表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/28

あち子は、一人とぼとぼと、自転車に乗って帰った。


自転車置き場の、ちょっと離れたところから、坂村があち子を見ていたのにも、気が付かなかった。


家に帰り、玄関の扉を開けると、ふわ~りと、ぽちがよってきた。


「 ぽちーーーー! なんだいたのー! 」


「 おかえり~ 」


母の美佐子が、遠くから声をかけてきた。

きっとあち子が、ぽちに言った言葉を、自分への言葉だと勘違いしたのだろう。


あち子は、手をぽちの前に、差し出した。

ぽちは、ふんわりあち子の手の上にとまった。

あち子は、急いでぽちの様子を確認した。みたところ、今までとかわりがなさそうだ。


「 ぽち、大丈夫だった? 」


小さな声で声をかけると、ぽちはいつものように、首をちょっとかしげて見せ、またふんわりと浮かんだ。

あち子は、手を洗いに洗面所に向かうと、いつものようにぽちも、ふわふわとついてきた。


あち子は、リビングに行かずに、自分の部屋に向かった。

あち子が、机の前の椅子に座ると、ぽちも机の上にぐでんと横になった。


「 びっくりしたんだよ~。ぽち!

いったい先生に、なにしたの? 

先生、帰りの会の時には復活してたけど、びっくりしたよ~。

そういえば、坂村君に飛ばされてたけど、あれからどうしてたの?

坂村君、ぽちにさわってたよね~。 」


目の前のぽちに、聞いてみたが、ぽちが答えてくれるわけがない。


いつものように、首をかしげるだけだった。


「 あ~あ、ぽちも話ができたらいいのにね~。」


あち子は、今日の出来事をいろいろ考えてみたが、答えが出るわけがない。


ご飯の前に、宿題を済ませてしまおうと、机に向かった。


*****


翌朝、いつものように、学校に向かうと、今まで、会ったことがなかった坂村が、自転車置き場にいた。

もう自分の自転車は、止めていて、手にはかばんをかけている。


あち子は、あわてて坂村から、遠いところに自転車を止め、坂村のほうを、見ないで行こうとした。

ただ目の端に、坂村が、こっちに向かってくるのが見えた。


どうしようー。 昨日のこと、聞かれるぅーーーー。


あち子が、焦っていると


「 さかむら!~ おはよう~ 」


坂村を知っている男子だろう、坂村に、走っていくところが見えた。


坂村が、その子に挨拶しているすきに、あち子はダッシュで教室に向かっていった。

もちろん肩には、ぽちがのっかっていたのだが。


それから、時々坂村の視線を感じるようになった。

もちろん、あち子の机の前のぽちを、見ているのだが。


*****


お昼休み、周りの子たちと教室で、お弁当を食べていると


「 ねえ最近、坂村君、こっち見てない? 」


席の隣の子が言った。


「 うんうん、こっちよく見てるよね~。誰みてるの~? 」


なぜかみんなで、見りあがっている。


知ってますよ。うちのぽちですよ。今は、私の肩に止まってますよ~。


「 ほらっ、今も時々見てない?」


みんな、きゃっきゃっとしている。


イケメンに見つめられたら、うれしいのだろう。

でもねみなさん、あれは好きで見ているのとは、ちょっと違ってません?

なんか眉間にしわ作って、ガン見してますよーと、いいたいあち子だった。


「 ねえ、紗枝ちゃんのこと、見てるんじゃない? 」


1人が言い出すと、みなが同意し始めた。


「 そうかもー。ねえー あっちゃんも、そう思わない? 」


最近では、紗枝にならってほかの子も、あっちゃんて呼んでくれる。

うれしいのだが、今はそれどころではない。

そうか、この中で一番かわいいのは紗枝だ。

だからみな、あち子をみてるとは。誰も思わないのだろう。

ぽちのことがばれてなくて、うれしい気持ちと、自分は対象にも、思われないのかという、複雑な気持ちをいだいたあち子だった。


あち子が同意しようと、口を開こうとしたとき、紗枝がいった。


「 人を見てるっていうより、なんだか敵を見てるみたいじゃない? それにあの顔、なんだか怒ってるみたい。」


的を得ている、紗枝の言葉に、思わず固まった、あち子だった。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ