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おばあさんは、あち子が食べ終わるのを見計らって話し出した。


「前に似たようなものを見たことがあったっていったでしょ。

私のうちは京都のお寺でね。

よくいろいろな人が来たんだけど、その中にいたのよ。


あなたと同じように肩に乗せた男の人がいたの。

庭で姉と遊んでいたら、その人が通ってね。

私はまだ小さかったから、みんなにも見えてるものだと思って、その時ちょうど隣にいた姉に聞いたのよ。『あの人の肩にのってるの何?』って。

そしたらきょとんとしてるの。

私はむきになって部屋にいた兄まで呼んできて、本堂にいる人を兄にのぞかせたのよ。

そしたら兄にも見えなくてね。

私は夢中でしゃべったわ。どんどん声が大きくなっちゃったのね。

そしたらその人としゃべっていた父に、見つかってみんなで怒られてね。

本堂から追い出されたの。


兄は思うところがあったんでしょうね。

私にいったの、僕には見えないけれど、おまえのおじいちゃんもよく言ってたって、お父さんが言ってた気がする。あとでお父さんに聞いてみよう。っていってくれて私の気持ちも収まったのよ。


そのあとでね、兄から聞いた父が教えてくれたんだけど、そのころにはもう祖父は亡くなっていたから。

昔からうちには見える人がいたんだって。

それがどうしてできるのか、どこから来たのかはわからないけれど、それは好かれた人を守るんだというの。

私が見た人には、鳥のようなものが肩の上にのっていてね。

父が聞いたところによると、自分が昔飼っていたにわとりじゃないかって言ったらしいの。


昔その人のうちでは、鶏を飼っていてね。

昔のことだから卵を食べるために飼ってたらしいんだけど、その人が子供だったから、お手伝いとして餌をやったりお世話をしていたらしいの。

毎日お世話をしていたら情がわくじゃない。すごくなついたようでかわいかったんだって。


だけどある日、その子が学校から帰ってきたらその鶏がいないの。

あわててお母さんに聞いたら、ちょうど親戚の人が兵隊さんに行くからお食事で出すために捌いたんだって。その人がかわいがってるのを知っていたから、見せないようにその人が学校に行ってる間に処理したんだって。

台所横の小さな裏庭に行ったら、むしられた羽なんかがあってね、すごく悲しくてそれを集めて庭の隅に埋めてやったらしいの。


それから毎日お参りしてたんだって。

そうしたらある日、そのお墓の上に靄みたいなものが出てきて、いつの間にか鳥のようなものになったらしいの。それはいつもどこへ行くのにもその人にくっついてきてね、かわいかったらしいんだけど、ほかの人には見えないしやっぱり成仏させてあげなくちゃいけないんじゃないかということで、うちに来たらしいのよ。


うちに来る前、その人その鳥のようなものに助けられたこともあったらしいの。

ただこれから先、人に害を与えないかと心配になったそうでね。ずいぶん悩まれたといっていたわ。

ただ父が祖父から聞いた話では、守り神まんじゃさまといって昔からあった神様のようなものらしいのよ。

今では聞かないんだけどね。だからこの子もまんじゃさまかもしれないわね。」


「じゃあこの子ずっといてもいいんですね。よかった~」


あち子は本当にほっとした。もし成仏させなさいと言われたらどうしようかと思っていたのだ。


「先生の具合が悪くなったのも守ろうとしたのね。

まんじゃさまもどんどん成長していくようだから、大丈夫なんじゃない。まさか生きているうちにまたまんじゃさまに会えるとは思ってなかったわ。」


そうおばあさんはしみじみ言ったのだった。


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