5.わたし逢坂ひかり、ゴリーナの正体を知ってしまう
ここからが本当の物語のスタートになります。
目が醒めた。
目が醒めたということは私は生きているんだ。
心の中で結局死ななかったのかとガッカリ感が湧いてくる。
「お目覚めですかご主人様。」
そばにはゴリーナがいた。
そして今豪華な屋敷の部屋のようなところにいる。勿論私はふかふかなベッドの上だ。
「不本意でしょうが残念ながらご主人様は生きています。そう簡単に死なれても困りますので。」
ゴリーナが私を見下したような目で見る。
「まずは身支度をしてから皆と話し合いましょうか。」
ゴリーナが手をパンパンと叩くと部屋に3人ほどメイドさんが入ってきた。
「この人たちも奴隷?」
「いえこれは『エクスタリア』という私達貴族奴隷が使役することができる道具です。マリア、ご主人様に手を。」
「ハイ、ゴリーナ様。」
マリアと呼ばれた女性が私の手を握る。固くて冷たい。
感触としてはプラスチックに近い。
「わかりますか?エクスタリアは人ではなく道具です。」
奴隷より下の存在がいるのか。
「いくら能力の高い奴隷といえども単体ではできることが限られていますので私達はエクスタリアを使役しているのです。」
エクスタリアは皆無表情だ。確かに無機物感が強い。
「メイクですが・・・どうやらお好きではないようですね。」
「え?なんでわかったの?」
「奴隷たるものご主人様のことは理解するよう努めていますから。」
会話を続けているとまるで私の心を読んだかのように気持ちを理解してくれていた。
奴隷ってすげー!
その中でゴリーナは気になることを言った。
「私は神という存在に恨みがあります。憎くてたまりません。」
何か理由があるのだろう、私はそれを聞くことにした。
「ご主人様、私の腕を掴んでみてください。」
「こう?」
ゴリーナの腕を掴むとそれは服ではなく毛、正確には『体毛』だった。
「・・・私の祖先にメスゴリラがいました。子孫には今まで体毛は遺伝しませんでしたが私は神の戯言を断ったために報復として私の体毛を覚醒させたのです。」
話だけ聞くとギャグかな?と思うけど実際に見ると笑えない。
「神はそれだけでは飽き足らず優秀なメスゴリラを輩出する名家であるマッチョリラ公爵の娘の体毛を生えないようにしてしまいました。」
「公爵の娘ってゴリーナちゃんのことじゃないの?」
「私は本当のゴリーナではありません。私は・・・ドレイデス王家の第一王女スレイビア=ドレイデスです。」
「え?ゴリーナちゃんってお姫様!?」
「はい、そして本当のゴリーナは私の代わりに城でスレイビアとして生活しています。」
「入れ替わる必要あるの?」
「私達は親戚筋で年は同じですが離れた土地で生まれました。もし無毛の王家に体毛のある娘が生まれ体毛を誇る公爵家に無毛の娘が生まれたらご主人様はどう思いますか?」
「普通に王妃と公爵夫人の不貞を疑う・・・あ!」
「そうです、例え証拠を示しても人々は不貞を疑い混乱が起きます。貴族奴隷の中には王家の血筋のものが多数いますので王家と公爵家に反旗を翻し王座につこうとするものも現れるでしょう。」
「それで入れ替わりを・・・でも周りに気づかれるんじゃ?」
「本当のゴリーナ、ややこしくなるのでスレイビアと呼びます。スレイビアと私は体毛が生えるまではとても良く似ていました。そのおかげで入れ替わっても事情を知るもの以外には入れ替わっていることはバレていません。」
ゴリーナは神妙な顔をする。
「しかし彼女は王家の者が持つ能力を持っていないのでいずれは正体がバレてしまうでしょう。」
「そうなれば王の座を狙う者たちが争い最悪戦争・・・」
「そうです、そうなればこの世のご主人様も奴隷たちも戦火に巻き込まれてしまいます。神はそれを狙っているのです。」
「神が?どうして?」
「それは・・・神が恥ずべきマゾヒストだからです。あの愚神は人々から罵られるためならどれだけの命が犠牲になろうとも意に介しません!」
どこの神も一緒か。自分のためだけに人々の命や生活を踏みにじる。
「ゴリーナちゃん、これはご主人様としての命令だけどみんなで神様に会いに行こっか」
私は笑顔でそう言ったが心の中でそのクソ神様をボロクソにしてやろうと思っている。
ありがちパターンですがゴリーナの正体はお姫様です。
そしてこの世界の神様はマゾヒストです。傲慢なマゾヒストは厄介です。
思った以上に話数かかってしまっているのですがぼちぼち書いていこうと思います。