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( あれっ? ぽちは、どこよーーーー! )
あち子は、びっくりして廊下のほうを見てみたが、ぽちの姿が見えない。
坂村をまたみてみると、今しがた、ぽちに当たった手を見つめている。
みんなはといえば、しばらく坂村を見ていた。
「 敦也どうした? 虫かなんかいたのか? 」
みんなが、聞きたかったであろうことを、仲のいい岡田が、聞いてくれた。
「 あ~。なんだか蜂が飛んでた気がして、びっくりしたんだ。 」
「 え~ 蜂がいるの? いやだー。 」
「 え~? どこにいる? 」
「 蜂は、手を振りまわしたら危ないよー。 」
みんなが、口々に話をしだしたのと、さきほどの岡田の虫発言で、みんなはさっきの坂村の変な行動を、蜂のせいだと思ったようだった。
坂村は、なぜかあち子のほうを見て、答えていた。
あち子は、坂村がぽちのことを、言わなかったことにほっとした。
しかしぽちが消えてしまったことに、結構なショックを受けていた。
廊下のほうを、何度も見てみたが、ぽちが見えない。
ぽち、どこにいっちゃんたんだろう~。
自習の時間が、果てしなくながく感じた。
五時間目が終わるチャイムが鳴るのと同時に、あち子は廊下に飛び出した。
廊下をゆっくりと見渡してみたが、ぽちの姿が見えない。
仕方なくトイレに行こうと思い、歩き出したとき、呼ばれた。
「 あっちゃ~ん! 大変だったね。でも先生の具合が、悪くなってちょっとラッキーだったね。 」
そう声をかけてきたのは、紗枝だった。
紗枝もトイレに行くというので、二人で話しながら歩いた。
「 それにしても、びっくりだったよね~。坂村君の妙な、パフォーマンスもあったし。 」
紗枝には、ぽちが見えないんだから、奇妙に見えたんだろうなと思い、はっとした。
「 そうか? そうだ! 」
あち子が、突然叫んだので、紗枝はびっくりして、あち子をみた。
「 どうしたの? えー なになに! 」
あち子は、坂村がぽちを飛ばすことが、できたということに、今更ながら気づいたのだ。
そうか! 坂村には、ぽちが見えるし触れるのか。でもなんでだろ?
あち子は、隣に紗枝がいることも忘れて、ぶつぶつ言っていて、紗枝に微妙な顔をされているのには、気付いていなかった。
トイレを終えて、クラスに戻ると、もう皆さっきのことは、忘れているようだった。
あち子が席に着くと、そばの席の子たちに、大丈夫だった~?とか、運がよかったねとか、言ってもらい慰められた。
坂村が、こちらを見ていたことにも、気づいていないようで、ほっとした。
それとなく坂村を見ると、坂村も岡田やほかの子たちと、いつものように、話しているように見えて、それにもほっとした。
それにしても、ぽちどこに、いっちゃったんだろう~。
六時間目の授業が始まったが、ぽちは、消えたままだった。
すべての授業が終わり、帰りの会には、復活した栗田先生がきて、これまたあち子は、安心した。
先生は、あち子の居眠りのことは、忘れているようで、帰るときまで、何もいわれることはなかった。
とうとうぽちは、学校に、現れなかった。




