第4話 出発
とうとう出発の日がきた。
聖良はリュックの中を見る。準備は万全、なはずだ。不安なのでもう一度中身を確認しておく。
・タオル
・カイロ
・懐中電灯
・水筒
・マッチ(本当はライターが良かったけど、これしかなかった)
・毛布
・ナイフ(護身用)
聖良はゆっくり息を吐いた。全部揃っている。聖良は『冒険者の持ち物』というサイトを閉じた。今の時代は便利で、何でも調べたら出てくる。
次は自分の格好チェックだ。聖良は全身鏡の前に立った。モコモコを身に包んだ自分の姿が鏡に映る。厚着に厚着を重ねたものだ。向こうはとてつもなく寒そうなので当然の格好であるのだが、とにかく今は暑い!!
だって、聖良の世界は今は夏、真っ只中である。クーラーを部屋でかけているが、それでも超極寒対策の服を着ているのだから、汗が止まらない。もう何度めか分からない水を聖良は飲んだ。
2時半が過ぎた、汗を拭きつつ耐える。早く来てテルシア・・・そろそろ暑さに耐えられない。聖良は服を脱ぎたいという葛藤に耐えながら、ぐったりと床に座った。意識が朦朧としてきて、視界がぼやけてき始めた。
ひんやりとした空気が、いつの間にか聖良の周りに沈殿していた。聖良は瞬間、意識がはっきりした。テルシアが来たんだ!
前を見ると、あの暗い穴が空気を割いて存在していた。その中からゆっくりとテルシアが姿を現し始めた。
聖良は目を見張った。明るい部屋で見ると、テルシアが変わった外見をしていることが分かる。
まず、スラリとした身体をすっぽりと包んだ黒いローブに目がいく。ローブの縁は金色の細やかな刺繍が入っていて、綺麗だ。そして、見たことのないほど真っ白い肌。その白さの中に浮かんでいる大きく澄んだ黒い瞳。ほっそりとした顎。この前見たとき、綺麗な顔だと思ったが、これほどの美男だとは・・・。
「待たせてしまいすみません」
ぽぅっと見惚れている聖良に、テルシアは申し訳なさそうに頭を下げた。そして、聖良の超極寒対策された格好を見て顔を輝かせた。
「一緒に来てもらえるようですね。行きましょうか」
聖良の手を引いて、穴の中に体を入れていく、聖良も穴の中に体を入れた。
とたん、身体が四方に引っ張られているような感覚に陥る。足がグニグニにされ、腕があり得ないくらい伸びた。周りは様々な色に囲まれて動いている。
聖良の意識は飛んだ。そこで途切れた。
次に目を開けたとき、顔が硬い木の床に密着している状態であった。