


 もはやホームと言って過言ではないラクト村の畑に移動したアスカは、早々にポータルのある小屋から外にでる。


「ハルー! おはよー!」

「マスター! おはようございますなの!」


 小屋を出たアスカが声をかけたのは畑のお助けNPC、コロポックルのハルだ。

 僅か一mほどの身長を可愛らしいアイヌ民族の衣装を纏っている。


 アスカの畑はランナーが買える物の中では一番大きく、面積はなんと一ha。

 とてもではないがアスカひとりで管理できる大きさではないためこうしてハルに管理してもらっているのだ。


「ハル、畑はどう?」

「魔力草が育ったから採取しておいたの。でも、採種はまだ僕がやっていいの?」

「あ、そうか。もうイベント終わったものね」


 以前はNPCのフラワーショップで採種してもらっていたが、イベント期間中は時間がなく【栽培】スキルを持つハルに採種をお願いしていた。

 しかし、そのイベントも先日終了。


 しばらくフラワーショップに顔を出していないという事もあり、アスカはハルに採種の中止を指示。

 ハルが採取した品質Aの魔力草はそのままアイテムBOX送りとなった。


「ハル、今日はもうおしまいにしようよ。ハーブティ用意してあるんだ」

「おぉー、ハーブティなのー!」


 すでにゲーム内では夕方時間直前。

 サポートNPCであるハルはアスカに雇用されている形であり、勤務時間はゲーム内の昼時間。

 もう間もなくお勤め終了であり、コロポックルたちが住む住居に帰らなければならない。


 その前に日ごろのお礼をとアスカが用意したのがハーブティだ。

 トティス村で薬師をしているマギ婆ちゃんお手製のハーブティであり、香りと味は絶品。

 ハーブティを飲んだことがなかったというハルも、一杯飲んだだけで虜にされていた。


『アスカ、MVP授賞式の景品が届いています。イベントメニューから確認してください』

「あれ、私欠席したよ?」

『あくまで授賞式ですので、欠席しても景品は配布されます』

「なるほど、ラッキー!」


 ハルとアフタヌーンティーを楽しみながら、メニューを表示させイベント関連の項目を開く。

 すると……。


<Congratulation!>

「きゃあっ!」


 バカでかいファンファーレと共にこれまたバカでかいウインドウで好成績お祝いの言葉が表示された。

 運営からの精一杯のおもてなしなのだが、アスカはこれを……。


「やかましい!」


 一瞬で閉じた。


「うぅ~、すごい音だったの……」

「不意打ちすぎるよ。アイビス、これクレーム入れといて」

『了解しました』

「さて。で、報酬は……えぇ?」


 落ち着いてからイベントの獲得ポイント欄を見たアスカは思わず目を丸くした。

 そこにはアシストポイントランキング一位とMVPのお祝いとして大量のジル、有料ポイント、プレミアムランナー日数加算など多岐に渡る項目での報酬が記されていた。


 いやこんなに貰っても、と動揺を隠せないアスカ。

 一旦保留にしてアイビスに確認を取ろうとしたのだが、報酬が記載されているウインドウには『確認』つまり了承を意味するアイコンしかなく、拒否を示す『キャンセル』と言う選択肢がどこにもないのだ。


 観念したアスカはやむなく『確認』アイコンをタップ。

 するとようやく大量の報酬が記載されたウインドウが消滅。


 同時にメニュー画面の所持金額と有料ポイントに報酬分が加算され、今の今までランナーネーム横で通常アカウントであることを示していた『Normal』と言う文字が上級アカウントを示す『Premium』と言う文字に切り替わる。


 さらに『Premium』と言う文字の横に有効期限も追加された。

 もちろんこの日数はゲーム内ではなくリアル日数での計算。


「こんなに貰っちゃっていいのかなぁ……」

『この報酬はイベント開始前の詳細に記載されていました。問題ありませんので貰っておくと良いでしょう』

「アイビス……貴女相変わらずねぇ」


 ここしばらくは鳴りを潜めていたアイビスの支援AIらしからぬ発言だが、イベントが終了したという事もあって復活していた。

 こうなるとアイビスの意見は覆らないので、報酬はおとなしく頂戴することに。


 さて、と気を取り直したアスカがイベントメニューを操作して開いたのはおまちかねポイントと交換できる報酬リスト一覧だ。

 イベント期間中はいくらポイントを稼いでも交換できないただの見本リストだったが、今はアイテム横に交換必要ポイントと個数、画面上には確定した総獲得ポイントが表示されていた。


「うわ、すごい数あるね」

『現在のマップで入手できる大抵のアイテムは交換可能になっています。また、魔導石、武器の他イベント終了で解放されたものもあります』

「すごいいっぱいあるの。マスター、どれと交換するの?」


 ハルもリストに興味があるのか、画面操作するアスカの横から顔をのぞかせる。

 そして当のアスカだが、むむむ、と眉間にしわを寄せ険しい表情でリストとにらめっこしていた。


 と言うのも交換できる素材類が多すぎるのだ。

 鉄鉱石や方鉛鉱はまだいいとしても、カラド鉱石にノイドセナ鉱石などのレア鉱石、はては見た事も聞いた事もないアイテムまでリストアップされている。

 

「……こういう時は」

「こういう時は?」

「アイビス!」

『はい』

「お願い!」

『……はい』


 アスカ奥義、アイビスに丸投げ、である。


『フライトアーマー開発に必要な物を優先でよろしいでしょうか?』

「うん、おねがい!」

『どのルートを優先しますか?』

「全部!」

『……は?』

「だから、全部だよ、全部!」


 今ツリーにあるのはTierⅣまでのエグゾアーマー。

 どのエグゾアーマーもTierⅠは一種類しかないが、Tierが上がるにつれて種類が増えて行く傾向がある。

 アサルトであれば重突撃型から重機動型。変わり種では重砲型。

 ストライカーなら隠蔽重視の奇襲型や機動スラスターを満載した高機動型など。

 派生が一番多いのがソルジャーで、汎用性はそのままに各エグゾアーマーに追従するような方向性が見えている。

 逆にマジックやメディック、スカウトにトランスポートは派生が少ないが、この四つは専門性が強すぎるという観点から派生が少ないのだろう。


 そしてフライトアーマーだが、実はその派生がソルジャーに次いで多いのだ。

 TierⅠ乙式三型、TierⅡ翡翠。ここまでは良いのだが、問題はその先だ。


 翡翠の派生先は同格C-75とTierⅢレイバード。

 C-75はC、cargoの名が指し示す通りフライトアーマー各部にウェポンラックを満載。

 それを主翼懸架二基のレシプロエンジンで飛ぶ輸送型だが、ここからの派生はなく上位輸送型に発展して行くのみだ。


 もう一つがアスカですら匙を投げた超問題児レイバード。

 この問題児をさらに問題化させているのが発展だ。

 レイバードの発展型となるTierⅣには二種類の戦闘機型と回転翼型、ターボプロップ型の四つがラインナップ。


 その様子はもはや航空機の歴史そのもの。


 これはアスカも不思議に思い、アイビスに聞いたところ……。


『レイバード以降の機体はすべてターボジェット、ないしはターボプロップを使用しています』


 という答えが返ってきたのだ。

 つまり、レイバードが使っている試製ターボジェットエンジンが正真正銘フライトアーマーの原点なのである。

 曰く乙式三型と翡翠は「飛行訓練機」と「戦闘機動訓練機」でありレイバードは「ジェットエンジン訓練機」に該当するとの事。


 この事は同じくTierⅣまで解放されていたβテストですぐに認知され、訓練機卒業後の素晴らしいラインナップに胸躍らせるランナー達を量産したが、その全員をレイバードで大地へと叩き落した。

 まるで『これら三機種を扱えぬものにこの先を使う資格なし』とでも言うかのように。


 そして当然、これらを開発、製造するには大量の経験値と素材、そしてジルを必要とする。

 通常これらすべてをまかなえることはなく、開発ルートを絞りそれに注力する、のだが。


「だって、お金も経験値もたくさんあるんだよ? これなら全部いけるでしょ!」

『確かに、その通りですが……』


 飛行時間がそのままエグゾアーマー開発経験値に変換される【フライトアーマー開発経験値増加】を持ったままイベントに参加したアスカなのだ。

 敵の撃破分と合わせて稼いだ経験値は相当なもので、それだけでTierⅣの物は網羅。

 アップデートで追加されるTierⅤに関しても一つか二つは開発可能と思われるレベル。


 結局アスカの意向にアイビスが答え、開発可能なものはすべて開発。

 ポイントはまだ開発できていない分も含めてすべてそろえるという暴挙を成し遂げた。


『アスカ、まだポイントが余っていますが、どうしますか?』

「えっ、まだいけるの?」


 素材でほぼ使い切ったと思ったが、見ればポイントはまだかなりの額が残っていた。

 アイビスが揃えた素材が必要最低限だったと言うこともあるが、やはりアスカの稼いだポイントの額がすさまじ過ぎたのだ。

 アシストポイントランキング二位にトリプルスコアは伊達ではないらしい。


「う~ん……飛べればいいからこれと言ってないのよね、欲しい物」


 素材以外のアイテムに目を向けても、今のアスカに必要な物はほとんどない。

 HP回復系はインベントリ枠数の関係とオワタ式プレイが基本のフライトアーマーでは必要なし。

 MP回復系では魔力草がリストにあるが、これも品質が悪く不要。

 武器類は今の物を更新するほどの物はなく、むしろ重量過多で使えるものがほとんどない。

 追加装甲など元から論外。

 スキル欄に目を向けても飛行にかかわるものが全くない。


「あれ……これは?」


 そんなアスカの目に入ってきたのが『Blue Planet Online二次生産優先購入権』。

 アイビスによれば、これは字の通り九月発売のBlue Planet Online優先購入権だそうだ。

 二次生産分はかなりの量だという事だが、抽選になる可能性は極めて高い。

 今プレイしているユーザーに友達をゲームに引き込んでもらうべく、イベント報酬としてラインナップされているのだという。


 そして、項目の隣で光り輝く『お一人様一つまで』の文字。

 今をときめくリアル女子高生であるアスカが、この文字を見て我慢できるはずもなく。


「うん、限定品なら取らなきゃ駄目だよね!」


 使い道を決めずそのまま選択。

 実はこの優先購入権、リストの中でもかなりの高額なのだが「限定品なら高いのも仕方ない!」とアスカは気にする様子すらなかった。


 その後は再度リストとにらめっこ。

 良いものがないか探し、もう花の種や球根、家具などにしてしまおうかと思った時だった。


「ん~、あとは……」


 アスカが目を止めたのは今まで全く使ってこなかった項目。

 魔導石リストの中にあった。


「マスター、何かいいものあったの?」

「うん、ちょっと気になって。アイビス、これは?」

『【デコイ】の魔導石ですね』


 それはまたしても使用者がかなり少ないジャンルの魔導石【デコイ】の物だった。



たくさんの感想、評価、ブックマーク本当にありがとうございます!

嬉しさのあまり加賀から発艦してしまいそうです!


第二部開始がコミックになりました!

作画 茜はる狼様

大空に飛び立つアスカの笑顔、ご堪能ください!

https://mobile.twitter.com/fio_alnado/status/1414064463934750724

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― 新着の感想 ―
[一言] 二次生産優先購入権・・・これでアイビスのAIとしてではなくユーザーとしてのアカウントを作って前話に繋がるのかな!?
[良い点] お帰りなさい。待ってました! 交換フルオートって……リアルのAIでは絶対やりたく無いですね…… デコイの派生でアイビスが操作出来る機体を作って前話のシーンかな? これからも頑張ってください…
[気になる点] 章分け機能は使わんの?
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