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 あち子と坂村二人とも、図書館に、自転車で来ていた。

自転車置き場で、ついあち子は、今まで気になっていたことを、聞いてみた。


「 ねえ、どうして学校では、クールな坂村君になってるの?

今みたいだったら、もっとモテるのに。 」


「 こういう感じって? 」


「 もっと笑顔ならってこと! どうして、いつもクールなの? 」


「 モテて、何の得があるんだ? めんどくさくなるだけだろ。俺は、幸樹みたいに、できないしさ。 」


「 今、世の中の人の半分を、敵に回したね。幸樹って、岡田君の事だよね。

確かに、岡田君のコミュニケーション能力は、すごいよね~。 」


2人で話していると、ちょうどそこに、自転車をとめに来た子がいた。


「 あっ、あっちゃん! 」


「 りさちゃ~ん! 久しぶりだね。 」


今、声をかけてきた子は、増田理沙といって、あち子の中学校の時の同級生だった。

中学の時の、ソフトボール部の仲間でもあった。今は女子高校に通っている。


「 じゃあ、また! 」


話が長くなると思ったのか、坂村は一人、先に帰っていった。


増田理沙は、坂村の姿を、ずっと見ていた。


あち子は、坂村がかっこいいから、見ていただけだと思っていた。


「 ねえねえ、今のが、坂村君っていうの? 」


「 よく知ってるね、理沙ちゃんの学校でも、有名なの? 」


「 うちの学校では、まだ話題に、なってないけど、あれだけかっこいいと、確かに目立つかも。

でもそれで、知ってたんじゃないの。小池君に、聞いたんだよ。 」


小池は、あち子と同じ教科係の子だ。

この前坂村が、無理やり代わった時のことに、違いない。


小池と、目の前の理沙ちゃんは、付き合ってるのだ。

だから聞いたのだろう。

仲の良いことでと、あち子が一人やさぐれていると、


「 小池君が、心配してたんだよ。あっちゃんと坂村くんに、何かあったんたんじゃないかって。 」


「 そうなんだー。 坂村君とは、何にもないから、大丈夫だよ。心配してくれて、ありがとうね。 」


「へっへっ! だってあっちゃんは、私たちの大事な、友達だもの。 」


理沙が、臆面もなく、そう言ってくれて、あち子は、さっきの自分が思ったことを、少し反省した。


理沙とは、部活が一緒。

小池とは中学三年の時、席が隣だった。


そのせいか、2人と話すことが、多かったので、二人がお互いに、好意を持っていることを、知った。


だから、言ってあげたのだ。

お互いが、お互いに、好意を持っていることを。


結果的に、あち子が、小池と理沙の仲を、取り持つ形にはなったのだが。


「 でも坂村君って、あっちゃんを見る顔、優しそうだったね。

小池君には、 『 クールな坂村くん 』 と聞いていだから、ちょっとびっくり。

帰るときの、あっちゃんにみせたあの顔見たら、私安心しちゃった。 」


本当に、心配してくれていたんだろう。

あの時、ほんのちょっと、おせっかいをしたおかげで、こんなに心配してくれる人たちが、できたことに、あち子の心は、ほんわかした。


ただ理沙の言った、あの笑顔は、たぶんあち子にではなく、ぽちに対してだろう。

けれど理沙には、見えないのだから、誤解されても、仕方ないんだよなあと、思ったあち子だった。


あち子と理沙は、お互いの近況など、しばらく話をした。


すると向こうから、小池がやってきた。

どうやら理沙は、小池と待ち合わせしていたようだ。


「 小池君、先にご飯食べに行く? あっちゃんもいかない? 」


ふたりは、一緒にお昼でも、食べようと言ってくれたのだが、これは、お邪魔虫の何者でもない。


あち子は、お腹をすかせながら、ひとり帰っていった。









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